ニュースなどで時価総額という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
時価総額は企業の規模を表す指標であり時価総額から見えてくる意外な事実プロは常にここを意識しています。
このコンテンツでは、時価総額について詳しくお伝えしていきます。
■ 今回のポイント!
- 時価総額とはそもそもどのような指標なのか?
- 時価総額がどのような局面で使用されているのか?
- 日本の時価総額が高い企業の規模はどの程度なのか?
目次
Contents
時価総額の意味と算出方法とは?
「時価総額」とは一体どういう意味なのかを説明していきます。
まず「時価」とは現時点で株式市場において成立している株価のことをいいます。
株式市場に流通している株式はトレーダーによって売買されてその需要と供給によって株価が変動します。
つまり、時価は1つではなく日々刻刻と変化する価格です。
時価総額とは文字通り時価の『総額』です。
株式企業は事業を営むために株式市場に対して株を発行して資金を調達しています。
発行した株の総量を『発行済株式数』と呼びます。
時価総額は『時価』に総量である『発行済株式数』をかけて算出されます。
企業同士を比べる指標として1つ「株価」が思い浮かぶと思います。
ただし企業同士の株価がかけ離れすぎていては、「株価だけでは企業の価値は判断できない」ということになります。
「株価(時価)×発行済株式数」とすることで、その企業の株式市場でのプレゼンスを表現することができるのです。
また、「株価×上場株式数」とする場合もあります。
そのため、時価総額は、市場規模に使われることもあります。
株価だけで比較するのではなく発行済株式数を考慮することで、企業価値が正当に評価できるようになりました。
このような理由から、時価総額は企業の価値を表す指標として親しまれています。
さらに、時価総額はファンダメンタルズ投資の基本としても使用されており時価総額を把握することによって以下のようなことが分かるようになります。
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東証一部時価総額の推移と時価総額毎の企業の分布
「東京証券取引所市場第1部の時価総額」といった言葉を聞いたことがありませんか?
東証1部に上場している企業2,151社(2019年9月20日現在)の時価総額を合計したものになります。
以下は東証一部の時価総額の推移です。
現在(2019年10月末)時点の東証一部時価総額は600兆円という規模になっています。
ちなみに現在日本に上場されている銘柄の時価総額の分布は以下となっています。
殆どの銘柄は500億円未満の企業で、我々が名前を知っている有名企業は基本的には1兆円以上の時価総額を誇ります。
殆どの日本人は日本の上場株の僅か5%程度しか知らないということですね。
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日本の時価総額ランキング
上場企業の中でも時価総額が高い代表的日本企業をランキング形式で並べたものが以下となります。
トヨタ自動車を筆頭に誰もが一度は聞いたことがある企業がランクインしています。
順位 | 企業名 | 兆円 |
1 | トヨタ自動車 | 24.9 |
2 | NTT | 10.9 |
3 | NTTドコモ | 10.3 |
4 | ソフトバンクグループ | 10.2 |
5 | ソニー | 9.9 |
6 | キーエンス | 9.7 |
7 | 三菱UFJ | 7.9 |
8 | KDDI | 7.7 |
9 | リクルート | 7.2 |
10 | ソフトバンク | 7.1 |
11 | 武田 | 6.9 |
12 | ファストリテイリング | 6.6 |
13 | 中外製薬 | 5.8 |
14 | オリエンタルランド | 5.8 |
15 | 任天堂 | 5.7 |
16 | ホンダ | 5.5 |
17 | 三井住友FG | 5.5 |
18 | 第一三共 | 5.1 |
19 | 信越化学 | 5.0 |
20 | JT | 4.8 |
21 | ゆうちょ銀行 | 4.7 |
22 | 村田製作所 | 4.6 |
23 | 三菱商事 | 4.6 |
24 | 日本電産 | 4.6 |
25 | 日本郵政 | 4.6 |
26 | ダイキン | 4.5 |
27 | JR東海 | 4.5 |
28 | 花王 | 4.4 |
29 | 日立 | 4.4 |
30 | 東京海上 | 4.3 |
(参照:日経新聞社)
トヨタ自動車が傑出しているようにみえますが、NTTグループ全体だとトヨタ自動車に匹敵するレベルになります。
また、ソフトバンクグループとソフトバンクの違いが気になった方も多いと思います。
ソフトバンクグループは持ち株会社で孫正義氏が社長としてビジョンファンドを運営しています。
一方のソフトバンクはソフトバンクグループの通信子会社でKDDIやNTTドコモの競合他社となります。
さらに2020年1月10日時点の時価総額上位50位を図示したものが以下となります。
時価総額と株価の変動の関係性を解説
時価総額は、株価×発行済株式数で計算されるため、株価の変動は時価総額の変動に直結してきます。
