株式投資における銘柄選択の方法として、「バリュー株投資」「グロース株投資」と大きく分けて2つあります。
■ 1970年以降:
- 小型バリュー株:年率15%
- 大型バリュー株:年率10.5%
- 小型グロース株:年率8.8%
- 大型グロース株:年率7.6%
グロース株よりバリュー株が、大型株より小型株が良好な運用成績を残していることが40年間(1970-2010)の歴史の中で実証されています。
最も年率の高い「小型バリュー株」が40年間で$1→$303の価値と大きく増大しています。
一方で、最も年率の低い「大型グロース株」が同じ期間で$20.9ととても低いリターンとなっております。
「小型バリュー株」と「大型グロース株」の差はなんと15倍以上となっています。
なぜこのような差が出てくるのか?
株式投資をこれから始めるという方はぜひとも押さえておきたい知識です。
今後の投資活動にも良い影響が出てくるでしょう。
今回は、バリュー株投資とグロース株投資の概要の説明とその比較。
また、なぜバリュー株投資の方が高い年率でリターンを出せるのかを解説していきたいと思います。
目次
Contents
「バリュー株」投資とは?
バリュー株投資とは、日本語で「割安株投資」を意味します。
バリュー株投資が意味するところとは?
「企業価値」が現在取引されている価格である株価よりも低い銘柄を探し投資を行います。
価格は最終的には価値に収斂していくという傾向があります。
元々低い価格で取引されている企業の株を購入して、実態の価値に上昇していく過程で利益を得ようとする投資手法です。
現在の価格である株価は誰もが知ることができます。
しかし、実態の価値については様々な算出方法があります。
- 元々バリュー株投資を提唱した「ベンジャミン」のバリュー株投資
- PERやPBRといった指標を用いた簡単なバリュー株投資
バランスシートを精査する伝統的なバリュー株投資の探し方
バリュー株投資はすでに発明されてかなりの年月が経過しています。
元を辿れば「ベンジャミン・グレアム氏」(ウォーレン・バフェットの師)によって初めて開発された投資手法なのです。
ベンジャミン・グレアム氏は企業の「財務諸表(主にBS)」に着目します。
企業が保有している資産から最低限これだけはあるという価値を算定します。
そして、最低限として見積もった価値よりも割安な価格で取引されている株を購入していきました。
企業の理論株価は以下の式で表されます。
理論株価 = ( ①純資産価値 + ②将来利益の割引現在価値 ) ÷ 発行済株式数 |
ベンジャミン・グレアム氏のバリュー株投資は①純資産価値に着目します。
保守的に見積もった純資産価値に対して株価が低い銘柄に投資を実行し高い利益を狙っていくものです。
尚、②の将来の利益予想については見通すことが困難として、無かったものとして理論株価は算出しています。
今後の利益を無いものとして考えているので、当然保守的な理論株価ということになりますね。
現代の日本ではバリュー株投資家として『かぶ1000投資日記』さんが有名です。
彼はグレアム流を発展させた独自の手法で銘柄を分析した高い成績を残し続けています。
基本的に、「大型銘柄」は大手の証券会社のアナリストなどのレポートなどできめ細かく分析されております。
つまり、著しく割安な銘柄は大型銘柄の中にはほぼ市場には存在しないのです。
市場から詳細に分析されていない「小型株」・「超小型株」に割安株が多く存在しているのです。
以下のグラフのように「小型株」のバリュー株投資が「大型株」よりも高い成績を残しているのです。
指標でスクリーニングするバリュー株投資
上記で解説したのは、ベンジャミン・グレアム氏が発明した「初期」のバリュー株投資です。
時は流れベンジャミン・グレアム氏のバリュー株投資のアレンジが行われています。
現在主流となっているバリュー株投資は株価指標を元に行われています。
低い「PER」若しくは「PBR」の指標をベースに「割安」or「割高」を判断したりといったものもあります。
バリュー株投資を謳っている投資信託は低PER、低PBR戦略をとっています。
■ PERとは:
PERとは「Price Earnings Ratio」の略称で和訳は株価収益率となります。
株価と企業の収益力を比較することにより、株式の投資価値を判断する際に利用される指標です。
計算式は【時価総額÷純利益】。
もしくは【株価÷1株当たり利益(EPS)】で算出されます。
わかりやすい例を用いて、PERを説明します。
例えば貴方が2000万円の投資用不動産を購入したとします。
購入した投資用不動産から毎年税後で100万円の収益が上がったとします。
すると、2000万円の投資資金を回収するのに20年間かかることになります。
この20年間がまさにPERです。
当ケースではPER=20倍ということになります。
一般的にPERは15倍を下回れば割安とされています。
例えば成長可能性が高いIT系の分野では、一般的にPERは高い数値を記録します。
同業他社のPERと比較して低い数値を示していれば割安な銘柄と分類することができます。
次にPERと並んで代表的な指標であるPBRについてです。
■ PBRとは:
PBRとは「Price Book-value Ratio」の略です。
株価が「1株当たり」純資産の何倍まで買われているか(1株当たり純資産の何倍の値段が付けられているか)を見る指標となっています。
現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して「割高」or「割安」かを判断する目安として利用されています。
PBRは利益ではなく、今企業がいくら保有しているかを元に株価の割安さを判断する指標です。
わかりやすくいうと企業の1株あたりの純資産が1000円なのに株価が800円であればPBRは0.8倍ということになります。
しかし、PERやPBRが低いから即座に購入するのは危険です。
PERが低いということは投資家から成長が期待されていないとみることも出来ます。
またPBRが低いということは、「現在企業が保有している資産価値が今後低くなる可能性が高い」と投資家に判断されているのです。
いくらPERが現在8倍でも、利益が来年3分の1に落ち込んでしまったら来年のPERは24倍になってしまいますからね。
PERやPBRを基準に投資する場合は、指標だけを注意するのでは今後の事業環境も加味して購入銘柄を選択していきましょう!
