株式投資をしている方は「○○指数」といったさまざまな株価指数の名前を多く目にすることが多いかと思います。
東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価、米国ではダウ平均指数やS&P500指数やナスダック指数が有名ですね。
このコンテンツで紹介していくのは「東証マザーズ指数」という株価指数です。
東証マザーズ指数とは、日本の日本証券取引所の1つである東証マザーズ市場に上場している銘柄を対象としているものです。
東証マザーズ指数の概要や算出方法、構成銘柄についても徹底解説していきます。
目次
Contents
東証マザーズ指数とは?
新聞やニュースなどで「マザーズ続伸」、「マザーズ反落」といった言葉を目にしたことはありませんか?
このときの「マザーズ」は、本記事で紹介していく「東証マザーズ指数」のことを指しています。
「東証マザーズ指数」とは東京証券取引所が運営しているマザーズ市場の全銘柄を対象とする株価指数のことです。
また東証マザーズ指数は時価総額加重型で算出されており、以下の株価指数も同様に時価総額加重型が採用されています。
マザーズ市場に上場している銘柄の時価総額(=株価×発行済株式数)の合計額を、定められた基準日時点での時価総額の合計額で割って算出する方法です。
このような方法で算出することで、基準日から時価総額がどれぐらい増減したのかが把握しやすくなっています。
マザーズ市場に上場している企業価値の変動がたいへん分かりやすく見えるようになるのです。
ちなみに東証マザーズ指数は、2020年7月6日時点の終値が990.03です。
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東証マザーズ指数の特徴
東証マザーズ株価指数は、2003年9月12日時点での時価総額を1000として推移を表しています。
2003年9月12日以前の数値はマザーズ市場が設立されてからの遡求算出値となります。
東証マザーズ指数の過去の値動きと特徴
以下は東証マザーズ株価指数の1999年11月からの推移です。
ライブドアショックが起こった2006年に最高値2,799.06から一気に269.41まで90%も下落しました。
そこから現在の約900円の水準まで徐々に回復してきています。
日本取引所グループによる2013年-2015年の統計でも価格の日次変動率が日経平均より高くなっていることが読み取れます。
ショックに弱いマザーズ指数
以下は東証マザーズ指数とTOPIX並びに日経平均株価の値動きとともに比較したものです。
やはりライブドアショックからリーマンショックの株価の下落が深刻すぎて、日経平均やTOPIXを大幅にアンダーパフォームしています。
もう少し短いアベノミクスからの期間で確認してみたいと思います。
アベノミクス開始からはTOPIXや日経平均よりも勢い良く上昇し、2017年末までは堅調に推移しました。
しかし2018年は市場が軟調に推移しマザーズ指数は40%近くも下落してしまい結果同様の成績になってしまっています。
上記二つの比較から東証マザーズ指数は好景気の時は勢いよく上昇しますが、ショックに対する耐性は低いといえるでしょう。
資本が厚くない新興企業では景気の悪化は死活問題なのです。
業種別構成比率は情報・通信業が多い
マザーズ指数は成長銘柄による指数となっています。
そのため、構成銘柄はIT系を意味する情報通信業の割合が大きくなっています。
マザーズ指数の構成上位銘柄
次に構成上位銘柄について確認していきましょう。
以下は現在2019年9月末時点での構成上位銘柄Top10です。
コード | 銘柄名 | 業種 | 時価総額(百万円) | 時価総額シェア |
4565 | そーせいグループ | 医薬品 | 160,915 | 7.4% |
4385 | メルカリ | 情報・通信業 | 159,490 | 7.4% |
4592 | サンバイオ | 医薬品 | 116,256 | 5.4% |
2121 | ミクシィ | サービス業 | 97,929 | 4.5% |
2160 | ジーエヌアイグループ | 医薬品 | 75,693 | 3.5% |
4563 | アンジェス | 医薬品 | 71,627 | 3.3% |
7779 | CYBERDYNE | 精密機器 | 66,050 | 3.0% |
4443 | Sansan | 情報・通信業 | 49,689 | 2.3% |
3994 | マネーフォワード | 情報・通信業 | 47,806 | 2.2% |
3923 | ラクス | 情報・通信業 | 44,851 | 2.1% |
上位10銘柄で41.1%を占めることを考えると上記銘柄の影響力の高さは目を見張るものがありますね。
そして、やはり組み入れ銘柄は情報通信業が多くなっています。
それにしても、2019年6月に上場した名刺管理のSansanが既に第8位になっているのは驚きですね。
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そもそもマザーズってどんな市場?
