今までETFとして米国株に投資をするVTIやVOO、VIG等を紹介してきました。
しかし、株式市場は米国だけではありません。
本日は全世界の株式に一括で投資をすることができるETFであるVTについて取り上げたいと思います。
本日は全世界の株式に投資ができるVTについて以下の点をお伝えしていきたいと思います。
【今回お伝えすること】
- VTはどんなETFなのか?国別構成はどうなっているのか?
- VTの過去成績とは?
- VTとVTIはどちらが魅力的なのか?
「VT」(=バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)とは?
VTはご存知の通り全世界への株式に投資できるETFですがどのような内容なのか詳しく見ていきましょう。
連動するインデックスはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックス
ETFは基本的には連動目標となるインデックスに連動することを目標として組成されています。
例えばS&P500指数に連動するETFであればバンガード社のVOOが有名ですね。
VTが連動を目指すインデックスは「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」になります。
同指数の説明原文は以下となります。
The FTSE Global All Cap Index is a market-capitalisation weighted index representing the performance of the large, mid and small cap stocks globally. The index aggregate of around 8,000 stocks cover Developed and Emerging Markets and is suitable as the basis for investment products, such as funds, derivatives and exchange-tradedfunds.
参照:FT
market-capitalisation weighted index
時価総額加重平均指数という意味で時価総額が高い銘柄ほど構成比率が高くなる指数のことです。
TOPIXやS&P500指数が時価総額加重平均指数の代表例ですね。
large, mid and small cap stocks globally
全世界の大型株だけでなく中型株や小型株についても組み入れる指数としています。
例えばS&P500指数は米国の大型株のみで構成されている指数となっていますが、大型株に限らず組み入れているのです。
8,000 stocks cover Developed and Emerging Markets
先進国と新興国の8000銘柄で構成されている指数となっています。
米国株全体に投資できるVTIが4000銘柄でしたので、VTIの倍の銘柄数で構成されていることになります。
国別の比率:米国が60%以上の比率を占めて圧倒的
VTの国別構成比率 | |
United States | 57.60% |
Japan | 7.70% |
United Kingdom | 4.20% |
China | 4.10% |
Switzerland | 2.70% |
Canada | 2.50% |
France | 2.50% |
Germany | 2.40% |
Australia | 2.00% |
Taiwan | 1.60% |
Korea | 1.40% |
Netherlands | 1.10% |
India | 1.00% |
Hong Kong | 0.90% |
Sweden | 0.90% |
Italy | 0.70% |
Spain | 0.70% |
Brazil | 0.60% |
Denmark | 0.60% |
Finland | 0.40% |
Russia | 0.40% |
South Africa | 0.40% |
Belgium | 0.30% |
Malaysia | 0.30% |
Saudi Arabia | 0.30% |
Singapore | 0.30% |
Thailand | 0.30% |
Indonesia | 0.20% |
Israel | 0.20% |
Mexico | 0.20% |
Norway | 0.20% |
Other | 0.20% |
Austria | 0.10% |
Chile | 0.10% |
Ireland | 0.10% |
Kuwait | 0.10% |
New Zealand | 0.10% |
Philippines | 0.10% |
Poland | 0.10% |
Portugal | 0.10% |
Qatar | 0.10% |
Turkey | 0.10% |
United Arab Emirates | 0.10% |
先進国と新興国の比率
以下は地域別の構成比率です。
地域別比率 | |
北米 | 60.1% |
日本 | 7.70% |
豪州 | 2.10% |
欧州 | 17.10% |
韓国・台湾・香港 | 3.90% |
BRICS | 6.50% |
ASEAN | 1.20% |
その他新興国 | 1.40% |
VTの今までのリターンとは?
肝心なのはリターンだと思います。当項目ではVTの過去リターンと配当金についてみていきたいと思います。
VTの年率リターンは9%程度
以下がVT単体でのリターンです。
From 2009/01 | 年率リターン | リスク(=標準偏差) | 年間最大リターン | 年間最大損失 |
VT | 9.58% | 16.1% | 32.65% | ▲9.76% |
あくまで上記の図は配当金を税金を差し引かれる前に再投資した場合のリターンです。
米国株の配当金については原則、現地で10%源泉徴収されたあとに日本で20.315%課税される二重課税の影響を被ります。
そのため、配当利回りも重要になってくるのです。
VTの分配金推移
以下がVTの四半期毎の配当金の推移です。
わかりにくいとおもいますので、年間ベースでの配当金の推移を表にしたものが以下となります。
年間分配金 | |
2011年 | $0.92 |
2012年 | $1.02 |
2013年 | $1.22 |
2014年 | $1.46 |
2015年 | $1.41 |
2016年 | $1.46 |
2017年 | $1.56 |
2018年 | $1.66 |
2019年 | $1.88 |
ただ、VTの年間配当利回りは2%未満ではあるので配当金拠出による税的な影響は0.6%未満となります。
