『○○株下がり続けてるけどナンピンしているよ』
よく株式投資を実行されている方からこのような話が聞こえてきませんか?
「ナンピン買い」というのは株価が下がっている企業の銘柄を買い増していく行為のことを指します。
今回は、ナンピン買いの概要とそのメリット・デメリットをお伝えしていきたいと思います。
加えて、「どのような場合にナンピン買いが正当化されるのか?」「なぜ下がっている企業を買うのか?」という点についても触れていきたいと思います。
目次
Contents
ナンピン買いとは?
ナンピンは漢字で表すと「難平」(由来は後続コラムにて)とされ、意味としては保有銘柄の株価下落時の「買い増し」です。
具体的に説明すると、保有していた株式が値下がりした時に、さらに下値で株式を購入し、損失のカバーだけでなく平均購入単価を下げて、値上がり益を生みやすくする効果がある手法です。
買い増しによって「平均購入単価」を下げる行為であるため、英語にすると「average down」となります。
株価の上下にかかわらず定期的に一定金額買い続ける「ドルコスト平均法」との違いは、「ナンピン」は保有銘柄の買値よりも現在価格が下回っている際に行うという点です。
ナンピン買いは株価が上昇トレンドにあり、世界の投資家である「ウォーレン・バフェット氏」が提唱しているような、一時的な「悪材料」などが出た時に行うと有利になる可能性の高い投資手法です。
しかし、市況によっては損失をさらに大きくしてしまう懸念もあります。
ナンピン買いを行う時には、利益の増大を期待するだけではなく、損失を最小限に抑えることも意識しておきましょう。
さて、ここからはその「ナンピン買い」のメリットとデメリットを見ていきたいと思います。
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ナンピン買いのメリット
まずはナンピン買いのメリットですが、平均購入単価を下げることができる点です。
わかりやすく、2月1日にA社の株を1000円の時に100株購入します。
その後2月10日に700円に下落した時に100株を購入。
さらに2月15日に500円に下落した時に100株購入した場合を考えます。
すると以下のように株価の下落に伴って平均単価も下落していきます。
日付 | 株価 | 購入株数 | 持株平均単価 |
2月1日 | 1000円 | 100株 | 1000円 |
2月10日 | 700円 | 100株 | 850円 |
2月15日 | 500円 | 100株 | 733円 |
その後、2月28日に元々の1000円まで株価が回復した時に、平均単価との差(1000円-733円)×300株 = 80,100円と大きな儲けを手にしたいと思います。
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〜コラム〜ナンピン買い(難平買い)の語源とは〜
ナンピンときくといかにも麻雀ででてきそうな名前なのですが、ナンピンは漢字では「難平」と書きます。
江戸時代からある相場の格言なのですが、「難」、つまり損失を平らかにならすという意味で難平という言葉が誕生しました。
日本人は昔の江戸時代には世界で初めて大阪の堂島で米の「先物取引」を行っていたことが確認されていました。
しかし、実はローソク足から動きを読む『酒田五法』。
また、今でも世界的に使われているテクニカル指標『一目均衡線』などの指標も開発していたことからもわかる通り、従来大の相場好きなんです。
江戸、明治期の資産家の中には時の流れを適切に読んで莫大な資産を蓄えた方も多く存在します。
我々日本人の中には投資家のDNAが流れていることを感じることができますね。
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ナンピン買いのデメリット
ナンピン買いを行って平均購入単価を下げた後、株価が上昇した場合は大きな利益を獲得できます。
そのまま株価が値下がり続けた場合、または倒産した場合には大きな損失となってしまいます。
例えば、先ほどのケースで2月28日に株価が300円まで下落していれば▲129,900円の損失となります。
日付 | 株価 | 購入株数 | 持株平均単価 |
2月1日 | 1000円 | 100株 | 1000円 |
2月10日 | 700円 | 100株 | 850円 |
2月15日 | 500円 | 100株 | 733円 |
2月28日 | 300円 | 損益 | ▲129,900円 |
仮にナンピン買いを実行せずに、元々の1000円で100株のままであれば損失は(1000円-300円)×100株=▲7万円となることを考えると、損失が大きく膨らんでいることが分かります。
大きな損失を被り、再起不能になることもあるため「へたなナンピン素寒貧」という慣用表現まで出てくる程となっています。
以上のように、ナンピン買いは購入対象の資産価格が下がり続けるようなケースでは、期待している効果が全く発揮されません。
つまり、平均購入単価を下げても、さらに値下がりし続けるようなケースではナンピンは無意味です。
ナンピン買いのタイミングについても、慎重に見極めないと「底値付近だと思ってナンピンしたけれど、さらに下があった。」ということになりかねないわけです。
ナンピン買いは初心者には判断が難しいケースが多く、根拠のない期待をしてしまうと損失が増大するリスクが高いので、「逆指値」をして決めた金額まで値下がりしたら売りに出すなど、損切のタイミングを決めておくことが重要になります。
そのため、ナンピンを検討している銘柄に投資資金を集約するよりも他の銘柄を購入する方が、結果的にパフォーマンスが良い場合が多いと言えるでしょう。
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ナンピン買いが成功する有効ケース3選!
