投資の世界では「アノマリー」というものが存在します。
アノマリーは明確な根拠があるわけではないけども、経験則として当たる可能性が高い法則です。
このコンテンツでは、投資におけるアノマリーとはどのようなものか?
有名なアノマリー効果として知られている「割安株(低PBR)効果」と「小型株効果」を中心にお伝えしていきます。
目次
Contents
投資におけるアノマリーと具体的な例
まずは投資におけるアノマリーの意味について見ていきましょう。
そもそもアノマリーは英語でAnomalyと表記されWEBの辞書上では、『例外』『変則』『特異』という意味です。
〔基準や規則から逸脱した〕例外、変則
〔分類ができない〕特異、異様(引用:英辞郎)
投資におけるアノマリーは理論では説明がつかない証券価格の動きの変則性のことを『アノマリー』と呼んでいます。
つまりは、理由はわからないけど価格が決まった動きをするパターンが存在しているということですね。
日経平均株価のアノマリーとは
アノマリーが効きやすい指標と言われているのが日経平均株価です。
日経平均株価は東証一部に上場している225の銘柄をもとに算出しています。
一つの個別銘柄と違い、全体的な値動きが分かりやすいのが日経平均株価の特徴です。
日経平均株価のアノマリーには、どんな意味があるでしょうか。
それは、次のような時期によるアノマリーです。
- 1月は上昇
- 2月は下落
- 3月末は上昇
- 4月は下落
- 5月GW前は上昇、5月GW後は下落
- 7月から8月は方向感のない相場
- 10月から11月は下落
- 年末年始は上昇
時期によるアノマリーの理由
1月のアノマリーはご祝儀相場で上昇するといった理由からです。
2月はご祝儀相場の反動で下がると考えられています。
2月に下落した後、3月末にかけて上昇するのは配当狙いの買いが入りやすいからです。
4月は配当の権利落ち直後で下落する可能性があります。
5月GW前にかけて上昇しやすいのは、多くの企業で決算が発表されるからです。
決算期待で上昇した後、5月GW後は材料出尽くしで下落する現象がよく見られます。
7月から8月にかけては材料が少ないうえにお盆休みがあります。
出来高が細りやすいのが夏相場です。
そのため、方向感のない相場が続く傾向があります。
11月に下落するアノマリーがあるのは、ヘッジファンドの決算売りが出ると推測されるからです。
そして、もちつき相場により、年末年始は相場が上がりやすくなっています。
日経平均株価のアノマリーで立てられる戦略
日経平均株価のアノマリーにより、次の戦略が立てられます。
- 2月の下落時に買い
- 5月GW後の下落が始まる前に売り
- 10月11月秋の下落時に買い
- 2月の下落の前に売り
中期で投資したい方は秋に買い、次の年の春に売りといった戦略も立てられます。
サザエさんやジブリなどアニメが及ぼすアノマリーとは
アニメでよく知られているアノマリーは次のとおりです。
- サザエさんの視聴率が上がると相場は下がる
- ジブリが放映されると相場が大荒れする
サザエさんの視聴率が相場に影響を及ぼす理由
なぜサザエさんの視聴率が相場に影響を及ぼすのでしょうか。
サザエさんは国民的人気のあるアニメのため、家族で視聴することが多いです。
そんなアニメで視聴率が上がるということは、放映時間中に家族が家に居たままとなります。
外での消費が少なくなる → 企業の売り上げが下がる → 株価が下がるといったアノマリーとなっているのです。
ジブリはなぜ放映されると相場が大荒れする理由
一方、ジブリが放映されるとなぜ相場が大荒れするのでしょうか。
それはジブリの放映時間と、米国の雇用統計の発表時間が重なるからと考えられます。
ジブリの放映時間は金曜9時から11時、米国の雇用統計の発表時間は4月から10月で金曜21時30分、
11月から3月は金曜22時30分です。(ともに日本時間)
米国の雇用統計は注目度の高い経済指標のため、発表時間の前後で相場が乱高下しやすくなっています。
ほかにも理由として考えられるのが、悪材料は金曜発表が多い傾向です。
金曜に悪材料が出ると、流動性の低い月曜の早朝に大きな窓を開けて市場が始まることがあります。
そのため、ジブリの呪いとして個人投資家の方々に恐れられているアノマリーです。
日本株は平日の9時から11時30分まで、12時30分から15時までの取引が一般的となります。(夜間取引PTSなどは除く)
