「ディフェンシブ銘柄」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
つまり、ディフェンシブ銘柄というのは景気によって激しく上下動しない銘柄ということになります。
一方、景気によって価格が上下動する銘柄群を反対にシクリカル銘柄(=景気敏感株)と呼ばれています。
このコンテンツでは、以下2点について、について具体的な銘柄に触れながらお伝えしていきたいと思います。
- ディフェンシブ銘柄が営む事業の特徴
- ディフェンシブ銘柄はどのような業種に多く存在しているのか?
- ディフェンシブ銘柄をベータ値を用いて確認する方法
- ディフェンシブ銘柄のメリットとデメリット
- 注目ディフェンシブ銘柄
Contents
ディフェンシブ銘柄が提供する事業の特徴とは?
ディフェンシブ銘柄とは景気によって業績の変動が少ない銘柄群のことを指します。
それではどのような銘柄がディフェンシブ銘柄が運営している事業にどのような特徴があるかをみていきましょう。
パターン①:世界経済の影響を受けにくい事業
進展するグローバル化によって世界経済の連環性は年々増大しています。
世界経済の影響を受ける事業を営んでいたら景気が悪化した時に大きな影響を受けます。
特に自動車等の輸出銘柄や、輸出銘柄の材料・素材メーカー等は大きな影響を受けます。
パターン②:不況時でも需要が衰えない事業
日本経済が不況に陥った時に奢侈品を提供しているサービスは落ち込みます。
しかし、いくら不況に陥っても食料・衣料品関係や医療事業は定常的に需要が発生します。
また、日々欠かせないサービスも不況の煽りを受けにくいという特徴があります。
電気ガス水道関連や、日々の通勤・通学に欠かせない鉄道といったインフラ銘柄等がよい例です。
また、いくら不況になったからといっても携帯を解約しようとはなりませんので携帯事業会社もディフェンシブ銘柄となります。
パターン③:ストック型の事業
最後にストック型のビジネスモデルも該当します。
ストック型のビジネスもでるとは仕組みやインフラを作ることで継続的に収益は発生するビジネスモデルです。
ストック型ビジネスでは契約をかつ積み上げ方式で収益が拡大していくビジネスモデルのことを指します。
例えば、毎月データ使用量が入ってくる携帯事業、電気・ガス・水道等のインフラ事業、サーバー事業等が挙げられます。
ディフェンシブ銘柄が存在する業種を紐解く
以下は日経新聞が上場企業について業種毎に分類したものです。
赤枠で囲った以下の業種に多くディフェンシブ銘柄が存在する傾向にあります。
デフェンシブ業種 | 代表的銘柄 |
鉄道・バス | <9022> JR東海 <9020> JR東日本 <9033> 広島電鉄 |
通信 | <9344> NTTドコモ <9433> KDDI <9434>ソフトバンク |
電力 | <9501> 東京電力 <9503> 関西電力 <9502> 中部電力 |
ガス | <9531> 東京ガス <9532> 大阪ガス |
食品 | <2801> キッコーマン <2809> キューピー |
医薬品 | <4519> 中外製薬 <4502> 武田薬品工業 |
例えば、鉄道であれば通勤通学は景気に関係なく発生します。
通信も景気が悪くなったから携帯持つのを辞めようとはなりません。
電力やガスも景気が悪いからといって解約することは不可能です。
一方のシクリカル銘柄は景気に敏感に反応する、鉄鋼、自動車、化学品、紙パルプ等の業種に多く存在しています。
景気が悪い時に車を買う人は少ないですし、結果的に原材料の業界にも影響がでますからね。
不安ならβ値(ベータ値)でディフェンシブ銘柄を見分けよう!
果たして、この銘柄はディフェンシブ銘柄か?
と疑問に思った時に判断するために有益な指標がβ値です。
β値とは?