借金等返済した場合に残る資金が多い企業のことを「キャッシュリッチ企業」と呼びます。
キャッシュリッチ企業はバリュー株も兼ねることもあり、尚且つ安全性も高い企業として知られています。
さらに、資金が潤沢なので配当金や自社株買などの株主還元に積極的な企業も多くなっています。
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「グロース株」投資とは?
「グロース株投資」は割安株銘柄に投資をする「バリュー株投資」とは異なり「成長株」に投資をする手法です。
グロース株が注目するのは企業の成長性
あくまでも「企業の成功」に着目して早期に購入することで高いリターンを狙います。
理論株価の計算式の中でも、バリュー株は①の純資産価値に着目しました。
しかし、グロース株では②の将来利益に注目します。
理論株価 = ( ①純資産価値 + ②将来利益の割引現在価値 ) ÷ 発行済株式数
たとえ、現時点で指標からみて高かったとして、将来の成長を確信して投資を行う手法です。
例えば現在株価が1000円でEPSで20円の企業Aが存在しているとします。
するとPERは50倍ということになります。
ただ投資家が企業AのEPSは年率50%で上昇していくことを見込むとします。
すると5年後のPERは10倍以下にまで低下していきます。
EPS | PER 株価1000円ベース | |
1年後 | 20.0 | 50.00 |
2年後 | 30.0 | 33.33 |
3年後 | 45.0 | 22.22 |
4年後 | 67.5 | 14.81 |
5年後 | 101.3 | 9.88 |
グロース株も本質的にはバリュー株投資
グロース株とバリュー株投資は区別されていますが広い意味ではグロース株もバリュー株投資です。
バリュー株投資は現在の価値に対して株価が割安だと考えて投資を行います。
一方、グロース株投資は現在の株価は将来の成長を見込むと割安であると考えて投資をします。
将来の価値の増幅を考えるかどうかの違いで本質的に投資家は株価が割安だと考えて投資をしているのです。
「今」に着目するのがバリュー株投資で、「将来」に着目するのがグロース株投資という違いだと覚えておきましょう。
〜コラム〜割引現在価値とは?
「将来利益の割引現在価値」を理解するには、「1年後の1万円」と「明日の1万円」のどちらの方が高い(価値がある)か?
という問いがわかりやすいです。
結論としては明日の1万円の方が高いです。
1万円を運用すれば(インフレもあり)1年後には1万円を上回る金額が手元に残るという考え方が出発点です。
例えば、割引率を10%に設定して、1万円を現在価値にすると以下のような金額になることがわかります。
1年後の1万円の現在の価値 | 1万円 ÷ (1 + 0.1) = 9,090円 |
2年後の1万円の現在の価値 | 1万円÷ (1 + 0.1)²=8,264円 |
n年後の1万円の現在の価値 | 1万円 ÷ (1 + 0.1)n乗 |
投資対象銘柄の現在価値を年数ごとに算出し、全てを足し合わせます。
現在時点で将来投資を検討しているグロース企業銘柄が稼ぐ利益を算定したものが「将来利益の割引現在価値」です。
「グロース株投資」は企業の将来利益が急激に上昇することを見込みます。
現時点の理論株価から考えると取引価格が安く投資を実行するという手法です。
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バリュー株投資がグロース株投資よりも平均リターンが高い理由は?