東証マザーズ指数は、マザーズ市場に上場している全銘柄が対象になっています。
マザーズ市場は先ほどもお話したように東京証券取引所が運営している株式市場の1つです。
新しい産業やベンチャー企業を成長させるために、ベンチャー企業が株式市場を通して資金調達をする場として設立されました。
投資家側にとってもベンチャー企業という成長が目まぐるしい企業への投資機会を得ることができるというメリットがあります。
設立されたのは比較的最近で1999年11月です。
東京証券取引所が求めているマザーズ市場上場企業への条件は「高い成長可能性」があるということです。
また、上記で少し触れましたがベンチャー企業に対する資金調達を重視していることから、上場企業に対して企業規模や業種といった細かい制限は定められていません。
また、東京証券取引所が運営する株式市場のうち「東証一部」という市場があることはみなさんご存知かと思います。
東証一部は東京証券取引所が運営する株式市場のなかで1番ランクが高い株式市場です。
マザーズ市場は東証一部へのレベルアップを目指す市場としても位置付けられています。
そのため、マザーズ市場から東証一部にレベルアップして上場市場を変更した企業は多く存在します。
たとえば、2019年内の現時点(2019年10月19日)でマザーズ市場から東証一部に市場変更した企業は以下のとおりです。
- (株)マネジメントソリューションズ(7033)
- イーソル(株)
- (株)SHIFT
- アセンテック(株)
- ラクスル(株)
- (株)GameWith
- (株)システムサポート
- (株)串カツ田中ホールディングス
- (株)ファイバーゲート
- サインポスト(株)
- (株)エニグモ
- テモナ(株)
- アイティメディア(株)
- RPAホールディングス(株)
- ソウルドアウト(株)
- (株)エイトレッド
- ソネット・メディア・ネットワークス(株)
- エンカレッジ・テクノロジ(株)
- (株)MS&Consulting
このように、2019年の10カ月ほどで19社がマザーズ市場から東証一部に上場市場を変更しているのです。
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東証一部への市場変更要件
東証一部への市場変更要件として日本取引所グループが以下の基準を公表しています。
因みに流通株式を増加させるためにマザーズ企業は度々、立会外分売を実施しています。
(右スクロール可能→)
市場第一部に市場変更する場合 | |
---|---|
株主数(市場変更時見込み) | 2,200人以上 |
流通株式(市場変更時見込み) | 次のa及びbに適合すること
|
時価総額(市場変更時見込み) | 250億円以上 |
事業継続年数 | 市場変更申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること |
純資産の額(市場変更時見込み) | 連結純資産の額が10億円以上 (かつ、単体純資産の額が負でないこと) |
利益の額又は時価総額 (利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減) | 次のa又はbに適合すること
|
虚偽記載又は不適正意見等 |
|
株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託していること |
単元株式数(市場変更時見込み) | 100株 |
株式の譲渡制限 | 申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと |
指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること |
合併等の実施の見込み | 次のa及びbに該当するものでないこと
|
(引用:日本取引所グループ)
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マザーズ市場への上場から10年が経過した場合
マザーズ市場は成長企業ですので設立後一定期間が経過した銘柄には選択が迫られます。
マザーズ市場に上場した企業は上場後10年以内に東証一部に市場変更ができない場合もあります。
時価総額40億円未満の会社がマザーズ市場に上場を継続する場合には市場選択申請書のほか以下の書類の添付が必要となります。
当該会社作成の『高い成長可能性に関する説明書面』 及び 当該会社以外のエキスパート作成の『高い成長可能性に係る確認書』
またマザーズに上場継続した場合は5年毎に同様の市場選択を行わないといけません。
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マザーズ市場の上場廃止基準
マザーズ市場も一定の基準を満たさない銘柄については上場廃止となってしまいます。
因みに、先ほどの項目とも関連しますが上場10年未満であれば比較的優しい基準となっています。
しかし、10年経過した場合は東証二部と同じ基準で上場廃止が判断されることになります。
上記は主な概要ですが、詳しくは以下の基準となります。
流通株式というのは株式市場で取引することができる株式のことです。
10年を経過すると、東証二部と同じ基準なので厳しい基準となることが読み取れますね。
項目 | 上場廃止基準(マザーズ) 概要 |