年率リターンに0.6%程度の下押し圧力がかかるものの9%近い高いリターンを叩き出していますね。
VTとVTIとの比較
では米国全体に投資できることで人気のVTIとの比較をおこなっていきたいと思います。
VTとVTIの過去リターンの比較
まずは過去のリターンの比較となっています。
赤:VTI
青:VT
From 2009/01 | 年率リターン | リスク(=標準偏差) | 年間最大リターン | 年間最大損失 |
VT | 9.58% | 16.10% | 32.65% | ▲9.76% |
VTI | 13.60% | 15.17% | 33.45% | ▲5.62% |
PER・PBR・ROE・EPS成長率等の指標関連の比較
以下は各種ファンダメンタル指標関連の比較です。
2020年5末時点 | VT | VTI |
PER | 18.2 | 21.9 |
PBR | 2.0 | 3.0 |
ROE | 15.20% | 17.40% |
5年EPS成長率 | 12.20% | 14.0% |
構成銘柄数 | 8401 | 3493 |
VTとVTIのセクター別の比較
以下はVTとVTIのセクター別の比較です。
ご覧いただくとわかる通り、VTIのテクノロジー比率が明らかにVTを上回っていることがわかりますね。
VT | VTI | |
テクノロジー | 19.40% | 25.20% |
金融 | 18.40% | 16.60% |
資本財 | 13.00% | 12.00% |
ヘルスケア | 12.60% | 14.60% |
消費サービス | 12.30% | 14% |
消費財 | 10.70% | 7.90% |
素材 | 4.20% | 2.00% |
石油ガス | 3.70% | 2.70% |
公益 | 3.30% | 3.20% |
電気通信 | 2.50% | 1.80% |
VTよりもVTIが魅力的と考える理由
米国株は過去200年の実績がある
以下はジェレミーシーゲル教授の「株式投資」の中でしめされた米国株の長期リターンです。
米国の株式のリターンは一時的なブレはあるものの、数十年という単位で見るとリターンは安定しているのです。
シーゲル教授も指摘していますが、産業構造の変化や戦争を幾度も乗り越えてリターンの平均回帰性は素晴らしい実績です。
最も歴史のある株式市場で実績を出し続けている米国株は信頼に値すると考えています。
覇権国としてプラットフォームを握っている
確かに経済の成長率は新興国の方が高いかもしれませんが、米国は先進国で最も今後も成長が見込まれる国です。
さらに、現在は経済のグローバル化によって世界経済の連関性が高まっています。
世界経済が成長すれば覇権国でありプラットフォームを有している米国企業の収益は米国経済の成長以上に進展します。
アップルが提供しているiPhoneは既に世界中で使用されています。
アマゾンのサービスは日本にも浸透し、今後世界にも順次拡大していきます。
アマゾンやマイクロソフト、グーグルが提供するクラウドサービスは今後市場規模拡大とともに世界のクラウド市場を席巻します。
FACEBOOKは世界最大のSNSとして広がり、SNS事業を起点としていくらでも収益を拡大させることができます。
GAFAMだけでなく、NetflixやZoomなど世界中で使用されるサービスを提供する企業が続々と現れています。
日本株と欧州株に期待が持てない
もう一度、VTの地域別のポートフォリオを見てみましょう。
欧州株と日本株だけで24.8%と約4分の1を占めています。
以下はVTI(米国株)とVGK(欧州株)とIJIAX(日本株)の推移です。
まず、米国は人口増加国ですが日本と欧州は人口減少国家ですので内需が成長しません。
つまり経済成長率がそもそも米国に対して低いのです。結果として米国の成長に対して日本と欧州主要国の成長率は劣後しています。
更にイノベーションを起こす基盤が少なく、過去20年でも米国のGAFAMのような企業は芽吹きませんでした。
筆者も日本と欧州で働いた経験がありますが、熱気というものも感じませんし飛躍する気配がありません。
先進国においては成長する覇権国である米国にベットした方が良いと考えているためです。
欧州は統一の中央銀行であるECBが通貨ユーロの発行権を保有していますが、各国政府に通貨発行権はありません。
そのため、経済が沈み込んでいる時に経済を不要させるために財政政策を自由に行うことができないのです。
また、過度なユーロ建の借金を行うとギリシャのように返済不能となりデフォルトとなってしまいます。
そのため、欧州はPIIGSを始めた諸国の財政問題が度々燻りつづけます。
通貨統合したことによる弊害に今後苛むことになると考えており、欧州株へ投資する気には到底なれないのです。
期待の新興国も中国が占める比率が高い
VTに投資する方の中には、新興国の成長も取り込みたいと考えている方も多いと思います。
しかし、先ほどお伝えしたように韓国・台湾・香港を先進国に含める場合、新興国比率は9.1%、含めない場合は13%となります。
VTの国別構成比率 | |
China | 4.10% |
Korea | 1.40% |
India | 1.00% |
Hong Kong | 0.90% |
Brazil | 0.60% |
Russia | 0.40% |
South Africa | 0.40% |
上記の国の中でインドは今後成長が見込まれる超大国となり得る国ですが、その他の国は残念ながら魅力的な国ではありません。
中国は人口ボーナスも終了し、過剰債務、過剰生産性に苦しんでおりかつての急激な成長は見込みにくくなってきています。
ブラジルや南アフリカは政治的な混迷、ロシアは人口増加終了にくらべ原油に依存した不安定な経済構造となっています。
新興国株に賭けたいのであれば、インドなどの有望な新興国の個別株や連動率は低いですがETF購入を考えた方がよいでしょう。
まとめ
■:VTとは?
- 全世界の大型株〜小型株の約8000銘柄を時価総額順に組み入れている指数に連動を目指すETF
- 全体の約60%が米国と圧倒的
- 先進国比率は約90%で新興国比率は僅か10%
- 2009年1月からのリターンは年率約9%で配当利回りは約2%
■:VTとVTIの比較
- 過去リターンはVTIが圧倒的にアウトパフォーム
- VTIの方が割高だがEPS成長率やROEも高い
- テクノロジー比率がVTIの方が明確に高い
■:筆者がVTIの方が魅力と考える理由
- 米国株の長期リターンは実質で7%近辺を200年間維持(名目だと9%-10%)
- 経済のグローバル化でプラットフォームを提供している米国企業の成長力は今後も高いと考えている
- 米国以外の25%を占める日本株や欧州株に対して高い期待も持てない。
- 新興国比率はそもそも少なく大半は潜在成長力が低い銘柄で構成されている。