β値とはある銘柄が過去の値動きから考えて指数に対してどれだけ敏感に反応するかを示す指標です。
個別証券(あるいはポートフォリオ)の収益が証券市場全体の動きに対してどの程度敏感に反応して変動するかを示す数値で、現代ポートフォリオ理論でよく用いられる。
β=個別証券のリターン÷市場全体のリターン
参照:野村證券
β値が示す値によって表す事象について例を用いて解説していきます。
①:銘柄AがTOPIXに対してβ値が1.3
→TOPIXが10%上昇したらAは10%(=10%×1.3)上昇
②:銘柄AがTOPIXに対してβ値が1
→TOPIXが10%上昇したらAも10%(=10%×1.0)上昇
③:銘柄AがTOPIXに対してβ値が0.6
→TOPIXが10%上昇したらAは6%(=10%×0.6)上昇
④:銘柄AがTOPIXに対してβ値が▲0.6
→TOPIXが10%上昇したらAは▲6%(=10%×▲0.6)
⑤:銘柄AがTOPIXに対してβ値が▲1.3
→TOPIXが10%上昇したらAは▲13%(=10%×▲1.3)
ディフェンシブ銘柄のβ値の特徴
ディフェンシブ銘柄では景気がいい時には反応が鈍いですが、逆に株価が下落しても影響が少ないという特徴があります。
そのためβ値は広い意味では以下の範囲である銘柄がディフェンシブ銘柄の特徴を備えているといえるでしょう。
ディフェンシブ銘柄:-1 < β < 1
もちろん、更に厳しい基準を採用してディフェンシブ銘柄を定義するのもよいでしょう。
例えば市況との連動性が低い銘柄をディフェンシブ銘柄として組み入れたい場合は以下の通りに定義することもできます。
厳格版ディフェンシブ銘柄:-0.5 < β < 0.5
各人の趣向に合わせてβ値を確認するのがよいでしょう。
楽天証券でのβ値の確認方法
楽天証券は当サイトでも最もおすすめしているネット証券です。
全ての取引に対応しておりますし、楽天ポイントを活用してお得に投信を購入することもできます。
まだ楽天証券の口座を開設されていないという方は楽天証券魅力について纏めていますので参考にしてみてください。
楽天証券で口座を開設してから各銘柄のβ値を確認する方法をJR東海を例にお伝えします。
トップページの検索窓で銘柄名を入力して各銘柄ページに繊維した後に、指標ボタンをクリックします。
遷移した画面でしたにスクロールするとTOPIXと日経平均に対するβ値を確認することができます。
ディフェンシブ銘柄のメリット
ディフェンシブ銘柄のメリットについて詳しく掘り下げていきたいと思います。
株式市場軟調時の下落体制の強さ
ディフェンシブ銘柄の最大のメリットは市場に連動しない下落体制の強さです。
では、まず先ほどの代表銘柄と日経平均の動きを市場全体が軟調に推移した2018年を例に比較していきましょう。
以下は2018年10月から2019年4月末までの、日経平均株価とデイフェンシブ銘柄の値動きの比較です。
9022:JR東海
9502:中部電力
9531:東京ガス
4519:中外製薬
N225 : 日経平均
高くはないが安定した配当金
二つ目は安定した配当金が見込めることです。
企業は基本的には事業や投資によって稼いだ「お金」の中から株主還元として実施されます。
順調にキャッシュを稼いだとしても、成長企業では配当金を出さない企業が多く存在します。
成長著しい企業では既存事業の拡張や新たな事業へ投資をして利益を伸ばす方が優先される傾向にあります。
結果的に株価の上昇で株主に還元できるからです。
一方、ディフェンシブ銘柄は鉄道や電気、ガスといった新たな投資が必要ではない企業が多くなっています。
そのため、株主還元として配当を実施する傾向にあります。
デフェンシブ銘柄は核となる事業から安定的にキャッシュを創出することができます。
そのため、安定した配当金を受け取ることが出来るというメリットがあります。
以前米国株で50年以上連続配当金をだしているP&Gも日用必需品を売っているので配当貴族のディフェンシブ銘柄です。
では、ディフェンシブ銘柄のデメリットについて触れていきましょう。
ディフェンシブ銘柄のデメリット
ディフェンシブ銘柄はメリットだけでなくデメリットもあります。
市場平均が好調な時に相対的に上昇率が低い
景気鈍感株は市場下落局面では下落耐性が確かに強いです。
しかし、反対に市場好調又は回復局面では市場平均に対して出遅れる傾向にあることも同時に意味しているのです。
- 9022:JR東海
- 9502:中部電力
- 9531:東京ガス
- 4519:中外製薬
- N225 : 日経平均
一方、シクリカル銘柄は市場下落からの回復局面では力強い動きをしていますね。
- 7203:トヨタ自動車
- 7267:ホンダ
- 6701:NEC
- 4183:三井化学
- N225 : 日経平均
株価が好調になる見通しを持っているのであれば、俄然シクリカル銘柄を保有した方が高い成績を得ることができるのです。
配当利回りが高いわけではない
先ほどメリットの項目で配当金が安定しているとお伝えしました。
しかし、ディフェンシブ銘柄は配当利回りが高いかといわれると特段高いわけではありません。
以下は先ほどディフェンシブ銘柄として取り上げた代表的銘柄の配当利回りです。
デフェンシブ業種 | 代表的銘柄と配当利回り(2019年4月末) |
鉄道・バス | JR東海:0.62% JR東日本:1.57% 広島電鉄:0.72% |
通信 | NTTドコモ:4.56% KDDI:3.93% |
電力 | 関西電力:3.71% 中部電:2.78% |
ガス | 東京ガス:1.94% 大阪ガス:2.43% |
食品 | キッコーマン:0.81% キューピー:1.75% |
医薬品 | 中外製薬:1.36% 武田薬品工業 :4.37% |
