ベンジャミン・グレアムが考える「インフレ」と「企業収益」の関係と株式投資の有効性を賢明なる投資家から読み解く。

ベンジャミン・グレアムが考える「インフレ」と「企業収益」の関係と株式投資の有効性を賢明なる投資家から読み解く

 

家三郎
以前のコンテンツで、ベンジャミン・グレアム氏の投資に対する思考とそのスタンス投資と投機の違い、防衛的投資家・積極的投資家、バリュー株投資)について紹介したのは覚えておるか?

 

前回のコンテンツの内容を踏まえ、今回は「インフレーション」と「企業収益」の相関性についてのベンジャミン・グレアム氏の考え方を紹介していきます。

 

家三郎
インフレといえば、物価が上昇しそれに伴い企業は商品の販売価格を上げることができる故、売上額が増大するということはわかるな?ガリガリ君を60円から100円にすれば売上額が上がるということじゃ。もちろん、仕入れ価格も増加するが販売価格に転嫁していけば、企業利益も増加するわな。インフレについて学び直したい者は経済の仕組みをわかりやすく、簡単に解説・インフレとは?を参照じゃ。それでは本編に入っていくぞよ。

目次

インフレと企業「収益」の相関性

大前提として、ベンジャミン・グレアム氏は「インフレ」と企業収益(利益率)の相関性は低いと結論づけています。

 

グレアム氏は企業収益の増加はインフレによるものではなく、稼ぎ出して「利益」の「再投資」を継続しているからであるとしています。

 

家三郎
事業経営の本質じゃな。投資で事業のスピードをあげて規模(事業の核)を作っていくのじゃ。あとは規模と積み上げたノウハウで利益は雪だるまのように大きくなっていくのじゃな。

 

グレアム氏が投資に従事していた1966年〜1970年まで、「インフレ」により生活費は22%上昇しました。

しかし、1965年以来、株価は全体的に落ち込んだ等の事例が、複数発見できることを根拠としています。

 

投資家は、考え方、希望、不安、達成感や不満、そしてとりわけ次に何をすべきかという決定を、投資人生を回顧することからではなく、年一年と積み重ねる経験によって導き出すのだ。この点について、われわれは断言できる。インフレ(またはデフレ)状態と普通株の株価・収益変動の間には密接な関係はない。

良い例は、最近の1966〜70年までのことである。この間、生活費は22%上昇し、5年ごとに見た場合、1946〜50年の期間以降で最も目覚ましいものだった。しかし株式収益や株価は1965年以来、全体的に落ち込んだ。それに先立つ5年間の記録では、生活費があまり上昇しなかったのに対し、株式収益は目覚ましく上昇するというような全く逆の現象が起きている。

(引用:賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法)

 

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ROEに着目

家三郎
企業の「ROE(総資産利益率)」とインフレーションについてもグレアム氏は触れておるぞ。

 

ROE」は代表的な投資指標であり、計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」となります。

 

【ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100】

 

家三郎
自己資本」から如何に効率的に利益を上げられているかを見る指標じゃな。インフレが進めば、商品の販売価格が上がり、仕入れ価格の上昇も販売価格に転嫁していけば企業利益率も上がり、分子の当期利益が上昇するので、ROEも上昇すると思われるが。

 

グレアム氏は、ROEは経済活動全般によって影響は受けますが、インフレ率(「PPI」(=生産者物価)や「CPI」(=消費者物価))と共に上昇する傾向は見せておらず、例えば「インフレ」が企業株価に良い影響を与えているとするのであれば、それまでの資本に対する収益率が上昇すると指摘しています。

 

「PPI」(=生産者物価)

Producer Price Indexの略称で、生産者物価指数のこと。米国の労働省が、米国内の製造業者の販売価格を約1万品目について調査し、発表するものである。製造段階別(最終財・中間財・原材料)、品目別、産業別の数値が毎月発表される。 

PPIはインフレ率(物価上昇率)の判断に用いられ、日本の「卸売物価指数」に近い統計である。日本の卸売物価は輸送費や流通マージンを含んだものになっているのに対して、PPIは生産者の出荷時点での価格を対象としたものになっている。

 

「CPI」(=消費者物価)

総務省(省庁再編以前:総務庁)が毎月発表する統計で、「東京都区分」と「全国」の2種類がある。すべての商品を総合した「総合指数」のほか、物価変動の大きい生鮮食品を除いた「生鮮食品除く総合指数」も発表される。 

商品の販売には卸売と小売の区別がある。消費者に対しての販売を小売という。スーパーや商店で買い物をするとき、小売商から小売りされているといえる。この段階での価格を指数化したものが「消費者物価指数」である。 

「消費者物価指数」は、家計でよく消費するもの、長期間値段を調査できるものなどいくつかの条件をもとに、500品目以上の値段を集計して算出される。タクシー代やクリーニング代といったサービスの料金も含まれる。

なお、元本が全国消費者物価指数(CPI)に連動して増減し、金利は利払い時の想定元金額に応じて支払われる国債のことを物価連動国債という。

 

(引用:野村證券「証券用語解説集」 PPICPI

 

家三郎
その結果、新たに増資等で加わった資本を考えても、平均的な資本の利益率も増加するはずなのじゃが、過去1950年~1970年の20年間そのような傾向は見られていないとしているのじゃ。

 

わかりやすく解説します。

例えば100万円を企業Aに投下し、その企業Aが10万円の純利益を上げます。

 

家三郎
ROE」を算出する計算式は「ROE=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」じゃったな。ということは10万円÷100万円=10%ということじゃな。ここまでは大丈夫じゃ。

 

その後、インフレが20%上昇ーーー。

例えば、企業の商品の販売価格も20%上がり、利益も10万円→20%増の12万円になるとします。

 

家三郎
そうすると「ROE」は・・・?ROE=12万円÷100万円=12%?