株主数(注1) | 400人未満(上場後10年間は150人未満)(猶予期間1年) |
流通株式数(注2) | 2,000単位未満(上場後10年間は1,000単位未満)未満(猶予期間1年) |
流通株式時価総額(注3) | 5億円未満(上場後10年間は2.5億円未満)(猶予期間1年) |
流通株式比率(注4) | 5%未満(所定の書面を提出する場合を除く)(猶予期間なし) |
時価総額(注5) | 10億円未満(上場後10年間は5億円未満)である場合において、9か月(所定の書面を3か月以内に提出しない場合は3か月)以内に10億円以上(上場後10年間は5億円以上)とならないとき又は上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合において、3か月以内に当該数値以上とならないとき |
株価(注6) | 上場後3年を経過するまでに新規上場の際の公募の価格(注7)の1割未満となった場合において、9か月(事業の現状、今後の展開、事業計画の改善その他当 取引所が必要と認める事項を記載した書面を3か月以内に東京証券取引所に提出しない場合にあっては、3か月)以内に当該価格の1割以上に回復しないとき※2009年11月9日以降に新規上場したマザーズの上場会社に限る。 |
債務超過 | 債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき(原則として連結貸借対照表による)(上場後3年間に終了する事業年度において債務超過となった場合を除く) |
売上高(注8) | 最近1年間に終了する事業年度において売上高が1億円に満たないこととなった場合(利益の額(注9)が計上されている場合及び上場後5年間において売上高が1億円未満である場合を除く) |
売買高 | 最近1年間の月平均売買高が10単位未満又は3か月間売買不成立 |
有価証券報告書等の提出遅延 | 監査報告書又は四半期レビュー報告書を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合(有価証券報告書等の提出期限延長の承認を得た場合には、当該承認を得た期間の経過後8日目(休業日を除外する。)までに提出しない場合) |
虚偽記載又は不適正意見等 | a.有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき 又は b.監査報告書又は四半期レビュー報告書に「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき |
特設注意市場銘柄等 | a.特設注意市場銘柄の指定要件に該当するにもかかわらず、内部管理体制等について改善の見込みがないと当取引所が認める場合 又は b.特設注意市場銘柄に指定されている間に、内部管理体制等について改善の見込みがなくなったと当取引所が認める場合 又は c.特設注意市場銘柄に指定されたにもかかわらず、内部管理体制等について改善がなされなかったと当取引所が認める場合 |
上場契約違反等 | 上場会社が上場契約に関する重大な違反を行った場合、新規上場申請等に係る宣誓事項について重大な違反を行った場合又は上場契約の当事者でなくなることとなった場合 |
その他 | 銀行取引の停止、破産手続 ・再生手続・更生手続、事業活動の停止、不適当な合併等、支配株主との取引の健全性の毀損(第三者割当により支配株主が異動した場合)、株式事務代行機関への不委託、株式の譲渡制限、完全子会社化、指定振替機関における取扱いの対象外、株主の権利の不当な制限、全部取得、株式等売渡請求による取得、反社会的勢力の関与、その他(公益又は投資者保護) |
(引用:日本証券取引所)
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まとめ
このコンテンツでは、東証マザーズ指数の概要や算出方法、構成銘柄や上場ルールについて解説してきました。
東証マザーズ指数の対象となっている銘柄は、「高い成長性」に重きを置かれていることがわかりました。
東証マザーズ指数では好景気時には勢いよく上昇しますが、不況やショック発生時には大きく値を下げます。
特に、ライブドアショックからリーマンショックの流れで東証マザーズ指数は90%以上下落した歴史も持っています。
東証マザーズ指数に投資する場合は時期を見て投資をする必要があります。
また、マザーズ上場銘柄は10年後にマザーズ市場に残留するのか東証二部へ変更するのかを選択する必要があります。
企業として油断は禁物です。
マザーズ市場に上場している銘柄はベンチャー企業なので、株価の値動きが多く投資対象としてはかなりリスキーです。
一発で大きな利益を得たいという方は試す価値がありますが、こちらはしっかり株式銘柄の選択方法について学んでから、実践に移すことをおすすめします。
株式投資でハイリターンを得られる銘柄を選ぶための学習方法は多々ありますが、優良セミナーやスクールに通うことも選択肢に入ってくるでしょう。
学習方法についてはジャンルごとにまとめておりますので、こちらも参考にしてみてください。
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好機を逃さないようにしましょう。
以上、【東証マザーズ指数とは?】チャートや構成銘柄から特徴を紐解く!マザーズ市場の上場ルールについても解説。…でした。