東証一部の配当利回りランキングでは上位40位まで利回り5%を上回っています。
ディフェンシブ銘柄の配当利回りは高いとは言えないことがご理解頂けるかと思います。
それでは、投資妙味のあるおすすめディフェンシブ銘柄についてお伝えしていきたいと思います。
ディフェンシブ銘柄代表例『東京電力』
東京電力は福島の原発事故以降も収益力は落ちていませんが、株価は急落しており魅力的な水準になっています。
東京電力について深く分析していきたいと思います。
東京電力の売上と利益推移
東京電力の過去10年分の売上と営業利益と当期純利益の推移です。
当期純利益は2011年の東日本大震災から2013年までは賠償金等でマイナスでしたが、その後はプラス圏に戻ってきています。
売上高を見ていただければわかるのですが、東京電力が大事故を起こしたとしても電気は生活に必要不可欠なので10年間横ばいを保っています。
さらに、日本は人口減少国家ですが東京に限定すると2025年程度まで人口は増加しその後の減少も緩やかになっています。
さらに今後インフレが発生したとしても、電気量を値上げすることで収益を伸ばすことができます。
インフレにも強いというメリットもあります。
危機的な状況を脱したバランスシート
今後、東京電力が賠償関係で倒産することがあり得ると思ってしまいます。
以下は2019年3月末時点での最新の東京電力のバランスシートです。
(引用:東京電力決算資料より編集部作成)
通常の企業からすると約3兆円の純資産に対して約10兆円の負債となっています。
しかし、ドン底期だった2012年3月末のバランスシートが1.6兆円の純資産に対して13.6兆円の負債であったことから考えると大きな改善が見られます。
(引用:東京電力2012年3月期決算資料より編集部作成)
さらに東京電力は従業員数も東日本大震災発生当時の38,000人から31,000人に減らしており費用も削減し企業努力を重ねています。
自己資本比率は東日本大震災はおろか、リーマンショックの前の水準よりも高くなっています。
異常に割安な株価水準
PLもBSも以前の水準に戻ってきていますが、株価の方は低迷から抜け出せておりません。
株価は下値を切り上げてはいるものの、依然として以前の5分の1程度に低迷しています。
EPSが以前の水準まで戻ってきているにも関わらず、株価は5分の1なのでPERは4.83倍とバーゲンセール状態になっています。
現状で東京電力に投資をすれば少なくとも2倍以上の値上がりを将来的に期待することは可能となるでしょう。
ストック型ビジネスで有望なディフェンシブ銘柄「シルバーライフ」もおすすめ
次にストック型のビジネスを行なっているディフェンシブ銘柄のシルバーライフを紹介します。
シルバーライフのビジネスの概要
シルバーライフは高齢者向けの配給サービスを行なっている会社です。
フランチャイズ方式による高齢者向けの配色店舗である「まごころ弁当」「配食のふれ愛」のチェーン展開を行なっています。
また老人ホーム等の高齢者施設にも直接配給をおこなっています。
直接卸している高齢者施設は2019年7月時点で5429施設と順調に増加しています。
またFC加盟店も以下の通り増加の一途を辿っています。
フランチャイズも契約施設も一度契約を取れば定常的な収益が見込めます。
更に、両者ともに順調に契約数が増加していますので今後も利益のコツコツとした積み上げが期待できるでしょう。
業績と株価推移
シルバーライフの業績は以下の通り順調に売上高と利益を積み上げていっています。
まさにストックビジネス型の代表的な業績推移といえるでしょう。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
2015/07 | 3,531 | 275 | 319 | 209 |
2016/07 | 4,151 | 370 | 434 | 301 |
2017/07 | 5,245 | 475 | 539 | 377 |
2018/07 | 6,547 | 599 | 677 | 431 |
2019/07 | 7,800 | 885 | 1,002 | 635 |
2020/07予 | 8,830 | 990 | 1,070 | 670 |
更に参入している事業領域は今後更に市場規模が拡大することが確実な高齢者ビジネスです。
今後、市場規模と経営努力による積み上げで継続的に利益が積み上がっていくことが見込まれます。
シルバーライフの株価の推移は以下となっております。
比較的上場後間もない銘柄であり今後大きく化ける可能性がある銘柄としても期待できます。
まとめ
ディフェンシブ銘柄(=景気鈍感株)は安定的な需要のある内需株やインフラ株で景気の変動を受けづらいという特徴があります。
一方で株式市場が回復・好調局面では上昇の恩恵を受けにくいというデメリットがあります。
配当金に関しては安定した配当金は見込めるものの、決して高い配当利回りというわけではない点も理解しておきましょう。
現時点でディフェンシブ銘柄としておすすめなのは東京電力とシルバーライフです。
東京電力は利益・財務的な安全性も東日本大震災発生前の水準に戻っています。
しかし、株価は以前の約5分の1の水準でPERは4倍台というバーゲンセール状態で仕込むことができます。
またシルバーライフは高齢者に向けた配食サービスを実施しているストック型の企業です。
シルバーライフは順調に契約数を伸ばしており参入領域から考えても今後継続的に成長していくことが見込まれています。
実際2018年の市場下落局面でも上昇しておりますので、ディフェンシブ銘柄で大きな利益を狙いたい方にはイチオシの銘柄となっています。
以上、ディフェンシブ銘柄(景気鈍感株)とは?投資するメリット・デメリットから「おすすめ銘柄」まで徹底解説。…の話題でした。