 

まさに、ROEは12%に上昇するはずが、「歴史を辿ると上昇していない」ということをグレアム氏は指摘しているということです。

 

 

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グレアム氏が考える米国の株価上昇の要因とは?

家三郎
ふむ、インフレと企業収益は相関せず、その兆候も過去には見られなかったと。生活費が22%上昇しても、PPI、CPIが上昇しても相関がないと。しかし、「NYダウ(Dow Jones Industrial Average,DJIA)」を見ればわかるが、過去から上昇し続けておるの。

 

DJIA extended to 1789

(引用:Market Timing Update「DJIA extended to 1789」)

 

家三郎
ついでに言えば、弟子であるバフェット氏もNYダウに関してはポジティブな意見を出すほどじゃ。

 

100年後のダウ工業株30種指数について、19日終値の2万2370.80ドルから「100万ドル超」になると予想。1世紀前に81ドル程度だったことを考えると、不可能ではないと述べた。

バフェット氏は、フォーブス誌が1982年に最も富裕な米国人400人のリストを公表して以降、1500人程度がリストに登場したが「ショートセラー(空売りをする人)は誰もいない」と指摘。「米国をショートにすると、常に負けてきた。これからもそうだ」と強調した。

(引用:東洋経済『バフェット氏、「米国悲観論者は狂っている」』

 

グレアム氏が企業の利益は再投資を重ねることで実現すると述べたことを冒頭で触れました。

 

企業Aに100万円投資、利益10万円、ROE10%ーー。

 

この利益10万円を再投資し次の年は11万円に。

このように積み重ねていくことこそが、米国の株価が上昇している本当の要因であり、インフレはむしろ企業のROEを落とし、企業成長の阻害要因でもあるとしています。

 

家三郎
1950年~1969年の間で、企業収益は42百万米ドルから92百万米ドル(2倍以上)に上昇していますが、ROEは15%から11%に低下していることを指摘しているのじゃな。

 

その要因として、「生産性を上回る賃金の上昇」「資本追加に迫られたこと」としています。

 

つまり、生産性を上回る勢いで賃金が上昇し、インフレによる業態拡大による工場設備増築など、本来の企業成長を超えるスピードで物事が進んでしまい、結果的に減益に落ち込んでしまう、ということを意味しているのです。

 

 

 

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個人投資家のインフレに対する防衛策は?

家三郎
インフレで企業収益が上がらないというのであれば、インフレ時はどのような対策を打つべきなのじゃ?

金(きん)」「不動産」がインフレ時の投資先として代表的ですが、グレアム氏は否定しています。

 

「不動産」はその価値を測るのは非常に難しい。

「金」は長年にわたりインフレ率より低い価格上昇率しか記録しておらず(1935-1972年で35%の上昇に止まる)、インカムゲインとなる配当金がありません。

 

株式と違い、特に金(きん)に関しては、何も配当金を産みだしていないこと理由として挙げています。

【「金」投資】価格変動は何が原因で起きる?インフレ対策への有効性を解説します。

【「金(GOLD)」投資】価格変動は何が原因で起きる?インフレ対策への有効性を解説。

2019年2月23日

 

家三郎
結果的にやはり株式投資と債券投資で状況に応じて調整をしながらポートフォリオを組んでいくことを推奨しておる。債券投資は元本保証ではあるも、利回りがインフレに負けている場合は、資産を減らすことになるので債券投資だけ行うことにも警鐘をならしているのじゃ。

 

 

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まとめ

ベンジャミン・グレアム氏のインフレと企業収益、「ROE」の関係性、及び、インフレ時の投資対策の考え方について紹介してきました。

 

家三郎
歴史を紐解いて根拠を示しており、とてもわかりやすいものじゃったな。

 

先人の教えは、株式投資の実践で役立つものばかりですので、知識をどんどん吸収していくようにしましょう。

 

以上、ベンジャミン・グレアムが考える「インフレ」と「企業収益」の関係と株式投資の有効性を賢明なる投資家から読み解く…の話題でした!

 

【賢明なる投資家・ベンジャミン・グレアム特集】バフェット氏の師匠・バリュー投資の父の思考回路を解読。

【賢明なる投資家・ベンジャミン・グレアム特集】バフェット氏の師匠・バリュー投資の父の思考回路を解読。

2019年6月4日

 

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マネリテ!編集部は東京大学経済学部卒の証券アナリストを中心とした金融知識が豊富なメンバーが株式投資初心者に向けて有益な情報を提供しています。株式投資を行う意義から基本用語、おすすめのネット証券・投資先情報をお伝えするメディアです。日本人の金融リテラシーの向上と明るい未来を目指しています。