株式投資において「割安」な企業に投資を行うということは大変重要です。
株価は人間心理の影響を強く受けます。
話題となっている株は明らかに割高であっても上昇する場合があります。
しかし、そういった場合の多くは時間が経つと共に、市場参加者も冷静になり割高な株価が修正されることになります。
同じように割安な状態の株は市場参加者がそのことに気付けば買い注文が入り株価が修正されることが多いです。
このように株価が割安か割高かは投資において重要な要素となります。
では、どういった方法で割安・割高の判断を行えばいいのでしょうか?
一般的にはPER/PBRといった指標が有名です。
しかし「EV/EBITDA倍率」という指標も世界中で利用されている割安か割高かを測る指標です。
同指標は投資判断をする際に大変役立ちます。
今回はその「EV/EBITDA倍率」について紹介します。
ぜひ最後まで読んでいただき株式投資の銘柄選びの参考にしてください。
目次
Contents
EV/EBITDA倍率とは?
EV/EBITDA倍率とは、企業を買収した際に何年で買収資金を回収できるかを表した指標です。
(EV/EBITDA倍率=いーぶいいーびっとでぃーえーばいりつ/いーぶいいーびっとだーばいりつなど呼び方があります)
EV/EBITDA倍率が低いほど回収期間が短いということです。
つまり、割安ということになります。
EV/EBITDA倍率はM&Aの妥当性を測る際によく利用される指標です。
一般的にはEV/EBITDA倍率が8倍程度であれば妥当なM&Aと見なされます。
EV/EBITDA倍率は大きく2つの要素から成り立っています。
「EV(企業価値)」と「EBITDA(収益力)」です。
EV/EBITDA倍率は「EV÷EBITDA」で求めます。
EVとEBITDAそれぞれについて理解しておく必要があります。
それぞれについて順に説明していきます。
EVとは?
EVとは企業価値のことです。
EV/EBITDA倍率はM&Aなど買収する際の判断指標としても使われます。
そのため、ここでいう企業価値とは時価になります。
具体的には、「EV=時価総額+有利子負債―現金(キャッシュ)」という計算式です。
EV/EBITDAは、ある企業を買収した場合に何年分の収益で回収することができるかという指標です。
「発行済株式数×株価」の取得費用に加えて、返済が必要な負債も買収側からすると回収する必要があるのです。
有利子負債があったとしても、現金を保有しているのであればその分を返済にあてることで有利子負債を差し引くことが可能です。
そのため、現金は買収費用から差し引きます。
有利子負債から現金などを差し引いたものを「ネット有利子負債」といいます。
EVは時価総額+ネット有利子負債と表すことも可能です。
EBITDAとは?
EBITDA(イービットディーエー※読み方は複数あります)は「税引前利益+支払利息+減価償却費」で計算します。
収益力=純利益としてしまうと、例え営業利益率は優秀であっても法人税率が高ければ、「営業利益率が低いけれど法人税率が低い国の企業」より収益力が低いと判断されてしまう可能性があります。
業種によっては多額の設備投資を行う必要があり、それに伴い減価償却費も多額になる業種があります。
例えば不動産業や製造業などです。
減価償却の方法についても国によって違いがありますので、影響を除くためにEBITDAでは減価償却費を加算します。
また、減価償却費は実際に支払いが発生するものではありません。
キャッシュを稼ぐ力という点では減価償却費を除いて計算した方がより実態に近い形となります。(後述)
支払利息についても、国によって金利は異なりますのでその影響を除外するために同じように加算します。
EBITDAは所在国が異なる企業であっても収益力を比較できるように国によって異なる部分を除外して計算するのが特徴です。
営業利益以外の損益がそれほどない場合は、営業利益+減価償却費=EBITDAとすることもあります。
どちらにしろEBITDAは稼ぐ力を測る一つの指標として幅広く活用されています。
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〜コラム〜減価償却とは?資金は流出しないのに収益を押し下げる費用項目の実態
減価償却をなぜ足し合わせるのか?