好材料が発表されたときに株価が高騰することがありますが、その際には時価総額も同様に高騰していることが分かります。
時価総額が高いほど流動性が高いということも理解しておきましょう。
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〜コラム①〜平成元年と平成30年の世界の時価総額ランキングの変遷
因みに以下は平成元年と平成30年時点での世界の時価総額の変化です。
バブル絶頂期の1989年においては日本企業が時価総額世界Top10のうち7個を占めていました。
平成元年世界時価総額 | 平成30年世界時価総額 | ||||
順位 | 国 | 企業 | 順位 | 国 | 企業 |
1 | 日本 | NTT | 1 | 米国 | アップル |
2 | 日本 | 日本興業銀行 | 2 | 米国 | アマゾン |
3 | 日本 | 住友銀行 | 3 | 米国 | アルファベット |
4 | 日本 | 富士銀行 | 4 | 米国 | マイクロソフト |
5 | 日本 | 第一勧銀 | 5 | 米国 | フェイスブック |
6 | 米国 | IBM | 6 | 中国 | バークシャー |
7 | 日本 | 三菱銀行 | 7 | 中国 | アリババ |
8 | 米国 | エクソン | 8 | 中国 | テンセント |
9 | 日本 | 東京電力 | 9 | 米国 | JPモルガン |
10 | 英国 | ロイヤルダッチシェル | 10 | 米国 | エクソンモービル |
しかし、2018年(平成30年)の時点では時価総額Top10は様変わりしています。
米国のFAANGや金融機関と中国のテックジャイアントに取って代わられています。
因みに日本企業の時価総額首位のトヨタ自動車でも第35位という状況になっています。
以下は先ほどのランキングに時価総額を付け加えたものです。
平成元年世界時価総額 | 平成30年世界時価総額 | ||||
順位 | 企業 | 時価総額(億ドル) | 順位 | 企業 | 時価総額(億ドル) |
1 | NTT | 1,638.6 | 1 | アップル | 9,409.5 |
2 | 日本興業銀行 | 715.9 | 2 | アマゾン | 8,800.6 |
3 | 住友銀行 | 695.9 | 3 | アルファベット | 8,336.6 |
4 | 富士銀行 | 670.8 | 4 | マイクロソフト | 8,158.4 |
5 | 第一勧銀 | 660.9 | 5 | フェイスブック | 6,092.5 |
6 | IBM | 646.5 | 6 | バークシャー | 4,925.0 |
7 | 三菱銀行 | 592.7 | 7 | アリババ | 4,795.8 |
8 | エクソン | 549.2 | 8 | テンセント | 4,557.3 |
9 | 東京電力 | 544.6 | 9 | JPモルガン | 3,740.0 |
10 | ロイヤルダッチシェル | 543.6 | 10 | エクソンモービル | 3,446.5 |
単純に第一位を比較してもNTTの1,638億ドル(約17兆円)でした。
しかし、平成30年時点のトップであるアップルは9,409億ドル(約103兆円)に増加しています。
因みに現在の日本の時価総額トップであるトヨタ自動車の時価総額は2280億ドルと平成元年時点のNTTを既に超えています。
日本も時価総額は増加している企業もあります。
しかし、世界の特にテクノロジー企業の時価総額の伸びが凄まじく相対的に順位が下落しているのです。
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注意点①:政府保有により発行済株式数と上場株式数が異なる場合
ここまで説明してきた時価総額は「時価×発行済株式数」で算出していました。
算出方法に関して2つ例外があるので知っておくといいでしょう。
1つ目は発行済株式数と上場株式数が異なる場合です。
普通株だけ発行する会社であれば発行済株式数と上場株式数は一致します。
会社が発行することをあらかじめ定款に定めている株式数(授権株式数)のうち、会社が既に発行した株式数のことです。
普通株式のみを発行する会社では通常、発行済株式数は上場株式数と一致しています。引用:日本取引所グループ
発行済株式数の一部を政府が保有している場合にはその限りではありません。
この場合の時価総額は「時価×上場株式数」で算出しますので注意してください。
例えばNTTを例として取り上げます。
NTTの発行済株式数は以下の通りとなります。
しかし内訳をみると34.87%が政府および地方公共団体によって保有されています。
つまりNTTの時価総額は以下のように算出されます。
NTT時価総額=(発行済株式1,950,394,470 – 政府保有株 679,141,900) × 株価5329=6.77兆円
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注意点②:TOPIXは時価総額加重平均指数だが浮動株に限る
2つめは、TOPIX(東証株価指数)を算出する場合です。
「TOPIX」という株価指数をご存知でしょうか?
