株式投資を行っている方であれば、頻繁に目にするであろう株価指標「EPS (Earning Per Share)」。
「ウォーレン・バフェット氏」や「ピーター・リンチ氏」をはじめとした著名投資家が注目する指標です。
なぜ注目される指標なのでしょうか?
このコンテンツでは、EPSについての説明やEPSが増減する理由を、株価やPERとの関係を含めてわかりやすく解説していきます。
目次
Contents
EPSの正式名称はEarning(利益)Per Share(1株あたり)となります。
文字通り、1株あたりの利益のことを指しますが、EPSはほかの指標を計算する際にも活用される指標です。
[計算式]EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数
企業は、株主によって保有されています。
例えばある企業Aが100株を発行していたとします。
誰かが、その企業Aが発行した全100株保有していれば、丸々その企業を保有していることになります。
太郎さんが1株保有していたら、企業Aの1%を保有しているということになります。
企業Aが100万円の純利益を出しているとします。
すると、1株保有していた太郎さんに帰属する利益は100万円の1%の1万円となります。
太郎さんは1株しか持っていないので太郎さんに帰属する利益1万円が企業Aの「EPS」となるのです。
さて、別の株主である次郎さんが10株を保有していたら?
次郎さんに帰属する利益は
10株×EPS(1万円) = 10万円
となります。
株を保有するということは、企業を部分的に保有するということです。
保有している株が毎年どれだけ稼いできてくれたのか?
持株数をかけることによって簡単に算出さることができるのです。
会計基準によるEPS
上場企業が株主に対して使用する報告書では、会計基準によるEPSが用いられます。
会計基準によるEPSとは、【普通株式に係る当期純利益 ÷ 普通株式の期中平均株式数】で求められるため、一般的なEPSの計算よりも精度の高い数値を計算することができます。
普通株式に係る当期純利益とは、当期純利益から、優先配当などの特別なものを引いて計算され、普通株式の期中平均株式数とは、計算期における発行済株式数から、自己保有分を引いて計算されます。
(目次に戻る)
EPSと純利益を区別する理由。株主目線ではEPSの方が重要
なぜ単純に、「損益計算書(PL)」の「当期純利益」だけではダメなのでしょうか?
「EPS(=1株あたり純利益)」はなぜそこまで重要なのか?
疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。
実はEPSの計算式に含まれている「発行済株式数」。
[計算式]EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数
こちらは、新規の株の発行で上昇し、自社株買いや株式併合によって発行済株式数とともに減少します。
つまり、発行済株式数が増減することは、EPSが増減する理由になりうるのです。
例えば、先ほどの例を用いて、今年の純利益が100万円の企業Aが、来年の純利益が150万円になったとします。
■ 上記の例:
例えばある企業Aが100株を発行していたとします。
誰かが、その企業Aが発行した全100株保有していれば、丸々その企業を保有していることになります。
太郎さんが1株保有していたら、企業Aの1%を保有しているということになります。
企業Aが100万円の純利益を出しているとします。
すると、1株保有していた太郎さんに帰属する利益は100万円の1%の1万円となります。
今年の発行済株式数は100株でした。
しかし、新規で株を発行して200株に増加すると1株利益は1万→7500円に減少します。
純利益 | 発行済 株式数 | EPS | |
今年 | 100万円 | 100株 | 1万円 |
来年 | 150万円 | 200株 | 7500円 |
純利益の増加が必ずしも自分に帰属する利益につながるとは限らず、EPSの減少には発行済株式数の増加も影響してしまうのです。
別で10株保有していた次郎さんからすると、今年自分に帰属する利益は「1万円×10株=10万円」ですが、来年は「7500円×10株=7.5万円」となってしまいます。
反対に「株主還元策」として、近年注目を浴びている「自社株買い」。
自社株買いを企業が実行すれば、たとえ利益が上昇しなかったとしてもEPSは上昇していきます。
例えば、企業Aの利益が今年と来年で100万円で不変であるとします。
一方来年自社株買いで20株を買い戻し償却すると発行済株式数は80株に減少します。
すると、EPSは1万円→1万2500円に増加します。
純利益 | 発行済 株式数 | EPS | |
今年 | 100万円 | 100株 | 1万円 |
来年 | 100万円 | 80株 | 1万2500円 |
純利益が増加しなかったとしても、自社株買いが行われることで自身に帰属する利益が上昇し、EPSが増加することもあります。
「自社株買い」については「ROE」の上昇も招き、長期的な利益の上昇に寄与することとなります。
非常にポジティブな株主還元策で、ウォーレン・バフェット氏も投資している会社には自社株買いをしきりに勧めています。
(目次に戻る)
EPSとPER・株価の関係〜なぜEPSが重要となるのか〜
株式売買を行う上で最も気にする数字のひとつが「株価」ですが、株価を計算するときにもEPSが使用されており、吸収合併後の株式を購入する際に活用されることもあります。
つまり、株式売買を行うにはEPSが必要不可欠といえます。
それでは、株を購入するときのEPSの活用方法について解説していきましょう。
