有名投資家の一人、「ピーターリンチ氏」は投資の神様と呼ばれています。
米国では、あの世界有数の投資家「ウォーレン・バフェット氏」と並ぶ投資家として知られています。
同氏は伝説的なファンドマネージャーで、資産を700倍に増やしたことで有名です。
実績としては、1977年〜1990年の僅か14年間で、マゼラン・ファンドの資産:2000万ドル(約22億円)→140億ドル(約1兆5000億円)に増加。
当然、運用益だけで増加したわけではなく評判が評判を呼び投資家からの新規投資を受け入れた結果です。
しかし、14年間の平均リターンは29%とバフェットの長期平均20%を上回り、ファンドの基準価格は13年間で25倍に膨れ上がりました。
同氏は「テンバガー(10倍に化ける株)」を度々発掘しています。
著書『ピーターリンチの株で勝つ』の中で、個人投資家がプロが犇めく株式市場の中でテンバガーのような大化け銘柄を見つけるコツについて述べております。
今回はそんなピーターリンチ流の、テンバガー(10倍株)の見つけ方について詳しく解説していきます。
目次
6つの会社の区分〜テンバガー株が眠るのはどの分類?〜
まずピーターリンチ氏は企業を6つの区分に分類して、投資すべき区分の企業群を見極めることを推奨しています。
ピーターリンチ氏は銘柄の調査を行わずに簡単に投資を行う投資家に向けて、『調査なしの投資は、カードを見ずにポーカーをするようなものだ。』と揶揄しており、投資を行う前の調査の重要性を説いています。
低成長株
「低成長株」とは、経済成長と同程度または少し上の2%〜3%の収益成長率(純利益)を誇る会社です。
大きくて古い会社に多く存在しています。
日本の大企業でもそうですが、元々は急成長著しい企業でも限界に達したか、努力をやめたかで成長が停滞している企業のことを指します。
産業全体に勢いがなくなれば、業界に属する殆どの銘柄も勢いをなくし低成長銘柄となってしまいます。
時代とともに変遷し、鉄道→鉄→化学→電力と急成長を遂げていた産業が、低成長産業になっていきます。
「低成長株」は事業に投資を行う余地が少なくなってくるため、「株の配当金」として投資家に還元する率が高くなることもあります。
結果的に、一般的には高配当銘柄が多くなっています。
低成長株は当然株価の成長も見込みにくいため、テンバガーとなることはなかなか考えられません。
そのため、ピーター・リンチ氏は低成長株は銘柄に組み入れないと断言しています。
優良株
「優良株」とは10%-12%程度の純利益の成長が見込まれる企業です。
ウォーレン・バフェット氏が選好する『消費者独占型』の企業と類似した性格を持つ分類です。
ピーター・リンチ氏もバフェット氏が好む「コカ・コーラ」や「P&G」などの銘柄を優良株として挙げております。
たとえ不況となってもインフレで商品価格が上がったとしても、消費者の心を離さないような企業を優良株として位置付けているのです。
このような企業は不況時に強く、仮に株価が下落した場合も、すぐに正当な評価を取り戻します。
そのことから、ピーター・リンチ氏も、優良株は一定程度取り入れているとしています。
急成長株
ピーター・リンチ氏自体も好みの分類であると明言しているのが「急成長株」です。
年に20%-25%の成長率(純利益)を実現して、うまくいけば、テンバガー。
さらには100倍から200倍にもなりそうな「小企業」です。
なぜ小企業なのかというと、明確な理由があります。
例えば「General Electric(GE)」のような大企業が、ある新製品を発売したとします。
新製品の売り上げが好調なでも、それはGEの売上の中の数%でしかありません。
GE全体の業績を爆発的に引き上げるのは難しいのです。
それに対して、小型企業ではある製品の爆発的なヒットがそのまま業績の急騰となるので株価が跳ね上がります。
ピーター・リンチ氏は、急成長株が急成長産業の中にあるとは限らないと強調しています。
例えば、当時の米国のタコスで急成長したタコベルや、ビール業界を塗り替えたアンハイザーブッシュ。
また、ホテル業界のマリオットなどが挙げられます。
日本でいうとレストラン業界の鳥貴族や『かつや』で一斉を風靡したアークランドサービスなどが、急成長株の例としてあげられます。
以下はそのアークランドサービスの10年間の値動きです。
2010年時点で約100円だった株価。
2017年末には2800円台となっています。
一方、ピーター・リンチ氏は急成長株は成長が停滞した時に株価が往々にして急落します。
そのため、いつまで成長が続くのかは常に見極める必要があると忠告しています。
市況関連
「市況関連株」は売上と利益が循環的に上下する企業の株式で自動車、航空、タイヤ、鉄鋼、化学や時の政権に影響される防衛産業も市況株に分類されます。
市況関連株は不況→好況の転換期には優良株以上の上昇を見せます。
