これまで大型株の高配当利回り戦略や、増配銘柄への投資戦略が数十年にわたり市場平均を凌駕してきていることを取り上げてきました。
- 日米での二重課税(30%)の影響が甚大となる
- 高配当利回りの有効性が確認されている大型株以外も含まれているためパフォーマンスが低い可能性がある
米国株のETFの種類は豊富にあり、中には増配銘柄だけを組み入れたETFも存在します。
今回取り上げるのは増配10年以上の銘柄だけを組み入れたETFである「VIG」について以下点について考察していきたいと思います。
◾️ 今回の瓦版内容:
- VIGとはどのようなETFなのか?
- VIGは投資妙味があるETFなのか?
- VOOとどちらが魅力的なのか?
- VIGより魅力的な大型株増配ポートフォリオとは?
目次
Contents
VIG(Vanguard Dividend Appreciation ETF)とはどのようなETFなのか?
連動するインデックスはNASDAQ Dividended Achievers Select Index
ETFは連動を目標とする指数が存在します。
以下がナスダックが発表している定義です。
重要な点は赤字にしています。
The NASDAQ US Dividend Achievers Select Index is comprised of a select group of securities with at least ten consecutive years of increasing annual regular dividend payments.
The NASDAQ US Dividend Achievers Select Index is a modified market capitalization weighted index.
(引用:Nasdaq)
米国には25年以上増配している配当貴族や50年以上増配している配当王銘柄が存在しています。
増配10年を達成している企業は非常に多いのです。
ちなみに2020年4末時点で配当貴族は139銘柄、配当王は29銘柄存在しています。
また、時価総額加重平均指数はTOPIXやS&P500指数のような指数です。
企業の規模である時価総額が大きくなればなるほど組み入れ比率が高くなります。
構成銘柄数と構成セクター比率
VIGの構成銘柄数は183銘柄となっています。
ただ時価総額加重平均指数ですので上位10銘柄で40%近い構成比率を誇っています。
保有銘柄 | シンボル | ファンド構成比 |
Microsoft Corp. | MSFT | 6.08% |
Walmart Inc. | WMT | 4.67% |
Procter & Gamble Co. | PG | 4.54% |
Visa Inc. Class A | V | 4.49% |
Johnson & Johnson | JNJ | 4.17% |
Comcast Corp. Class A | CMCSA | 3.20% |
Abbott Laboratories | ABT | 3.05% |
McDonald’s Corp. | MCD | 2.71% |
Costco Wholesale Corp. | COST | 2.52% |
Medtronic plc | MDT | 2.47% |
合計 | 37.89% |
またセクター別の比率では資本財や消費サービスが多くなっています。
安定して消費の拡大で利益を伸ばしている企業の比率が多くなっているということですね。
構成比率 | |
資本財 | 24.60% |
消費サービス | 19.90% |
ヘルスケア | 13.00% |
消費財 | 11.20% |
金融 | 10.90% |
テクノロジー | 10.70% |
公益 | 6.00% |
素材 | 3.70% |
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VIGは投資に値するETFといえるのか?
では今回の本題部分に入っていきたいと思います。
VIGは投資妙味があるETFなのでしょうか?
