「IPO投資(新規公開株投資)」を行っている方であれば、すでに「オーバーアロットメント」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「オーバーアロットメント」はIPO銘柄の「初値」にも影響を与える重要な要素です。
今回のコンテンツでは、そんなオーバーアロットメントについてわかりやすく詳しく紹介します。
◼️今回のポイント!
- IPOによる株式の販売は公募、売出、オーバーアロットメントによる売出の3種類
- オーバーアロットメントは、公募、売出株数以上の応募があった場合に利用される
- オーバーアロットメントによる売出は証券会社が大株主から株式を借りて売り出す
- 公募株数の割合が大きいほど企業の成長期待が大きくなり初値が上昇しやすい
目次
Contents
オーバーアロットメント(OA)の意味
オーバーアロットメントとは、売出の一種であり、英語で表すとOver Allotment、略してOAと呼ばれています。
「売出」とはIPOやPOをする際に、創業者や既存株主が保有株を50人以上の不特定多数の投資家に対して販売・勧誘することを指します。
通常の売出は、事前に発表された売出株数が全て売りに出されます。
しかし、オーバーアロットメントによる売出は、IPO銘柄に対して多数の購入希望がある場合のみ売りに出されます。
売り手に対して、買い手が多すぎた場合に、株価の高騰や暴落を防ぎ適正な株価形成を促し株価を安定させるために、追加で売り出すという仕組みです。
つづいては、公募と売出、オーバーアロットメントについて紹介します。
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IPOで株が売りに出される3種類の仕組み
IPO投資は売りに出された株を買うことになりますが、IPOにより株式が売られる仕組みは3種類あります。
- 公募
- 売出
- オーバーアロットメントによる売出
公募 | 売出 | オーバー アロットメント | |
株式の出元 | 新規発行 | 既存株主 | 証券会社 |
発行済株式数 | 増 | 不変 | 不変 |
資金獲得先 | 会社 | 既存株主 | IPO後株価による |
公募
公募とは上場に伴い新規で発行される株式のことです。
よって、公募株式数の分、企業の発行株式数は増加することになります。
なお、上場前に企業資料に書かれている発行株式数は公募株式数を含んでいません。
公募により売り出した株式の売却金は企業の資金となります。
つまり、IPO全体の売出に占める公募株式数の割合が多いほど、企業が得られる資金が多くなるということです。
当然、多くの資金を得られる方が成長投資をより行うことができます。
IPOでは公募株式の割合を確認することも重要なポイントとなります。
売出
売出とは上場前からの既存株主や創業者がIPOに伴い所有株を投資家に売ることを指します。
既存株式を売却するだけですので、企業の発行総株式数には影響しません。
大株主が所有株を売ることになりますので、売却によって得たお金は株を売却した株主のものとなります。
ただし、ベンチャー企業に投資を行うベンチャーキャピタルなどが上場に伴い保有株を大量に売却する場合は、需給が悪化することもありますので注意しましょう。
オーバーアロットメントによる売出
IPO銘柄の募集・売出予定の株数を超える多数の購入応募があり、適正な株価形成が難しいと判断された場合に、売出予定株数を超過して売り出される仕組みをオーバーアロットメント(OA)と言います。
通常の売出は大株主が所有株を売りに出すのに対し、オーバーアロットメントによる売出の場合は、証券会社が大株主から株式を借りて売りに出します。
そのため、売却者が証券会社という点が大きな違いです。
証券会社は大株主から株式を借りて売出を行いますので、当然大株主に株式を返す必要があります。
ただ、証券会社側からすれば上場前に株を借りて売り上場後に市場で株を購入して大株主に返却することとなります。
つまり、株価が公募価格より上昇した場合は損をすることになります。
そのようなリスクがあると、証券会社もオーバーアロットメントによる売出を行わなくなるかもしれません。
そういった事態を避けるために行われるのが「グリーンイシューオプション」と「シンジケートカバー取引」です。
グリーンイシューオプションによる第三者割当からの株式調達
グリーンイシューオプションとは、証券会社と大株主あるいは会社が結ぶオプション契約です。
グリーンイシューオプションはIPO銘柄の市場価格(株価)が当初引受した価格より高い場合に利用されます。
その内容は、オーバーアロットメントによる売出を行う際に、証券会社が当初引受した価格と同じ価格で会社から第三者割当により株式を調達します。