という点について理解に苦しむ方もいらっしゃると思います。
減価償却費は長期的に使用する資産を、数年間から時には数十年間にわたって按分して費用計上する会計手法です。
減価償却においては定額法と定率法が主に用いられます。
今回は簡単な定額法を用いて説明していきます。
例えば100億円の資産を購入して定額法で5年間で償却したとします。
1年目は100億円のキャッシュアウトが発生します。
しかし、会計上の費用としては20億円しか発生しません。
2年目から5年目はキャッシュアウトは発生しません。
しかし、20億円ずつの費用が発生し続けます。
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楽天証券でEV/EBITDA倍率を確認する方法
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EV/EBITDA倍率が重要視される理由
経済のグローバル化が進み大企業の多くは他国にも進出しています。
他国でもシェアを握ることができれば大きく成長できるからです。
グローバル化に伴い他国企業と収益性を比較する、あるいはM&Aの妥当性を測る指標が必要になってきました。
そこで、国による税制や会計基準の違いに左右されずに企業が割安かどうか図る指標として利用されたのが、EV/EBITDA倍率です。
また、投資の世界でも他国企業の株を購入することが容易にできるようになりました。
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業種別のEV/EBITDA倍率と具体例
東証一部上場企業のEV/EBITDA倍率は好況期不況期含めて、7倍~10倍程度で推移しており平均値は8倍程度です。
ここ1~2年で有利子負債を上回る現金を保有するキャッシュリッチ企業が増えEV/EBITDA倍率は低下傾向にあります。
EV/EBITDA倍率の平均値約8倍というのは目安にはなります。
しかし、EV/EBITDA倍率は業種によって高低があります。
安易に8倍を下回っているから割安と判断することは危険です。
例えば、自動車などの長年使用される耐久財を扱う企業のEV/EBITDA倍率平均値は8倍程度。
エネルギー事業や通信事業、公益事業を行っている企業の平均値は6倍程度となっています。
一方で、消費財や小売業、IT関連業、医薬品事業などのEV/EBITDA倍率は10倍を超える水準です。
このように業種によってEV/EBITDA倍率の平均値はかなり違います。
EV/EBITDA倍率での比較を行う際には同業他社と比べるようにしましょう。
また、EV/EBITDA倍率が高い企業は変動も大きい傾向があります。
全上場銘柄の平均値並みの自動車業界のトヨタのEV/EBITDA倍率は8倍を下回る水準で変動幅も1~2倍程度です。
一方で景気の影響を強く受ける商社大手三井物産や工作機械を扱うファナックなどはEV/EBITDA倍率も10倍を超えている年が多く、また変動幅も10倍以上あり安定していません。
その時点のEV/EBITDA倍率だけを見ていると、たまたまその時期だけEV/EBITDA倍率が低かった(高かった)という場合もあります。
EV/EBITDA倍率を確認する時には過去の推移も合わせて確認することが大切です。
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まとめ
今回は企業が割安かどうか測る指標であるEV/EBITDA倍率を紹介しました。
最後に重要点をまとめますと以下の5点があげられます。
- EV/EBITDA倍率は買収資金が何年で回収できるかを示した指標
- EVとは企業価値のことであり、時価総額+ネット有利子負債=EV
- EBITDAは企業の収益力を示す指標でありEBITDA=税引前利益+減価償却費+支払利息
- EBITDAは国毎に異なる税制や会計基準に左右されないように該当項目を除外している
- EV/EBITDA倍率の平均値は8倍程度だが、業種によって平均値が異なるので同業他社と比較することが重要
EV/EBITDA倍率はM&Aでよく活用される指標です。
個人投資家であっても企業が割安かどうかを判断する指標として有効に活用することができます。
グローバル化が進んでいる現代では海外企業とも比較可能な指標を知っておくことは大切です。
以上、企業の割安度を見極める「EV/EBITDA倍率」とは?具体例を交えてわかりやすく解説。…でした。