TOPIXは「構成銘柄の時価総額÷基準時価総額×100」で算出されるのです。
この時価総額は、上場株式数のうち大株主などの安定株主の保有株数を差し引いた「浮動株数」をもとに算出されます。
この時差し引いた大株主などの安定株主が保有していて株式市場に流通して売買される可能性が低い株式を「固定株」といいます。
つまり「浮動株」はその逆で、株式市場で売買される可能性が高い株式のことです。
TOPIXと同じような時価総額加重平均指数は1990年代から世界的に浮動株をもとに算出しようという動きが広がりました。
そこで、日本もTOPIXにおいて2006年浮動株による算出方法に移行しました。
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〜コラム②〜TOPIXと日経平均株価
平均株価指数は時価総額ではなく文字通り株価を平均する指数です。
TOPIXは時価総額が大きい銘柄の影響を大きく受けるのに対して日経平均株価は株価が高い銘柄に大きく影響をうけます。
以下がTOPIXと日経平均の構成上位銘柄です。
TOPIXは時価総額が大きいトヨタ自動車が構成Topになっています。
一方、日経平均株価はファーストリテイリングが構成比率Topで9%近い割合を占めます。
順位 | TOPIX構成上位 | 構成比率 | 日経平均構成上位 | 構成比率 |
1位 | トヨタ自動車 | 3.38% | ファーストイリテリング | 8.85% |
2位 | 三菱UFJ | 1.75% | ソフトバンクグループ | 4.54% |
3位 | ソニー | 1.69% | ファナック | 3.26% |
4位 | NTT | 1.42% | KDDI | 2.90% |
5位 | ソフトバンクグループ | 1.42% | 東京エレクトロン | 2.78% |
6位 | キーエンス | 1.29% | ユニファミリーマート | 2.26% |
7位 | 三井住友 | 1.20% | テルモ | 2.00% |
8位 | ホンダ | 1.16% | 京セラ | 2.17% |
9位 | みずほ | 1.08% | ダイキン工業 | 2.09% |
10位 | KDDI | 1.07% | 信越化学工業 | 1.63% |
両者の算出方法は大きく異なります。
しかし、結果的に値動きとしてはほとんど似たような動きとなっています。
時価総額が大きい企業に投資した方がいい理由
時価総額が大きいということは、株価も高騰しているということも言えるため、
より安定した成長を続けていると言っても過言ではありません。
資金が豊富であることから倒産のリスクも低いため長期投資を行う際にも安心して投資することができます。
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時価総額が大きいメリット
企業にとって、時価総額が大きいことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
1つずつ紹介していきます。
買収の対象から除外されやすくなる
企業が買収されるとき、支払われるのは時価総額(買収価格)です。
つまり、企業買収側からすると時価総額が大きい企業は買収対象として手を出しにくくなります。
信用性が上がる
企業は、資金調達の一環で株式を発行して株主から出資を受けていますよね。
人々は時価総額が大きい企業を見ると信用性を感じやすい傾向があります。
それが結果として「もっと株式を買おう」と思えることに繋がります。
すると資金調達がさらに円滑に進むので事業活動を行いやすくなっていきます。
企業にとって非常に良い流れが生まれるというわけです。
時価総額が大きいことのデメリットはある?
時価総額が大きいことのデメリットとして値動きが小さいことが挙げられます。
時価総額が大きいということは発行済株式数も多いことから流動性は高いものの、
取引が株価に与える影響が少ないため値動きは小さくなってしまいます。
株価の値動きによるキャピタルゲインを狙う場合にはデメリットとなってしまう場合があります。
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投資家は小型株効果を利用しよう!
株式投資をしている方にとって企業の時価総額は、企業間の比較をして銘柄選びをするにあたって非常にいい材料です。
とくにファンダメンタルズ分析に重きを置かれている方にとって時価総額は大切な指標となります。
ここでは、時価総額を利用すると何が得られるのかについてお話していきます。
小型株効果を見極められる
時価総額を最もトレードに活かすことができるのは小型株効果です。
以下は米国の株式の1970年-2010年のリターンであり年率リターンは小型株がグロース株を大きく上回っております。
小型バリュー株15% > 大型バリュー株10.5%
小型グルース株8.8% > 大型グロース株 7.6%
日本株においても同様の効果が確認されています。
時価総額の低い銘柄でテンバガー銘柄をソートしよう!
