企業の株を購入するに際しては、しっかりと分析してから保有する銘柄を選ぶ必要があります。
今まで割安さを測る「PER・PBR」、効率的に利益をあげているかを測る「ROE・ROA」については過去に説明をしました。
株式投資の初心者の方の中には普段の買い物は少しでも良いものを安く買うことに必死な方が多くいらっしゃいます。
しかし、株になるとなんとなく選んでいるという方が多いのが現実です。
当サイトでは株式投資を行うために必要な知識を網羅的にお伝えしています
今回お伝えするのは「年平均成長率(CAGR)」です。
「CAGR」は聞きなれない概念ではありますが、理解することで様々な点に応用ができます。
今回はCAGRの意味から求め方の計算方法までわかりやすくお伝えしていきます。
目次
Contents
CAGR(年平均成長率)の意味とは?
CAGRは略称でCompound Annual Growth Rateが正式名称です。
Compound(複利計算) Annual(年率) Growth Rate(成長率)です。
「複利で運用した場合の年率リターン」ということになります。
以下は2015年が100で2019年に200まで上昇した場合の各年度の資産の増加具合と前年比増加率です。
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
売上高 | 100 | 120 | 120 | 180 | 200 |
前年比 増加率 | – | 20.00% | 0.00% | 50.00% | 11.11% |
この場合のCAGRについて、2015年から2019年で2倍つまり+100%なので単純に【100% ÷ 4=25%】。
または、【(20%+0%+50%+11.11%) ÷ 4 =20.28%】と考えられた方もいらっしゃると思います。
秀次郎のように考えた方が多いと思いますが、上記の場合のCAGRは18.92%となります(計算方法は後述)。
2015年の基準価格100をCAGRの年率18.92%で運用した場合、2019年に200に達します。
各年度にばらつきはあるけども、平均すると年率で何%成長しているのかを知ることが出来るのです。
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
売上高 | 100 | 120 | 120 | 180 | 200 |
前年比 増加率 | – | 20.00% | 0.00% | 50.00% | 11.11% |
CAGR(18.92%) で増加 | 100 | 118.92 | 141.42 | 168.17 | 200 |
CAGRで年率18.92%で「複利運用」した場合の2019年には200と同じ結果になるのです。
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CAGR(年平均成長率)の計算方法とは?エクセルを用いて簡単に算出しよう!
それではCAGR(年平均成長率)の計算方法について、若干難しいですが以下の算出式は以下の通りです。
つまり先ほどの例であるCAGRは以下のように算出されます。
上記の計算方法はCAGRだけでなく、全ての複利計算で用いることができます。
実際に計算するとなると手計算や電卓では厳しいのですが、エクセルでは以下のような計算式を入力することで簡単に算出することができます。
上記のデータのうち必要なのは2015年度の基準価格100(B2)と最終年度2019年度の基準価格200(F2)と増加するのに要した年数のみです。
CAGRを算出したいC4セルに『 = (F2/B2)^(1/(5-1)) – 1 』と入力することで算出が可能になります。
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〜コラム〜CAGRの計算式が出来上がるまで
先ほどのCAGRの式は「正直難しいな」と思われた方が多いのではないでしょうか。
なぜ上記の式になるかを説明していきます。
逆に売上高を例にCAGRを使った数値の逆算から考えていきます。
1年目の売上=1年目売上× (1+CAGR)^(1-1)
2年目の売上=1年目売上× (1+CAGR)^(2-1)
3年目の売上=1年目売上× (1+CAGR)^(3-1)
・
・
N年目の売上=1年目売上× (1+CAGR)^(N-1)
ここで両辺を1年目売上高で割り返すと
N年目売上/1年目売上=(1+CAGR)^(N-1)
次に両辺を1/(N-1)乗を行います
(N年目売上/1年目売上)^(1/N-1)=1+CAGR
両辺から1を引くとCAGRの式が算出されます。
(N年目売上/1年目売上)^(1/N-1)-1=CAGR
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CAGRを用いれば今後の業績を予測することができる
ここまでCAGRの意味と計算方法についてお伝えしてきました。
前提として業績が安定しない企業の業績を予測することは困難です。
しかし、以下のように順調に成長している企業では今後の業績も見通しやすくなります。
特に成長著しいベンチャー企業などは、毎年収益を拡大させて成長している企業が多く存在しています。
大きな利益を狙いたいのであれば、やはり本業が右肩上がりの企業に投資を行うべきです。
上記ような企業では過去の業績推移からCAGRを計算して将来の業績を予想することができます。
CAGRは売上に対してだけでなく、各種利益水準についても使用することができます。
例えば売上を例に説明しています。
現在の売上高が100の場合、過去平均のCAGRが5%、10%、15%、20%の場合、以下のように売上高は拡大していきます。
CAGR 5% | CAGR 10% | CAGR 15% | CAGR 20% | |
0年目 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
1年目 | 105.0 | 110.0 | 115.0 | 120.0 |
2年目 | 110.3 | 121.0 | 132.3 | 144.0 |
3年目 | 115.8 | 133.1 | 152.1 | 172.8 |
4年目 | 121.6 | 146.4 | 174.9 | 207.4 |
5年目 | 127.6 | 161.1 | 201.1 | 248.8 |
6年目 | 134.0 | 177.2 | 231.3 | 298.6 |
7年目 | 140.7 | 194.9 | 266.0 | 358.3 |
8年目 | 147.7 | 214.4 | 305.9 | 430.0 |
9年目 | 155.1 | 235.8 | 351.8 | 516.0 |
10年目 | 162.9 | 259.4 | 404.6 | 619.2 |
CAGRは複利ですので5%違うだけでも5年後の段階でも大きな差異が生じているのがわかりますね。
成長力を見極めるためにはCAGRの高い銘柄を確認する必要があるのです。
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CAGRは何年分のデータを使うべき?
