皆さん時間分散という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
本日は時間分散の概念について触れた上でドルコスト平均法を代表として、
必ずしも時間分散によってリスクが低下するわけではない点をお伝えしていきたいと思います。
Contents
時間分散とは?
まず、そもそも時間分散とはどのようなものなのでしょうか?以下日興証券の定義についてみていきましょう。
時間分散という言葉は、2つの意味で使用されることがあります。
ひとつは投資タイミングの分散で、ある程度長い時間軸のうえで、「ドル・コスト平均法」(定時定額購入)に代表される複数回に分けての投資や、複数回に分けての売却で、買値や売値が平均化されることによって高値づかみや安値売りを避けようとするものです。
もうひとつが長期間投資することによって、1年当たりの価格変動のブレが小さくなる効果を期待するもので、長期投資によるリスク低減効果のことを時間分散効果と呼ぶことがあります。
だだし、1年間投資した場合の価格変動のブレよりも、10年間投資した場合の価格変動のブレが小さくなるというのは、あくまでも1年当たりの平均のブレが小さくなるというだけで、10年間の累積の価格変動のブレは、1年間の場合よりも大きくなる点には注意が必要です。
参照:SMBC日興証券
一言に時間分散といっても、主に二つの意味があります。それぞれについて詳しく見ていきたいと思います。
投資タイミングをずらす意味の時間分散
まずは投資タイミングをずらすという意味での時間分散です。
ドルコスト平均法はタイミングを分散する投資法
この意味での時間分散として最も有名なのが、冒頭でもお伝えしたドルコスト平均法です。
ドルコスト平均法は機械的に購入することができるので、購入機会を逃すリスクをミニマイズすることができます。
また、毎回の購入額は小さいので高値掴みで大きな含み損を抱えてしまうリスクを抑えることができます。
ドルコスト平均法は各年度の投資リスクを均一にするものではない
ドルコスト平均法は時間が経過するにつれて累計投資額は増大していきます。
例えば、年間40万円の非課税枠が与えられている「つみたてNISA」を例として見ていきましょう。
限度額まで投資した場合の5年目までの累計投資額は200万円となります。
例えば、各年度に株価が20%ずつ下落した場合の損失額についてまとめたのが以下となります。
累計投資額 | 20%下落した場合の損失 | |
初年度 | 40 | 8 |
2年目 | 80 | 16 |
3年目 | 120 | 24 |
4年目 | 160 | 32 |
5年目 | 200 | 40 |
当然、投資した累計額が大きくなればなるほど、相場環境が悪化した時に被る損失額も大きくなるのです。
「つみたてNISA」の出口戦略の記事でもお伝えしていますが、
ドルコスト平均法は終盤になればなるほど相場環境が重要になってくるのです。
つまり、ドルコスト平均法だからといって安全なわけではないということを念頭にいれておきましょう。
【ドルコスト平均法が適した人】
- 現時点でまとまったお金がない
- 一括で投資をするのが怖い
- 今相場が景気サイクル的に高いと考えているが持たざるリスクもあると考えている
長期投資による時間分散とは?
一つ目の意味での時間分散は投資するタイミングでの時間分散でした。
しかし、1年あたりの価格変動リスクを抑える効果を期待する長期投資こそが時間分散の本質となります。
投資期間が長い方が投資リターンは安定するというイメージ
何をいっているのか分からない。という方に図を用いてイメージとしてお伝えしていきたいと思います。
株式投資を長期間行なっている方であればご理解いただけるかと思うのですが、単年度だと平均リターンが大きくぶれます。
しかし、投資期間が長くなればなるほど、平均年率リターンは平均化するというものです。
長期投資で年間リターンが平準化することをデータで検証
では長期投資でリターンが平準化するのかという点についてデータで検証していきます。
以下は1928年から2017年の米国の代表的な株価指数であるS&P500指数の各年度のリターンの推移です。
しかし、10年単位のリターンでみると大分安定してきます。
1928年であれば、1928年から1937年末までの年率平均リターンをプロットしていったものが以下です。
更に30年間の年間平均リターンをプロットしたものが以下となります。
つまり同様に1928年であれば、1928年から1957年末までの年率平均リターンをプロットしていったものが以下です。
確度が高いだけど将来も長期リターンが安定することは限らない
最初の定義でもお伝えしている通り、確実に長期リターンが安定するというわけではありません。
あくまで、1年当たりの価格変動のブレが小さくなる効果を期待するものなのです。
好況、不況ということばがある通り、常に景気が一定であるとは限りません。
好況の時期もあれば、不況の時期もあるという風に景気はサイクルしているのです。
そのため、30年という長期的な視点でみるのであれば景気の大きな畝りを一通り経験できるのでリターンが結果的に安定するのです。
ただ、あくまで過去の経験上ですので今後日本のバブル崩壊後のように長期低迷する可能性があるかもしれません。
しかし、筆者としては米国株に関しては今後も長期的なリターンは安定するとみています。
この根拠については以下でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
以下、過去の長期的な景気と資産価格の推移についてはレイダリオのパラダイムシフトが参考になるのでご覧ください。
まとめ
- 時間分散には二つの考え方がある
- ドルコスト平均法は投資タイミングを分散するという意味での時間分散
- ドルコスト平均法では積立後半にリスクが集中するという難点がある
- 長期投資で年率リターンを平準化するのも時間分散であり、こちらが本質。
- 30年以上の長期投資を行えば年率平均リターンは安定する。