時価総額が小さい企業の株式は買ってもいいのかと思う方も多いことでしょう。
時価総額が低い銘柄であっても十分に利益を狙うことができます。
さらに大きく上昇する銘柄を選ぶ際には小型株を狙うのが定石です。
株価が10倍に上昇する銘柄をテンバガーと呼びます。
テンバガーも小型株に多く存在しています。
過去10年間にテンバガーは164銘柄存在していましたが、137銘柄は時価総額が100億円未満の銘柄から排出されました。
先ほどの現時点の時価総額を表した図をご覧ください。
100億円未満の銘柄は1350社となっています。
確率的には約10%近い銘柄がテンバガーになる可能性を秘めていることになります。
時価総額が小さい株式で気を付けないといけないこと
時価総額が小さいということは流動性が低いということも意味するため、
売買したいタイミングで取引を行うことができない場合があります。
また、信用性も小さくなってしまうため、投資を行う際には慎重に銘柄を選ぶ必要があります。
同業界内で比較ができる
さまざまな分析をしたうえで自動車業界に投資すべきであるという判断に落ち着いたとします。
ただし、自動車業界の企業は日本国内だけでもたくさんあります。
自動車業界の中から適切に企業同士を比較して銘柄選びをする必要がありますよね。
そのような場合には、自動車業界各社の時価総額を比較してみましょう。
自分が企業に持っていたイメージや知名度の高さ、利益の大きさによる予測とはまた打って変わった結果が現れることがあります。
銘柄名 | トヨタ自動車 | 日産自動車 | 本田技研工業 | マツダ | 三菱自動車工業 |
時価総額 | 224,788 億円 | 32,643 億円 | 51,381 億円 | 7,083 億円 | 7,794 億円 |
銘柄名 | スズキ | SUBARU | いすゞ自動車 | ヤマハ発動機 | 日野自動車 |
時価総額 | 25,397 億円 | 21,660 億円 | 10,707 億円 | 6,794 億円 | 4,987 億円 |
トヨタ自動車がTopなのは言わずもがなです。
しかし、スズキやSUBARUが時価総額でマツダや三菱自動車を上回っていることは意外だったのではないでしょうか?
時価総額の大きい企業は買収の危機に晒される可能性も低く、危機発生時の耐性が強いという特徴があります。
投資を行う上での一つの指標とすることができるでしょう。
「トヨタを買っておけば大丈夫」ってほんと? 銘柄選びの常識・非常識
時価総額も売り上げもトップクラスのトヨタですが、時価総額や売り上げが高いからといって、
買ってもいいというわけではありません。
時価総額が高かったからといっても、株式の発行枚数によって株価は下がりますし、
売り上げが株価に直結するわけでもないからです。
時価総額は投資を行う際の一つの指標にすぎないため、投資を行う際にはさまざまな角度から多面的に判断する必要があります。
国際間で比較ができる
時価総額は世界共通の指標です。
つまり日本国内に限らず海外企業との比較もできます。
同業界の日本企業と海外企業を比較してみると面白いかもしれません。
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時価総額を利用する際の注意点
時価総額は会社の横比較や国際間の比較にも使用できることを解説しましたが、使用する際には注意点もあります。
注意点もしっかりと押さえておきましょう。
【新株発行に注意】
時価総額は「株価×発行済株式数」のため、資金調達による新株発行が時価総額は増加の原因になることがあります。
そのため、時価総額の増加が全て業績の増加というわけではないことに注意しましょう。
【優先株等に注意】
企業によっては優先株を発行している企業もあります。
優先株を発行している企業であっても、時価総額の表示は普通株のみで計算されているため、
優先株も足して計算し直す必要があります。
まとめ
このコンテンツでは、時価総額の意味や大きくあることのメリットや活かし方、
時価総額が高い日本企業トップ10をご紹介しました。
時価総額は企業にとってもトレーダーにとっても重要な指標です。
ただし、投資をする際は時価総額が大きいからといってその企業の株を買うのではなく、
株価の動向や流動性などを鑑みて銘柄選びを行うことが大切です。
また、「投資」と「トレード」は別物ということも、株の勉強をする前に知っておくべき大事なことです。
以上、時価総額の意味と算出方法とは?東証一部時価総額の推移と日本企業の時価総額ランキングを含めて紹介する!…でした。