CAGRを用いた業績予測の手法については投資の神様「ウォーレン・バフェット」も活用しています。
彼と10年以上一緒に働いた「メアリー・バフェット」氏の著書、「バフェットの銘柄選択術」でも紹介されています。
同著の中でバフェットは過去5年間の平均成長率と、過去10年間の平均成長率の両方に目を向けるべきと指摘しています。
過去5年間は直近の経営陣の経営手腕を確認するために有効です。
また、過去10年のデータは会社の本質的な力を知ることができるためです。
1つの期間だけではなく、複数の期間を切り取って、複合的な視点で分析を行う必要があるのです。
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CAGRを活用して将来の株価を予想することも可能
今までCAGRについては売上高を例にして説明してきました。
しかし、CAGRは売上高だけでなく、あらゆるものに活用することができます。
活用例について紹介していきたいと思います。
ダイレクトに株価に関係するのは、純利益を発行済株式数で除したEPSについても年平均成長率を出すことができます。
EPSは「PER」と掛け合わせることでダイレクトにPERを算出することができます。
株価 = EPS × PER
例えば、現在PERが20倍でEPSが100円の企業が存在するとすると現在の株価は2000円になります。
一方、EPSは毎年順調に右肩上がりに増加しており、過去10年のCAGR(年平均成長率)20%だとします。
PERを現在の20倍で変わらないと仮定すると、今後5年間で株価が以下のように上昇することが想定できます。
EPS(CAGR20%) | PER | 株価 | |
現在 | 100.0 | 20 | 2000.00 |
1年後 | 120.0 | 20 | 2400.00 |
2年後 | 144.0 | 20 | 2880.00 |
3年後 | 172.8 | 20 | 3456.00 |
4年後 | 207.4 | 20 | 4147.20 |
5年後 | 248.8 | 20 | 4976.64 |
今回のCAGR等の指標については、正しい活用を行えば様々な活用方法があります。
「お金の学校」である「グローバルファイナンシャルスクール」では投資のプロの視点で様々な指標から、銘柄分析手法、銘柄選択術までわかりやすく教えてくれますので、参考までに触れておきます。
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楽天証券のスーパースクリーナーを利用しよう!
CAGRをデータとして提供しているネット証券は存在していないので自分で算出する必要がありますが、
銘柄をスクリーニングするために便利な証券会社として楽天証券があります。
楽天証券のスーパースクリーナーへの推移ですが楽天証券にログインして、『国内株式』→ 『注文』→ 『スパースクリーナー』の順で推移します。
スーパースクリーナの画面で下にスクロールして詳細検索項目ボタンを押すと、以下の画面のようになります。
詳細検索項目ではPER・PBRやROE・ROAだけに止まらず、過去5年増収比率やCAGRや過去3年平均売上高成長率なども確認することができます。
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まとめ
CARG(Compound Annual Growth Rate)は増加率の幾何平均を求めたものです。
CAGRを求めることで該当期間の複利計算したものです。
計算は多少複雑ではあるものの、エクセルを使って簡単に計算することができます。
CAGRを用いることで今後の株価を予測することも可能となり確実に押さえておきたい指標といえるでしょう。
CARGを提供しているネット証券は存在しません。
しかし、銘柄を指標でソートするのには楽天証券のスーパースクリーナーが便利で、約80種類の指標を分析でき、
CAGRに近い指標である過去3年平均売上高成長率も確認することができます。
以上、年平均成長率(CAGR)の意味は?使い方から計算方法をわかりやすく解説する。…でした。