調達した株を引き受け時と同じ価格で返済するため、上昇した高い株価で株式を市場から買い戻す必要が無くなります。
つまり、空売りによる損失発生のリスクヘッジになっているのです。
シンジケートカバー取引による株価の調整
シンジケートカバー取引は、株価が引受価格より低い場合に利用されます。
内容は単純で、市場から買い集めた株式を借入れた株式の返済に使うという取引です。
引受価格より市場価格(株価)が低い場合は、売った価格より安く買い戻せるわけですから証券会社は損をすることはありません。
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オーバーアロットメントは多くのIPOで活用されている
IPOが実施される多くの場合オーバーアロットメントが設定されており、実際にオーバーアロットメントによる売出が実施されます。
オーバーアロットメントは、どこでわかるのか知りたい場合は、東京証券取引所の新規上場会社情報を確認することでわかります。
IPO銘柄は人気となることが多く、申込者数がIPOによる販売総株式数を超えることが多いのが一般的です。
そのため、ほとんどのIPOは、応募者多数で抽選により当選者を選ぶことになっています。
そのため、オーバーアロットメントは特殊なものではなく、IPOの流れの中で自然と行われているのです。
オーバーアロットメントは、買い手が多すぎて株価形成が適正とならない場合、需給を安定させるために使われます。
しかし、それ以外にも株価下落時の株価下支えとなる面もあります。
株価が下落した場合は、既に述べたようにオーバーアロットメントの引受証券会社はシンジケートカバー取引により市場で買いを入れるからです。
大量の買いにより株価は下支えされることになります。
このようにオーバーアロットメントは、株価の過熱を抑えるだけでなく株価の急落を緩和する効果もあるのです。
IPOやPOの流れ
新規上場を行うIPOと、公募・売出を行うPOでオーバーアロットメントが行われていることを解説しました。
ここでは、オーバーアロットメントに至るまでの流れを解説していきます。
通常のIPOやPOの流れでは、売出価格の決定は「ブックビルディング方式」により行われます。
ブックビルディング方式とは需要積み上げ方式とも呼ばれ、あらかじめ仮条件を設定し、需要に応じて公開価格を決める方法です。
この時の仮条件は機関投資家などの意見を参考に決定されます。
ブックビルディング方式により需要が大きいことを確認することができると、主幹事証券会社は大株主から株式を借り、追加販売を行います。
そして、追加できる株数は売り出し数の15%までとなっています。
これがオーバーアロットメントであり、上記のとおり高い需要が見込まれるIPOでは自然に行われているのです。
オーバーアロットメントは、IPOやPOを行う際の需要と供給のバランスを保つことにも役立っているのです。
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公募株数と売出株数の比率
公募株式の売却資金は企業のものになります。
一方で、売出株式の売却資金は既存株主のもとになり、企業の手元には入ってきません。
つまり、企業が上場により手に入れることができる資金にとって重要なのは、公募株数となります。
特にIPO銘柄は成長段階にある企業ばかりであり、これから設備投資などをどんどん行い事業を拡大していく必要があります。
つまり資金を必要としているのです。
そもそも、上場する目的の大部分は資金を得るという点にあります。
企業成長という点で見れば重要なのは公募株式となります。
実際、同じ規模のIPOであってもIPO全体の株式に占める公募株数の割合が多い方が投資家からの評価も高まります。
結果的に初値も上昇する傾向があるのです。
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まとめ
オーバーアロットメントはIPOの際に行われる売出方法の一つです。
最後にIPO、オーバーアロットメントの重要点をまとめますと以下となります。
◼️今回のまとめ:
- IPOによる株式の販売は公募、売出、オーバーアロットメントによる売出の3種類
- オーバーアロットメントは、公募、売出株数以上の応募があった場合に利用される
- オーバーアロットメントによる売出は証券会社が大株主から株式を借りて売り出す
- 公募株数の割合が大きいほど企業の成長期待が大きくなり初値が上昇しやすい
以上、オーバーアロットメント(OA)とは?「公募株」や「売り出し株」との違いを含めわかりやすく解説!…でした。