株価というのは以下の算出式で算出されます。
[株価算出式]株価 = EPS × PER
「PER」は人々の心理的な状況を表すものです。
PERは英語で「Price to Earning Ratio」といわれるもので、頭文字をとってPERとなっています。
日本語では、「株価収益率」となります。
PERとは、計算式で表すと「時価総額 ÷ 純利益」となります。
【PER=時価総額 ÷ 純利益】
ここでいう「時価総額」を出す計算式は、「株価×発行済株式数」となります。
【時価総額=株価×発行済株式数】
株式バブルのような投資熱が高いときはPERが高くなる傾向にあります。
不況になると投資熱が失われ、PERは下落し割安度が増していきます。
「ピーター・リンチ」やひふみ投信の藤野英人氏も指摘しているのですが、基本的に株価は利益に連動していきます。
PERは一旦の心理的な状況でもあります。
しかし、利益は確固たるものです。
仮に利益の伸びに対して株価が出遅れていたとしても、いつかは利益の水準まで株価が追いついていくとしています。
そのため、有意義な増資をしているかどうかは、EPSで判断することができます。
株価がどの程度まで上昇・下落するか予想することも可能になります。
このことから、EPSと他の指標の関係が強いことがわかると思います。
(目次に戻る)
EPSが右肩上がりで上昇していく企業の特徴
EPSを見るときのポイントとして、右肩上がりに上昇していることが挙げられます。
なぜなら、EPSが右肩上がりに上昇していけば株価の上昇が見込まれるからです。
それではどのような企業がEPSを伸ばしていくことができるのかということについて触れていきます。
パターン①:ストック型のビジネスを行っている会社
まずはゆっくりですが、着実に。
以下グラフのようにスピードは速くないものの、「ストック型」でEPSを積み上げている企業です。
このような企業は所謂『ストック型ビジネス』という積み上げ型のビジネスを行っている企業に多いです。
顧客から毎月又は毎年収入を得られる形式のビジネスです。
顧客数の増減が収益の増加につながっていくビジネスモデルを有している企業です。
例としては以下のようなものが挙げられます。
- 電話やケーブルなどにインフラ型ビジネス
- アパートやマンションなどの賃貸型ビジネス
- Barやリゾートホテル等の会員型ビジネス
- 新聞や雑誌などの定期購読型ビジネス
- 建物などの定期的な保守点検ビジネス
時間がかかっても、着実にEPSを上昇させていきたいという方にはおすすめの投資先です。
パターン②:飛躍的に伸ばす消費者独占型企業
次に以下のように、飛躍的にEPSを上昇させたい方向け。
おすすめなのはバフェットが推奨する「消費者独占型企業」への投資です。
消費者独占型企業は、消費者が欲しいと思ってやまない商品・サービスを提供できている会社。
現在の米国企業では「アップル」「コカコーラ」「ハーシーフーズ」などが、例として挙げられます。
消費者独占型企業の特徴として株主資本利益率ROEが高いという特徴があります。
「ROE」は株主から預かった資金でいかに効率よく稼ぐことができるかという指標です。
日本の企業の平均ROEが10%の中、バフェットが投資した当時のコカ・コーラのROEは33%。
現在の最高ポーションのアップルはなんと約50%となっています。
例えば現在の株主資本が1億円、発行済株式数が10,000株だとします。
そしてROEが30%だとすると、純利益とEPSは以下のように指数関数的に増大していきます。
株主資本(億円) | 利益(億円) | EPS (円) | |
1年目 | 10.0 | 3.0 | 30,000 |
2年目 | 13.0 | 3.9 | 39,000 |
3年目 | 16.9 | 5.1 | 50,700 |
4年目 | 22.0 | 6.6 | 65,910 |
5年目 | 28.6 | 8.6 | 85,683 |
6年目 | 37.1 | 11.1 | 111,388 |
7年目 | 48.3 | 14.5 | 144,804 |
8年目 | 62.7 | 18.8 | 188,246 |
9年目 | 81.6 | 24.5 | 244,719 |
10年目 | 106.0 | 31.8 | 318,135 |
10年で株主資本、純利益、EPSともに10.6倍に増加していますね。
消費者独占型企業では、商品自体に魅力が備わっているため新たな投資を行うことで販売数を伸ばすことができます。
仮に販売数を拡大させる市場がなくなったとしても、自社株買いを行うことでEPS並びにROEを上昇させることができるのです。
(目次に戻る)
まとめ
企業全体の利益である当期純利益とは異なり、EPSは純利益を発行済株式数で割って算出できる1株あたりの純利益です。
純利益が増加しても、純利益の増加以上に発行済株式数が増加した場合はEPSは下落してしまいます。
純利益が増加しなくても自社株買いで発行済株式数が減少した場合はEPSは増加します。
株主に帰属する利益を求めるという意味でEPSは非常に重要な指標ということになることがわかりますね。
株価はEPSにPERを掛け合わせることで算出されるのでEPSの上昇は株価の上昇に直結します。
EPSが上昇する条件としては以下のような銘柄となります。
- 緩やかでも増加するストック型の企業
- 飛躍的に増加する高ROEの消費者独占型企業
- 自社株買いを積極的に行っている企業
EPSが上昇する銘柄を見極めるためには、EPSを見るときの注意点についても学ぶ必要があります。
しっかりと学び、素晴らしい投資ライフを送って行きましょう。
以上、EPS(Earnings Per Share)とは?株価とPERとの関係を含めてわかりやすく解説。…でした。