特に株式投資を始めて間もない投資家にありがちなのですが、なんとなく上がりそうだからという理由だけでナンピン買いを実施されている方をよく見かけます。
しかし、ナンピン買いを特に考えや理論的な根拠もなく実施すると先ほどお伝えしたように大きな損失を被り立ち直ることが不可能となってしまう事態になりかねません。
それではここからは、以下の点についてお伝えしていきたいと思います。
- ナンピン買いが正当化される局面とはどのような場合なのか?
- そんな場面存在するのか?
業績は堅調であるが市場全体の影響や風評で下落している銘柄
企業業績が堅調で見通しも明るいのにも関わらず、市場全体の影響又は風評被害など企業の収益力に影響を及ぼさないことによって一時的に株価が大きく下落している銘柄です。
一般的に世界的な市場後退や自然災害の影響、企業の責任によらないネガティブサプライズがある銘柄については、一時的にリスクオフの売りが嵩み株価が下落していることが多いので、絶好のナンピン買いの機会とも言えます。
ただし、株価が値上がりするまでにある程度の期間が必要になることも多く、中長期的に保有する目的であることが前提となります。
例えば「ウォーレン・バフェット氏」が下落局面で買い増しを行い、現時点で同氏の最大投資ポートフォリオのポーションを占めている「米アップル」が良い例です。
米アップルは以下のように毎年、売上とともに利益を増加させています。
[APPLEの決算]
一株あたり利益である「EPS」も概ね右肩あがりで、昨年度は一昨年度を大幅に上回るEPSを叩き出しています。
しかし2018年度は株式市場全体が軟調であったため、アップルの株価は大きく下落しています。
企業独自の業績はよいのに全体の流れの中で下落している様子を受けて、世界最強の投資家であるウォーレンバフェット氏もすかさずナンピン買いを実施しております。
2017年末自伝では全ポートフォリオの10%近くを占めているのに過ぎなかったアップルを、現在では25%と全体のポートフォリオの約4分の1までポーションを高めています。
キャッシュを生み出す力が強くて高配当な銘柄
次に大企業にありがちなのですが、お金を稼ぐ力はありますが投資する先が見つけられず、配当金として株主に還元している企業です。
いわゆる大型株で成熟した企業は、株主に資するために増配を繰り返し、株主還元を手厚くする傾向にあります。
米国株の「KO(コカコーラ)」や「PFE(ファイザー)」などが有名です。
お金を稼ぐ力があり、ビジネスモデルも世界に浸透しているような大きな企業では、ネガティブサプライズがなければ大幅に株価が下がるということは考えにくく、株価が安定していることが多いです。
現在の日本企業でいうと「総合商社」や、「銀行」などの金融機関等の銘柄です。
そのような高配当銘柄は株価が下がると「配当利回り」が上昇します。
すかさず投資家からの買が入り株価が下支えされるという特徴があり、下落耐性の高さを有しています。
「キャピタルゲイン」だけでなく、「インカムゲイン」も投資家の主要な投資理由であるため、この観点から見ても高配当株かつ収益性に問題がなければ、ナンピン買いを検討してもよいでしょう。
例えば、現在2000円で年間配当が100円の場合は現在の配当利回りは100円÷2000円=5%となります。
しかし、株価が1000円まで下落してしまった場合の配当利回りは100円÷1000円 = 10%となります。
株価 | 配当金 | 配当利回り |
2000円 | 100円 | 5% |
↓株価下落 | ||
1000円 | 100円 | 10%に上昇 |