しかし、fxなら日本時間の21時30分や22時30分頃、月曜早朝の時間帯でも取引可能です。
ただし、アニメのアノマリーは都市伝説の域を出ないため参考程度にとどめたほうが良いでしょう。
小型株のアノマリーとは
個別銘柄を大まかに分けると大型株、中型株、小型株の3種類です。
時価総額と流動性は大型株>中型株>小型株の順番となります。
上記のうち、小型株のほうが高パフォーマンスというアノマリーがあるのです。
小型株のアノマリーの理由
流動性が低い小型株には、値動きが上下に振れやすいといった特徴があります。
特にマザーズの小型株は、個人投資家の動向が大きく左右されやすいです。
大型株ではなかなか難しい株価10倍という小型株も一部に見られます。
ほかにも理由の一つとなるのが、将来への成長期待です。
現在は小さな会社でも、成長しだいでは大きな会社になる可能性があります。
この特徴から小型株のアノマリーが誕生した可能性があるでしょう。
小型株のアノマリーを信じる方は個人投資家の注目が集まる前に、いち早く投資したいところです。
米国大統領選挙におけるアノマリーとは
政治と経済に密接な関係があるのは、多くの個人投資家の方々がご存じのとおりです。
世界に影響を及ぼすのは、経済規模の大きな米国となります。
そのため、米国大統領選挙前には景気対策期待の買いが入り、相場が上昇するというアノマリーがあるのです。
米国経済は日本経済にも大きな影響を及ぼすため、日本株は米国大統領選挙前に買いを入れたいところです。
ただし、景気対策の内容が乏しいときは失望売りが入りかねません。
投資のアノマリーで代表的な『割安株効果』『小型株効果』を中心に『1月効果』『Sell in May(セルインメイ)』について検証していきたいと思います。
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アノマリー①:割安株効果を検証
割安株効果は次の小型株効果と合わせて最も有名で知られているアノマリーです。
そもそも割安株とは?
割安株の定義は様々ですが、大きく分けて2つあります。
1つ目は、ただ単にPBRが低いという意味での割安株。
「PBR」は『株価純資産倍率』のことで株価が純資産に対して割安か割高かを測る指標です。
【PBR = 株価 ÷ 1株あたりの純資産(株主資本)】
PBRが1以下ということは保有している純資産より低い金額で評価されており、一般的に割安とされています。
2つ目は、投資の神様である『ウォーレン・バフェット』の師であるベンジャミン・グレアムが提唱するネットネット株です。
ネットネット株はPBRよりも厳しい条件でバランスシートに切り込んで割安株を絞り込んでいます。
割安株は本当に成績がよいのかを検証
では実際に割安株が高い成績を残しているのかを検証していきましょう。
上記で述べたネットネット株については『かぶ1000』さんの高い投資成績や、
グレアム自身が著書『賢明なる投資家』で長期的に高い成績を残していると述べています。
ネットネット株自体なかなか存在していないので、以下では低PBRをバリュー株として実施された検証を見ていきたいと思います。
【米国株】
まずは1970年から2010年の米国のバリュー株(Value)とグロース株(Growth)の成績です。
大型株、小型株にかかわらず、バリュー株の方がグロース株よりも高い成績をあげていることが見て取れますね。
グロース株は将来の利益を見通した上で、現在の株価が魅力的と考えて投資する手法です。
しかし、将来の利益は不確実性が高いため見通し通りとならない場合は、失望により大きく下落します。
バリュー株は今現在の企業の純資産をみて割安かどうかで投資判断を行います。
不確かな未来より確実な現在に投資をした方がよいということなのでしょう。
名著「ウォール街で勝つ法則」を元に検証していますので参考にしていただければと思います。
【日本株】
次に日本株ですが、以下は野村證券がPBRの低い銘柄をRN Large Value、PBRの高い銘柄をRN Large Growthとして分類した時のリターンの比較です。
割安株効果も実証されたアノマリーということができます。
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アノマリー②:小型株効果を検証
割安株と並んで有名な小型株効果について検証していきたいと思います。
