これまで、合計3つのコンテンツでグレアム氏の「思考法」を学んできました。
■ グレアムの思考:
今回は積極的投資家が選ぶべき銘柄選択の基準について解説をしていきます。
ベンジャミン・グレアム氏が定義する「防衛的投資家」は安全かつシンプルな手法を好む投資家です。
そして、「積極的投資家」は市場平均以上の利益、オーバーパフォームを得ることを目的とした投資家を指します。
積極的投資家について、市場平均を超える成績を残すことを希望しています。
それにも関わらず、グロース株投資ではなく、バリュー株投資を勧めているのが特徴です。
実際に、投資局面ではどのような戦略を進めていくのでしょうか。
目次
グロース株投資(成長株)はなぜ推奨しないのか
グレアム氏が定義するグロース株とは、過去に「一株当たりの利益(EPS)」が一般の株式より高い割合で上昇しており、その状況が継続し高いリターンを出すというものです。
成長株は期待ができそうですが、なぜグレアム氏は投資を推奨しないのでしょうか。
1つ目として、グロース株は、相対的に高い価格で取引されていることを指摘しており、現在の「株価」は企業の将来性を既に織り込んだ価格となっているためです。
2つ目は、「成長株」と言われている企業の未来は誰にも予想ができないということです。
説明として、企業が既に大きく成長しているのであれば、さらなる躍進は非常に難しく、その成長率は横ばい又は下降線となることが多いとしているのです。
実際に、グレアム氏が集計した実績として、10年以上に亘る成長株ファンドの実績は「ダウ平均」や「S&P500指数」の市場平均と同等、または低い運用結果となっていると指摘しております。
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積極的投資家のバリュー株投資手法
①客観的かつ整合性のある基準からみて根本的に堅実な投資であること。
②大多数の投資家や投機家の投資と異なる観点で銘柄を見極めること。
その上で、グレアム氏が提唱する重要な基準3つを確認していこうぞ。
人気企業には投資をしない
人気企業には投資をせず、あまり評価されていない優良企業に投資をすべきと述べています。
魅力ある企業の株が注目を浴びて過大評価されることがあるのであれば、注目を浴びておらず「市場で気づかれていない」過小評価されている企業は必ず存在するということに触れています。
①分散投資
②財務状況が良好な大企業
③長期の配当実績
④低PER企業
②④はほぼ同様のことじゃな。
人気のない企業と言っても、探すのが大変なレアな企業を探せということではありません。
「一時的に」人気の停滞している大企業をここでは指しています。
「大企業」としている背景には、そこまで大きな企業になった「地力」を評価しており、大きな資本と優秀な人的リソースのある企業であれば、再び従来の収益軌道に戻る可能性が高いとしています。
また、大企業が従来の姿に復活しはじめた時に市場が反応し、必ず株価に反映される、としているのです。
【PER低 >> 平均 >> PER高】の順で好成績となっていることが分かります。
実際にグレアム氏は1969年まではこの手法で良い成績を収めました。
1969年-1971年6月30日までの結果は低PERのポートフォリオの成績が振るわず、ここでバリュー株投資に本腰で乗り出しました。
バリュー株投資
PERだけをみて投資をしてきたグレアム氏でしたが、1971年以降、企業の資産価値に踏み込んで割安かどうかを判断しました。
グレアム氏が提唱するバリュー株投資は、「正味流動資産の価格が時価総額の3分の2以下の企業」に投資するという手法です。
正味流動資産のみを考えた簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得する。我々が買い付けた銘柄のほとんどは、この「スリム化された」資産価値の三分の二以下の価格で入手したものである。
(引用:賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法)
バリュー株投資の是非についても、グレアム氏は実験しており、結果は以下のようになっています。
■ バリュー株銘柄を85銘柄を2年間保有した結果:
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まとめ
グレアム氏は株式市場が好況な場合、このような銘柄は殆どないのが欠点であり、銘柄探しに労力を要するとしています。
しかし、例えば、日本株は上場銘柄数が多く、バーゲンセールとなっている割安株が多い市場とも言えます。
以上、ベンジャミン・グレアムの成長株(グロース)を明確に否定する理由と割安株投資の実験結果を踏まえた積極的投資家向けバリュー株投資とは?…の話題でした。