TOPIXの平均配当利回りが2%であることを考えると、配当利回り10%というのは非常に魅力的な水準なので買いたい投資家が殺到して株価が下支えされます。
ただ一点注意しなければいけないのは、本当に業績が悪化して収益力が下がることによって配当金すらも減額となるような状態となっていればナンピン買は危険となります。
シンプルにお金を稼ぐ力に関しては「営業キャッシュフロー」をみるのが手っ取り早いです。
営業キャッシュフローは企業が本業を通じてどれだけキャッシュを稼いでいるのかということを見ることができる指標です。
マネックス証券の「銘柄スカウター」を使えば、以下のように一目瞭然でキャッシュフロー推移を確認することができます。
銘柄スカウターでは以下のように営業キャッシュフローだけでなく、投資キャッシュフローさらに現在の現金の保有量についても一目で確認することができます。
できる限り営業キャッシュフローと現金・現金等価物が安定している「高配当企業」であれば株価下落時にナンピンを考える対象となりえます。
保有しているネット現金性資産以下の株価で取引されている銘柄
3つ目のパターンは「ベンジャミングレアム流」の銘柄です。
「ベンジャミングレアム氏」は「PL(損益計算書)」ではなく企業が今保有している「BS(=バランスシート)」に着目をして投資を行います。
企業の中にはネットキャッシュポジションだけで、株式価値を上回ってしまっている企業も存在しています。
「ネットキャッシュポジション」とは資産の中の現金と換金性が高い売上債券である、「売掛金・受取手形」に「有価証券」を加えた現金性資産から、全ての負債を差し引いた後に残る「超保守的な純資産」です。
要は借金を差し引いたベースで1億円の資産を保有している企業Bが、市場でわずか8000万円でより引きされていたら非常に魅力的ですよね。
企業Bの発行済株式が1万株であれば1株あたりのネットキャッシュポジションは1万円株価は8000円となります。
株価が8000円から6000円まで下落したとしても1株あたりネットキャポジションだけで10,000円ある企業が、6,000円に下落したので、よりバーゲン価格となりますのでお値打度が増したということになります。
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まとめ
大前提として、ナンピン買いという行為とは、損失を減らす行為ではありません。
「山勘」や「保有銘柄のかわいさ」にナンピンをしても結果が伴わないことが多いです。
慎重に今後の値動きについて注視できる銘柄でなければ、ナンピン買いをするのは避けた方がよいでしょう。
ナンピン買いは持株の平均単価を下げることができますが、株価が下落し続けてしまった場合は取り返しのつかない大きな損失を被る可能性があり安易に行うべきではありません。
しかし、含み損を抱えている保有銘柄が小型株(あまりに商いが薄いような銘柄)でない場合については、ナンピン買いをした方が良いケースもあります。
特に、以下の場合においてはナンピン買いが有効となり、大きな利益を獲得することができるので寧ろ推奨されます。
- 堅調なのに株価のみ下落している
- キャッシュ創出力が高く高配当なのに株価だけ下落している
- ネットキャッシュポジションのみで株価を上回っている
ナンピン買いを実施する場合はなぜナンピン買いを行うのかを、一度立ち止まって考えてみましょう。
保有銘柄がこれから上昇トレンドに入り、堅調な株価推移をみせると根拠をもとに予想するのであれば、ナンピン買いは非常に有効な投資手段になります。
以上、ナンピン買いのメリットとデメリットをわかりやすく説明!株式投資でナンピン買いが正当化されるケース3選も合わせて紹介する。…でした!