購入するタイミングこそが全てです。
上記の業界で働き、業界動向に明るい方に適した投資先であるとしています。
業績回復株
「業績回復株」は会社更生法は適用されなかったものの、倒産寸前の崖っぷちから不死鳥のように復活した企業群です。
日本の例でいうと「パナソニック」などが良い例です。
パナソニックは減損による巨額赤字から立ち直り、株価は底値の4倍まで上昇しました。
現在は「東芝」が業績回復株となりうるかが期待されるとことです。
ピーター・リンチ氏も実は業績回復株は好んで投資しています。
有名な自動車メーカーである「クライスラー」が業績不振時に同社の株を購入しました。
クライスラーの株価が5年で15倍になった時に売却して、大きな利益を得たと語っています。
(当時は全ポートフォリオの5%もクライスラーに資金を突っ込んでいたと回想しています)
しかし、業績不振で倒産一歩手前の企業に投資をすることは勿論リスクでもあります。
うまくいかずに水泡と帰したり大きな損失を被ることもあります。
しかし、一度当てることができれば大きな利益を得ることが出来るので魅力的であるとしています。
資産株
証券会社のアナリストなどが見過ごしている資産を保有している企業を「資産株」と分類します。
例えば、とある不動産を保有している企業などです。
保有不動産周辺の地価が高騰しているにも関わらず、適正な評価がなされず、「バランスシート(BS)」の資産の部に低い評価価格で計上されている銘柄等が該当します。
小型企業で地元に近い企業であれば、このようなお宝銘柄が眠っていることにアナリストよりも早く気付く可能性があります。
従い、個人投資家が十分プロに勝てる分類の銘柄群であるとしています。
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ピーター・リンチが好む銘柄の特徴は『どんな馬鹿でも経営できる』会社
ピーター・リンチ氏は、ビジネスがわかりやすい企業で尚且つ『どんな馬鹿でも経営できる』銘柄を完璧な会社として定義しています。
競争の厳しい複雑な産業の中の優秀な経営陣がいる優良会社より、単純だけれど競争のない産業。
そして、凡庸なる経営陣が経営する会社の方を選好するとしています。
バフェット氏も自分が理解できない銘柄には投資しないとしています。
「ITバブル崩壊」の影響をあまり受けなかったという話は有名です。
ここからは、ピーター・リンチ氏が銘柄を選択する際に重要視している13項目をお伝えしていきます。
■ ピーターリンチが好む企業13項目:
その1.馬鹿げている社名
完璧な株は単純な事業を行なっているので退屈な名前を持つべきであるとしています。
ピーターリンチが傑作としている銘柄の名前として以下のような社名が並んでいます。
- ボブ・エバンズ・ファームズ
- マニー
- モー
これらの「面白みもなく」、「眠たくなるような」銘柄はアナリストから分析の対象にもなりません。
利益が伸びても放置される傾向が強いので、個人投資家が金融のプロに先駆けて仕込むことができるとしています。
その2.単純な業容を継続している
缶と瓶の栓をつくっているクラウン・コルク・アンド・シールのような銘柄を褒め称えています。
名前も単純で名前からわかるように単純な事業を営んでいますからね。
高収益で財務内容もよく退屈な事業を行なっているならば、証券会社のアナリストも着目しません。
割安なうちに、たんまりと仕込んで人気になった時に大きな利益をえることができるとしています。
その3.あまり感心できない業種
退屈でさらに感心しない業容であれば、尚更アナリストが目をつけようとしません。
ファンドマネージャーも購入しようとは思わないので割安のままさらに放置されやすいとしています。
またTVなどで紹介されることもないため、割安で放置される期間が長くなるということですね。
株価が割安のままで利益が成長していくので、どんどん魅力が増していきます。
いずれ株式市場が魅力に気づき適正価格まで上昇する過程で大きな利益を獲得することができるのです。
ちなみに例として全国のガソリンスタンドに、お油で汚れた自動車部品の洗浄機を供給しているセイフティー・クリーン社を例としています。
その4.気が滅入るような会社
葬儀屋のような後ろ向きなビジネスを行なっているような会社は、アナリストが敬遠しがちで好業績に対してあまり買われない業種であるとして推奨しています。
その5.アナリストや大口投資家が着目・保有していない企業
いままでの1-4の総括でもあるのですが、まだ大口の資金が入ってきていない企業にいち早く着目して資金を投じることによって将来大きな利益を獲得することができるのです。
その6.分離独立した企業
インターステート・デパートメンズから分かれたトイザラスのように低成長企業の中の有望な部門が独立した企業は大きな成果を出す可能性がある銘柄としてピーターリンチは着目しています。
