ベネズエラが2018年12月のインフレ率169万%だったと発表しました。
南米ベネズエラの議会は9日、2018年12月の物価上昇率が年率169万8488%だったと発表した。マドゥロ大統領は10日に2期目の就任式を予定しているが、米国が追加経済制裁を発動するなど圧力を強めている。経済立て直しのメドは立たず、ハイパーインフレが沈静化する兆しはない。
また、トルコでも2019年1月はインフレ20%台が続くというニュースがありました。
トルコ統計局は4日、1月の消費者物価指数(CPI)が前年同月に比べ20.35%上昇したと発表した。2018年12月の20.3%からほぼ横ばいだった。インフレ率が20%を超えるのは5カ月連続で、食料品の価格上昇が押し上げ要因となった。
このようなインフレが、物価が低迷している日本では、家計や企業のインフレ期待が失われているという報道もありました。
将来的に、過度なインフレーションが起きた時は、対策として何が有効なのでしょうか?
代表的なものに「金(GOLD)」がありますが、その金投資への有効性について、今回は解説します。
目次
Contents
金価格は何で変動する?
金の価格は「実質金利」で決定付けられます。
実質金利が下がれば金の価格は上昇し、上がれば下降するというように逆相関しています。
まずは、実質金利と名目金利の違いを理解しましょう。
例えば銀行に預けた時や、国債を購入した時に受け取ることが出来る金利は「名目金利」といいます。
「実質金利」は名目金利から「インフレ率を差し引く」ことによって求めることが出来ます。
【実質金利=名目金利 – インフレ率】
インフレとはモノの価値に対してお金の価値が相対的に減少する現象であり、
今まで100円で買えていたものが200円出さないと買えなくなるということは、お金の価値が減少したことを意味しますよね。
例えば、100万円預けて利回りが5%として、利息が5万円貰えても、この5万円の価値が1年前から進んだインフレの影響で、3万円の価値しかなかった場合、実質金利は3%ということになりますね。
さて、冒頭で「金」と実質金利の逆相関について触れましたが、以下の両者の推移の表を確認しましょう。
青い線は米国10年債金利からインフレ率を差し引いた実質金利で、赤い線はドル建の「金」価格です。
実質金利が下がれば金価格が上昇、実質金利が上がれば金価格が下がるという逆相関をしています。
実質金利が高い=現金が増えますので、現金を保有するインセンティブが高くなり現金の価値が高騰します。
その一方、金は保有していても利息も配当金も発生しません。
実質金利が下がれば「相対的」に「金」の価値が上昇します。
実質金利が上昇すれば相対的に金の価値は下がります。
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インフレが上昇しても金の価格は下がることがある?
インフレが上昇して「金」価格が下落するケースはあるのでしょうか。
ここで、今一度実質金利の計算式を思い出しましょう。
【実質金利 = 名目金利 – インフレ率】
例えば、インフレ率が3%で名目金利が3%の場合は、実質金利は0%です。
【実質金利 = 名目金利(3%) – インフレ率(3%)】
インフレ率が4%に上昇、名目金利が6%に上昇したら、実質金利2%となり、金価格は下落する可能性が高いです。
【実質金利 = 名目金利(6%) – インフレ率(4%)】
簡単なことで、「インフレ率」が上昇しても、それ「名目金利」がインフレ率以上に上昇するのであれば、金価格が上昇するとは限りません。
冒頭で述べた、ベネズエラやトルコのように急速なインフレが進む危機的な局面では、政策金利の上昇には限界があります。
実質金利はマイナスに沈みこみ、金の魅力が高まり、価値は上昇します。
「危機的な状況」においては金は価値を発生する可能性が高く、それ以外の局面絵はやはり総合的な指標の判断が必要ということですね。
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2020年以降はパラダイムシフトで金価格が上昇する可能性ある?
米国はコロナショックを下支えするために200兆円以上の経済対策をFRBの財政ファイナンスで行いました。
結果として米中央銀行のバランスシートは膨張して市場にドルが大量に流入しています。
世界最大のヘッジファンドを運営する「レイ・ダリオ」の「パラダイムシフト」によると、政府がマッシブな通貨発行を行い、通貨減価を通して膨大な借金の価値をさげることが今後発生するとしています。
結果として相対的に金の価値があがるとしています。
実際、現在金の価格は上昇基調で2011年の高値に向かって値を切り上げてきています。
以下のコンテンツでは金が今後上昇していく可能性が高いとする理由と、金に投資する手法として魅力的なものをお伝えしています。
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実質金利以外の金価格を変動させる要因
「金」の価格を決定させている要因としては上記の実質金利に加えて、様々な指標も影響しておりますので、ここでいくつか紹介していきたいと思います。
金の供給・各国中央銀行の金保有量
当然のことですが、金の供給面も価格には影響します。採掘が可能な金は約60,000トンとされています。
金の年間生産量は約2,600トン(2001年実績)です。
歴史始まって以来、世界の主要な産地であるエジプト、小アジア、東欧、南米、南アフリカのすべての産金を合計しても、およそ146,000トンと見込まれています。金の比重は19.3ですから、その容積は50mプール(幅20m、深さ平均2mとして)3杯半くらいにしかなりません。地球上に残っている金(埋蔵量)は、あと60,000トン程度と推定されています。ところが未採掘の鉱脈のある場所は、地底深く何千メートル、海底の火山脈の近くやアフリカの奥地、さらには3,000メートル以上もある山塊などであり、今後は金の採掘がますます困難になっていくものと懸念されています。
(引用:日本金地金流通協会)
現在のペースで金が消費されていった場合20年間で金が枯渇すると計算されており、今まで以上に金の枯渇が鮮明となってきた場合には急激な価格上昇が起こることもあり得ます。
金を欲する大きな主体として、各国の中央銀行が代表的でです。
近年、米ドル一極依存の経済からの脱却を目指して、中国やロシアの中央銀行が急速に金を購入しており、価格上昇要因となっています。
米ドルとの関係
「金本位制」の時代は、米ドルの価格が金価格と等価で交換が可能でした。
しかし、1971年のニクソンショック以降、金本位制が崩れ、金価格と米ドル価格が固定相場ではなくなりました。
ニクソンショック以降、米ドルが強くなれば金価格が弱含み、米ドルが弱くなれば金価格が上昇するという関係が続いております。
実は、実質金利の高さと米ドルの価値も相関しており、実質金利の高さとの逆相関と近しい側面を有しているのが特徴です。
個人の保有量の増加(インドと中国が筆頭)
インドや中国のような経済成長著しい国の富裕層は、自国通貨の信頼性が低いことなどから、確固たる資産を求めて金の購入に走る人が増加しています。
以下は国別の金の需要量ですが、インドと中国が圧倒的な割合を占めています。
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まとめ
「金」はインフレ対策に有効なのか、価格はどのように変動していくのかについて解説をしてきました。
金は実質金利だけでなく需給の関係でも価格上下することから、一概にインフレと連動するとは限りません。
需給、インフレ率、名目金利などそれぞれの指標を総合的に判断し、金投資は実行していきましょう。
以上、【「金(GOLD)」投資】価格変動は何が原因で起きる?インフレ対策への有効性を解説。…の話題でした。