上記で「バリュー株投資」と「グロース株投資」をそれぞれ解説し、違いについて解説しました。
しかし、冒頭で述べた、バリュー株投資の方がグロース株投資よりも良い成績を収めているのはなぜなのでしょうか。
「成長株」に投資をするグロース株投資の方が高い成果が出るのでは?と思ってしまいそうですよね。
ここではなぜ、グロース株投資よりバリュー株投資の方が高い成績なのかをお伝えしていきたいと思います。
不確実性の高いグロース株投資
バリュー株投資の発明家ベンジャミン・グレアム氏は以下のような指摘を行なっています。
投資において将来成長するのかどうかを予測すること自体が誤りであある。
手元にある確固とした「財務諸表」というデータのみが信頼に足る指標です。
企業の将来の利益を株価算定の考慮に入れると読み間違いが起きるリスクが大きいとしています。
特に企業自体は成長する要素がととのっていたとしても市況自体が悪化してしまうリスクもあります。
年率50%の成長を狙って投資したにも関わらず金融ショックでマイナス成長となれば価格は大幅に下落してしまいます。
バリュー株とグロース株の間に顕著な差が出ているのは、以下のイベント時が主なものとなっています。
グロース株投資はバリュー株投資に比べて景気の悪化に弱いことがよくわかりますね。
バリュー株投資はリーマンショックでの打撃はありました。
しかし、ITバブル崩壊時など含め安定的に成長をしていったことが見て取れます。
一方、バリュー株投資は「今の状態」と取引されている価格である株価との関係で割安度を判断します。
今あるデータであれば読み間違いをする可能性は低いとしているのです。
価格は価値に収斂するということが意味するところ
最初の方で価格は最終的には価値に収斂していくと申し上げました。
バリュー株は今現在既存に株価が実態の価値よりも低いので、企業価値が変わらなくても株価は上昇することが見込まれます。
さらに企業価値が上昇した場合、バリュー投資では大きな価値を得ることができるのです。
企業価値が株価よりも低くならない限りは理論的には損をしないという特性があります。
一方、バリュー株は将来の成長を見込んで株価が価値よりも高くても投資を実行します。
価値自体が実際に上昇すればグロース株投資でも利益をあげれますが、成長をしない場合は反対に損失を被ります。
さらに企業価値自体が下落してしまっては大きな損失を被ることになるのです。
上記のことからもわかる通り、バリュー株投資の方が有利な条件で投資に踏み出すことができるのです。
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大きなリターンを狙えるのはグロース株投資
先ほど平均的なリターンとしてはバリュー株投資の方が優れていることを申し上げました。
グロース株で大化けした最たる銘柄としてあげられるのが「米アマゾンドットコム(AMZN)」です。
アマゾンは過去10年で、30倍に急騰しています。
株価が急成長を見せた2015年からのPERの数値は以下の通りとなっています。
高い時は500倍以上、近年下がってきているとはいえ100倍近くでPERは推移しています。
PER500倍といえば現在の利益水準から考えると、投資資金を回収するのに500年間かかるということを意味しますからね。
しかし、投資家はアマゾンが急成長することを見越して買い進めた結果株価の急進が実現しました。
当然、当期間においてアマゾンが投資家の期待に答える成長を実現してきた結果となります。
グロース株は基本的にはバリュー株に対して成績は劣後します。
しかし、大きなリターンを狙いたいという方は十分な分析を行った上で実施することをおすすめします。
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グロース株で大きなリターンを目指すのであれば勉強が必要不可欠
今までお伝えしてきた通り、バリュー株投資がグロース株を凌駕していることがわかります。
投資の神様といわれている「ウォーレンバフェット」も師匠はバリュー株の父であるベンジャミン・グレアムです。
しかし、彼も独自の研究を重ねコカ・コーラのように当時決して割安ではない銘柄を購入し大きなリターンを出していきました。
大きなリターンを得られるのはグロース株なのですが、しっかり勉強をして分析に分析を重ねた上で投資をしないと手痛い打撃を被ります。
銘柄の選択方法を学ぶのであれば、実際にグロース株でリターンをあげた投資家たちから学ぶのが有効な選択肢です。
当サイト「マネリテ!」では勉強するために有効な本を紹介しています。
しかし、実際にどの本が自分に合っているのかを見つけるのも難しいです。
自分で能動的に学ぶにはエネルギーが必要です。
そこで「お金の学校」という選択肢が有効となります。
実際に株式投資をはじめとした投資でリターンをあげている投資家たちによって体系的に講義を展開してくれています。
各「お金の学校」は体験版として無料の投資セミナーを提供しています。
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まとめ
「バリュー株投資」は現在の資産価値、「グロース株投資」は将来利益に着目して投資判断をそれぞれ下しています。
40年の歴史を見るとバリュー株投資がより高いリターンをあげていることがわかりました。
あなたも、株式投資をするのであれば、バリュー投資を学びチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
以上、【バリュー株・グロース株投資とは?】2つの投資手法の違いをわかりやすく解説!バリュー株投資のリターンが優れている理由とは?…の話題でした。