その7.悪評が立っている会社
昔の米国では廃棄物処理産業はマフィアと関係があるとの風評により常に割安に放置され、そのあと100倍になりました。
要は業績とは関係ないところで、風評により株価が割安に評価されているような銘柄は仕込むべきということです。
その8.無成長産業であること
当然無成長産業は目立たないので注目するアナリストが少ないです。
しかし、日本の例であげた『かつや』を運営するアークランドのように数十倍となる銘柄が出てきます。
ピーター・リンチ氏は急成長産業の銘柄の注意点として、例えば、ある製品が爆発的に売れたとします。
そして、追随する競合他社が労働力が安い海外で低コストで同様な製品をつくります。
このことから、性能、価格ともに改善が続く結果大小の企業の規模に関わらず、長期の繁栄が難しいという点を問題点としてあげています。
一方無成長産業で尚且つ退屈で忌み嫌われるような分野では、競争相手もとても少ないです。
また、葬儀や飲食のように常に需要がある産業では、得てして簡単に驚異的な成長を行いうるため魅力的であるとしています。
その9.ニッチ産業
独占的な商売を行なっている企業のことで、価格決定権を握ることができるからです。
日本でいうとJRやJTのような企業が該当しますね。
ピーター・リンチ氏やウォーレン・バフェット氏は新聞社やケーブルテレビ局、特許を取得している医療薬品会社などを選好しています。
その10.常に需要があり購入し続ける必要のある産業
まさにバフェットも好きなコカコーラのような人々の需要を喚起し続けるような企業です。
他にもタバコや髭剃り、ソフトドリンクなどをあげています。
その11.テクノロジーを使用する企業
先ほどの急成長産業のようにダンピング競争に晒されるような企業ではなく、ダンピング競争の恩恵に預かれる銘柄への投資を推奨しています。
その12.内部の人間が購入している企業
企業のことを一番理解しているのは、企業の内部にいる実際に働いている方々です。
実際に働いている方の多くの割合が「自社株買い」や持株会で株を保有しているのであれば、内部の人間からみても自社の業績に明るい見通しを実感しているということになりますので、一つの重要な指標になります。
また取締役が保有する自社株が多いと株価を上昇させるインセンティブが上昇します。
これは、株主としてもポジティブな内容といえます。
その13.「自社株買い」を継続しておこなっている企業
2019年2月6日現在でソフトバンクは、6000億円の「自社株買い」を行うことを発表しました。
この、自社株買いは配当よりも強力な株主還元策です。
まず経営陣の経営判断として「市場の他の投資先より自社の株の魅力の方が高いですよ」と投資家に対して自信を見せつけることができます。
さらに、実質的には発行済株式数が減少します。
そのため、利益が一定だとしても、1株あたりの利益を示す指標である「EPS」が上昇します。
また、銘柄の割安度を測る「PER」が下落して、割安株になるという効果もあるのです。
例えば、利益が1億円の会社で発行済株式が100万株だとします。
現在の1株あたり利益であるEPSは100円(1億円 ÷ 100万株)です。
しかし、自社株買を50万株実施し、純利益は1億円のまま変わらなかったた場合はどうでしょうか。
自社株買後の1株あたり利益であるEPSは200円(1億円 ÷ 50万株)と2倍に上昇します。
結果としてPERも利益が上昇していないにも関わらず、元々のPERが20倍であった場合、自社株買後に10倍と割安になるのです。
継続的に自社株買を行っている企業の株式価値は上昇を続けます。
自社株買いを行い続けている企業は注目しておきましょう。
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まとめ
ピーター・リンチ流に会社区分を投資妙味の高さ毎に6つにわけると以下のように分けられます。
◾️ 投資妙味:高
- 急成長株
- 業績回復株
- 資産株
◾️ 投資妙味:中
- 優良株
- 市況関連株
◾️ 投資妙味:低
- 低成長株
また、銘柄を選ぶ基準として推奨されているのが、「自分が理解できる単純」で「一般的には注目が浴びにくいものの、業績が堅調に推移している銘柄」を「市場が注目する前に仕込む」ことでした。
上記で「投資妙味が高い」と分類した急成長企業は急成長産業の中だけに存在するわけではありません。
無成長産業の中で急速に業績が伸びている企業にこそ注目すべきであるという、示唆に富んだ啓示を行っています。
以上、『ピータリンチの株で勝つ』から学ぶテンバガー(10倍株)の見つけ方!6つの会社区分・13の企業項目とは?…でした。
その他、投資に関する書籍については以下で網羅的にまとめていますので参考にしてみてください。