魅力的な点①:大型株の増配銘柄は高いリターンを示現している
前回のシーゲル教授の「株式投資の未来」の内容を紹介した通り、大型株高配当投資と増配投資は市場平均を大幅にアウトパフォームしています。
◾️以下図の定義:
増配をしているということは確固とした事業基盤を有していることを意味しています。
さらに、配当金を増額していくというコミットメントを出すことで経営者のモラルハザードを防いで効率的な経営が実現する確度が高くなります。
結果的に高いリターンを叩き出すことになっていると同書の中で言及されています。
魅力的な点②:高配当利回りのように二重課税の影響を軽減できる
大型株の高配当利回りのポートフォリオも高いリターンを出すという結果がでています。
しかし、残念ながら米国で拠出された配当金は米国側で10%に加え、日本側で20.315%の二重課税が課せられます。
SPYDのような高配当ETFですと配当利回りが6%近く拠出される局面もあります。
すると、再投資する場合は30%分が毀損するので4.2%分しか再投資できず結果的に1.8%分が毀損することとなるのです。
しかし、VIGの場合は2%程度の配当利回りであり、S&P500指数と大差ない水準です。
つまり、配当金再投資時に毀損する分は0.6%に収めることができます。
問題点①:増配10年だと期間が短い
配当貴族の増配記録の基準は25年、シーゲル教授のコア指数も15年を設定しています。
増配記録が15年以上ですと、景気の1サイクルを経験することができます。
不況になったとしても配当金を増額できる強い意志と事業基盤を保有している企業をソートすることができるのです。
しかし、10年ですと丁度リーマンショックから立ち直る時からの記録となります。
この10年間景気は拡大し続けましたので、配当金の増額も造作もなかったでしょう。
問題点②:大型銘柄ばかりではない
時価総額加重平均指数ですので大型株の組入比率は均等ポートフォリオのSPYDよりは大きくなります。
しかし、S&P500指数の平均以下の時価総額の銘柄が30%以上組み入れられています。
特に有効性が確認されているのは大型銘柄の増配企業ですので、出来れば大型銘柄で固めたいところです。
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VIGとVOOを比較-下落耐性の高さが魅力-
ではVIGは市場平均を凌駕しているのでしょうか?
VOOとの過去リターンを比較比較
以下がVIGとVOOのリターンです。
年率リターン | リスク(=標準偏差) | 年間最大利益 | 年間最大損失 | |
VIG(青) | 10.88% | 11.84% | 29.62% | ▲8.46% |
VOO(赤) | 11.65% | 13.13% | 32.39% | ▲9.30% |
VFINXと長期で比較
VOOは2011年からと比較的最近に組成されています。
しかし、同じくバンガード社がS&P500に連動するよう組成しているインデックスにVFINXがあります。
VOOとVFINXは殆ど同じ動きを2011年以降しています。
しかし、VFINXと比較することでVIGが組成された2006年からを比較することができます。
年率リターン | リスク(=標準偏差) | 年間最大利益 | 年間最大損失 | |
VIG(青) | 7.98% | 13.42% | 29.62% | ▲26.69% |
VFINX(赤) | 7.66% | 15.42% | 32.18% | ▲37.02% |
下落相場ではVIGが強く、上昇相場ではVOOの方が素直に強いといえそうですね。
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VIGより魅力的な大型超長期増配株
VIGは下落体制に強い反面上昇局面を取りにくいという結果となっていることが分かります。
ただ、大型株の長期銘柄であれば基本的に市場平均を大幅に凌駕することができます。
以下は増配年数が長い銘柄順にS&P500指数の平均時価総額である450億ドルを超える銘柄を選んだリストです。
機械的に増配年数上位でソートして時価総額が高い順から選んでいるので恣意性は働かせていません。
名前 | Ticker | 増配年数 | 配当利回り | 時価総額(億ドル) | 年間配当金 |
Procter & Gamble Co. | PG | 64 | 2.68 | 2773 | 3.16 |
3M Company | MMM | 62 | 3.87 | 874 | 5.88 |
Johnson & Johnson | JNJ | 58 | 2.69 | 3808 | 4.04 |
Coca-Cola Company | KO | 58 | 3.57 | 1979 | 1.64 |
Colgate-Palmolive Co. | CL | 57 | 2.50 | 594 | 1.76 |
Target Corp. | TGT | 52 | 2.41 | 575 | 2.64 |
Altria Group Inc.. | MO | 50 | 8.56 | 711 | 3.36 |