米国株並びに日本株ともに小型株効果の存在を確認
では、割安株と同じく米国と日本に分けて見ていきましょう。
【米国株】
米国株については先ほどのバリュー株のアノマリー分析の際に用いた図を再度見ていきましょう。
バリュー株投資とグロース株投資以外に小型か大型かで分けています。
リターンは以下の通りとなっています。
小型バリュー株>大型バリュー株>小型グロース株>大型グロース株
バリュー株にしてもグロース株にしても小型株の方が高いリターンを挙げているという結果になっていますね。
【日本株】
筆者が資格を取得している証券アナリストのレポートに「日本株の小型株効果の検証」がありましたので紹介します。
以下は1986年〜2010年の日本株の時価総額、資本金、売上高を大きい順から1分位→2分位→・・・→10分位と分けた時の平均リターンの比較です。
時価総額、資本、売上高ともに小さくなればなるほどリターンが高くなっているのがわかります。
9分位まででも時価総額、資本、売上高ともに小さい方が高いリターンとなっています。
小型株効果もアノマリーとして日米共に実証されたことになりました。
小型株効果は割安株効果と密接な関係
もう一度、米国株の図に立ち戻ってください。
小型株バリュー株と小型株グロース株の間に明確な差があります。
一方、小型株グロース株と大型株グロース株の間には微妙な差しかありません。
割安株はなぜ割安なのかという点を考える必要があります。
しっかりとアナリストが株価を分析すれば、株価は適正な値に近い水準で取引される可能性が高くなります。
しかし日本株の上場株は4000銘柄、米国株の上場株は5000銘柄と言われています。
小型株はしっかりと分析が行われる可能性が大型株に対して低いのです。
結果的に小型株には実際の価値よりも著しく低い価格で取引されている銘柄が多く存在しているのです。
日本株においても先ほどの『日本株の小型株効果の検証』の中でも小型株効果は割安株効果の影響を受けているとの結論になっています。
割安株効果と小型株効果は密接に関わり合っているといえるでしょう。
ただ、実際に小型株効果はあるものの投資することは難しいという点について「ウォール街で勝つ法則」が示しているので参考までにご覧ください。
小型株投資を行うには?「IWM」vs「IJR」
小型株効果の効力を享受したいけど、個別株投資は難しいという方におすすめなのがETFへの投資です。
ETFは個別株のように取引ができる投資信託で指定した指数に連動する値動きを実現します。
日本株はどうしても人口縮小国家ということもあり米国株の魅力には負けてしまいます。
そのため、米国株を例に小型株投資を行うのにてきしたETFについて紹介していきたいと思います。
米国の小型株インデックスとして有名なものは2つあります。
1つ目はラッセル2000指数です。
ニューヨーク証券取引所やNASDAQ上場の約5000銘柄の中から時価総額が1001位~3000位の企業を抽出しています。
2000銘柄を対象にした時価総額加重平均指数であるためラッセル2000指数という名前となっています。
ラッセル2000指数に連動するETFとして「i Share Russell 2000 ETF」(通称:IWM)があります。
2つ目はS&P Small Cap 600指数です。
S&P Small Cap 600指数は多種多様な業界の小型株600種類をインデックスに仕上げたものです。
バンガード社のS&Pスモールキャップ600ETF(通称:VIOO)があります。
以下のIWM(Portfolio1)とVIOO(Portfolio2)の比較図をご覧ください。
ご覧いただければ一目でわかりますが、S&P Small Cap 600指数の方が高い成績となっています。
S&P Small Cap 600指数は小型株というだけでなく、流動性や収益性まで加味して600銘柄を選出しています。
一方のラッセル2000指数は単純に時価総額要件のみで選出しています。
小型株の中には倒産してしまう銘柄も一定数存在しているのでパフォーマンスを一定程度押し下げる銘柄もあるのです。
そのため、収益性まで加味したS&P Small Cap 600指数に連動したVIOOの方が魅力的な選択肢となるのです。
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コラム:小型株の中から「テンバガー」を狙おう!