Becton Dickinson&Co | BDX | 48 | 2.63 | 675 | 4.28 |
Kimberly-Clark Corp. | KMB | 48 | 3.09 | 463 | 4.28 |
PeosiCo & Co | PEP | 47 | 2.89 | 1800 | 3.82 |
上記の銘柄を10%ずつ組み入れたポートフォリオとVIGとVFINX(=S&P500)のリターンを比較したものが以下です。
平均年間配当利回りは3.48%と若干高いですが高配当というレベルではないので二重課税による毀損はある程度抑えられています。
年率リターン | 年率リターン (配当税既存分加味) | リスク (=標準偏差) | 年間最大利益 | 年間最大損失 | |
大型増配戦略(黄色) | 9.74% | 8.70% | 11.92% | 29.25% | ▲20.95% |
VIG(青) | 7.98% | 7.38% | 13.42% | 29.62% | ▲26.69% |
VFINX(赤) | 7.66% | 7.06% | 15.42% | 32.18% | ▲37.02% |
因みにリバランスを行わなかった場合のリターンは以下となります。
年率リターン | 年率リターン (配当税既存分加味) | リスク (=標準偏差) | 年間最大利益 | 年間最大損失 | |
大型増配戦略(黄色) | 9.22% | 8.26% | 12.12% | 29.07% | ▲20.87% |
VIG(青) | 7.98% | 7.38% | 13.42% | 29.62% | ▲26.69% |
VFINX(赤) | 7.66% | 7.06% | 15.42% | 32.18% | ▲37.02% |
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まとめ
◾️ VIGの概要:
- 最低でも連続10年以上増配している銘柄で構成した時価総額加重平均指数
- 消費財や資本財セクターの比率が高くテクノロジーセクターの比率が低い
- 上位10銘柄で40%の構成比率を占めている
◾️ VIGの強み:
- シーゲル教授の提唱する大型株増配投資をある程度の確度で行うことができる
- 均等ポートフォリオに比して大型株比率が高く配当戦略の効果が得られやすい
◾️ VIGの弱み:
- 増配歴が10年だと景気の1サイクルを経験できていない銘柄も存在している
- 30%はS&P500指数の時価総額の平均未満の銘柄で構成されている
◾️ VOOやVFINXといったS&P500連動ETFとの概要:
- 上昇相場においてはS&P500より弱いが下落相場では底堅さを見せている
- VOOが組成された2011年からのリターンは市場平均に劣後
- リーマンショックを経験したVFINXとの2006年からの比較だとVIGに軍配
◾️ より魅力的な大型増配銘柄ポートフォリオ:
- S&P500の平均時価総額を超える銘柄の中から配当増配年数が長い順に10銘柄を均等ポートフォリオで組成
- 上記ポートフォリオを配当金再投資(年一回リバランスするかどうかは自由)
- 年率リターン、リスク、最大損失の小ささ全てにおいてVIGやS&P500を大幅に凌駕
今回はVIGについて解説しました。
上記のETF以外にも、株の個別銘柄、投資信託など、世の中には様々な金融商品が存在します。
長い目で見て、今後はどのマーケット、どの商品が高いリターンを見込めるのでしょうか?
マーケット(金融市場)に正解はなく、常に高いリターンを出せる商品を100%で当てられる人はいません。
しかし、マーケットが動く「論理」がわかれば、投資の勝率は格段に上がります。
投資だけではなく、このマーケットの論理を理解することで、「社会情勢」「ビジネス」が理解できるようになります。
ビジネスが分かると、サラリーマンであれば本業の仕事も捗り、楽しくなり、上手く自分の社会におけるポジションを確立することができます。
「投資」と「社会での立ち回りの上手さ」が同時に向上していくのです。
マーケットの論理を理解するには、投資・資産運用の勉強が必須です。
投資の勉強(マーケットの論理を理解)をしない理由はなく、獲得できるメリットは計り知れません。
まずは、本格的に投資の勉強を始めるにあたり、最初の一歩としてセミナーなどに参加することをおすすめします。
現代では有益な情報を発信している団体も多いです。以下のコンテンツで特集していますので参考にしてみてください。
さらに本格的に学ぶ気がすでにあるのであれば、「お金の学校」も同様におすすめです。
2020年8月現在、コロナショックを受けて、金融相場が始まりました。
リーマンショックの時と同様、この金融相場の時期に投資をしている人と、投資をしていない人との間の格差が一気に拡大します。
投資すべきはまさに今ですが、お金の学校という「伴走者」がより心強い時代と言えます。
一つの選択肢として、検討してみることをおすすめします。
以上、【VIG】評判のバンガード社の連続増配ETFで「Vanguard Dividend Appreciation ETF」を評価!VOOと比して投資妙味はあるのかを検討する。…でした。