先ほども話がでましたように小型株は証券会社のアナリストの分析対象とはなりません。
そのため異常なレベルで割安に放置される可能性があることについても言及しました。
割安に放置されている小型株に材料がでてきたり、業績が上昇すると一気に注目を集め株価が急騰することがあります。
株価が10倍以上になるテンバガーもほぼ全て小型株から生まれています。
現在の日本の時価総額毎の企業数の分布です。
時価総額 | 会社数 |
1兆円以上 | 約190社 |
3000億円以上 1兆円未満 | 約280社 |
1000億円以上 3000億円未満 | 約450社 |
500億円以上 1000億円未満 | 約420社 |
100億円以上 500 億円未満 | 約1340社 |
100億円未満 | 約1350社 |
過去10年で株価が10倍になったテンバガーは164銘柄存在しました。
そのうち8割の127銘柄は時価総額が100億円未満の銘柄から生まれました。
個別株投資で大きな利益を狙いたいという方は小型株を詳細に分析して利益を狙うのが合理的な選択肢となるでしょう。
とはいっても勉強をせずに十分な知識を得ずに個別株投資を行うと痛い目を見ます。
筆者も大学時代から個別株投資を行った時は数百万円の損失をだしたこともあり立ち直れない気持ちになったこともありました。
自分で損失を出しながら学ぶのも良いのですが、最初から体系的に学んでおけば資金を失う必要がなかったとも思っています。
そのような方にはしっかりとした株式投資スクールで学ぶことをおすすめします。
筆者が実際に受講しており体系的に投資を学ぶことができるグローバルファイナンシャルスクールについて以下で紹介しています。
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アノマリー③:「1月効果」を検証
株式相場で1月の収益率が他の月よりも高く出やすいというアノマリー。
「1月効果」は35年前に米国のドナルド・ケイム博士によって金融雑誌「Journal of Finance」で発表された法則です。
12月に支払税金を少なくするために、投資家は保有株(主に含み損)を売却して損を集中的に出します。
その結果、1月は手元にある豊富な資金で株式市場に参戦するため、「買」が起こりやすいという理由でした。
特に米国の富裕層の方々がとる行動で、別名「タックスロス・セリング」と言われています。
たしかにアノマリーが発表された当初は、
12月のタックスロス・セリングでできた資金を1月に投資する流れがあったため1月は高い成績を出していました。
では、近年1993年からのデータとしては「1月効果」は実証されるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
【米国株:NYダウ】
NYダウの1993年からのデータだと、むしろ1月は平均してマイナスのリターンに陥っています。
最近は1月効果が実証されないことが明らかとなりました。
【日本株:日経平均株価】
日本株に関しても同様に1月の成績はマイナスとなっています。
「1月効果」のアノマリーは現在では信じない方がよさそうです。
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アノマリー④:「Sell in May (セルインメイ)」を検証
Sell in Mayも『1月効果』と同じ月に関するアノマリーです。
日本語で『5月に売れ』という名前の通り、5月から株価が下落基調にあるとするアノマリーです。
Sell in Mayには続きがあります。
正確には『Sell in May, and go away; don’t come back until St Leger day.』とSell in Mayの後には続きがあります。
つまり日本語では
「5月に売って、9月の第2土曜日まで戻ってくるな」
という意味となります。
【米国株:NYダウ】
NYダウの1993年からのデータだと、5月はかろうじてプラスですが本当に6月から9月は成績が落ち込む傾向となっています。
季節要因で米国の経済指標が弱く出ることや、夏場に休暇をとる投資家が多いことなどが理由として考えられています。
【日本株:日経平均株価】
日本株に関しては米国ほどではありませんが、5月-10月にかけて軟調な展開が続いてますね。
セルインメイは5月が下落するというより、本来の5月〜9月が軟調に推移するという意味でアノマリーが成立しています。
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まとめ
投資におけるアノマリーは理論では説明できないが、経験則上ある条件下でリターンが高い等の結果が得られるという変則性のことを指します。
有名な四つのアノマリー『1月効果』『セルインメイ』『割安株効果』『小型株効果』に対してデータを用いて検証してきました。
結果的に『1月効果』以外のアノマリーについては実際にデータ上実証されました。
特に小型株効果と割安株効果は有効なので、個別銘柄をソートする際に用いてみるとよいでしょう。
銘柄のソートには以前お伝えした楽天証券のスーパースクリーナーが非常に便利です。
以上、投資のアノマリーとは?有名な「1月効果」「セルインメイ」「小型株効果」「割安株効果」を検証する。…でした。