100万円あったら様々な選択肢が出てくると思います。
一番に思い当たるのは株式投資を行うかFXを行うか不動産投資を行うかという点だと思います。
本日は結局のところ100万円を投資するのはどれが適しているのかを証券アナリスト視点でみていきたいと思います。
最も初心者が回避すべきはFX
FXは日本人が最も好きな投資先の一つです。
しかし、FXは参入するべきではない理由を、総合商社で為替トレーダーを行っていた筆者の経験からお伝えしたいと思います。
日本人に人気のFX-世界からはミセスワタナベとして注目ー
周りの同僚や友人を見渡してもFXを行っている方の割合は多いのではないでしょうか。
矢野経済研究所のデータで見ても現在のFXの運用残高は1兆円を超えてきています。
また口座残高数も500万口座を超えており重複している方もいらっしゃると思いますが、単純計算で日本人の20人に1人がFXを行っています。
日本人の個人投資家の投資額は世界の為替マーケットでも無視できない金額規模となっています。
そのため、日本人のFX投資家のことを為替市場関係者は『ミセスワタナベ』という別称で読んでいます。
FXの勝率は10%近く
FXは基本的に上がるか下がるかを見極めるゲームなので勝率は50%に収斂するはずです。(詳しく後で説明します。)
一般的にFXで勝つ人の割合は10%程度と言われています。
日本人のFX投資家の勝率のデータは見当たりませんが、フランス当局が調べた結果によると89%の方が損失を出しているという結果になっています。
フランス当局AMFは、投資家から多くの苦情を受け、FX取引の潜在的危険性について警告を発した。
<<中略>>
この4年間で損失を被った顧客の総数は13,224人で損失合計は約2億2,000万ドル(1億7,500万ユーロ)、残りの1,575人の顧客は利益を出しており、その合計金額は1,751万ドル(1,380万ユーロ)であった。
FXは極論すると上がるか下がるかなので、負けている人がいるということは反対に勝っている人がいます。
FXの世界で勝っているのはプロの金融機関のトレーダーたちなのですが、彼らに資金を吸い取られている方が殆どなのです。
FXは投資ではなく投機
投資というのは株式投資でも不動産投資でも債券投資でも全体として大きく上昇していくものに資産を投じることです。
米国の株式市場を例にとって見てほしいのですが、過去200年間で株価指数は増大の一途をたどっています。
つまりパイ自体が拡大しているので理論的には全員が資金を増やすことができる資産といえるのです。
しかし、FXは上昇するか下落するかですので勝つ人もいれば負ける人もいます。
パイ自体は変わらないのでゼロサムゲームなのです。
スワップ(SWAPポイント)は得をしているわけではない!?
中には為替レートの上下には関係なく貰えるSWAPポイント分については得をしていると思っている方がいらっしゃると思います。
しかし、スワップポイントが高い通貨は金利が高いつまりインフレ率が高い国となっています。
インフレ率が高い国の通貨はモノの価値に対して通貨の価値が低くなっていきます。
つまりインフレ率が低い対円レートでは理論的には下落しやすくなります。
スワップポイントが貰える通貨がお得なら世界中の投資家が高金利通貨を買い無限に通貨価値がたかまるはずです。
しかし、実際には高金利通貨の価格が下落していることを考えると、スワップポイントを受け取ることを加味しても売りたいという方が多くいることの裏返しでもあるのです。
なぜ、個人のFX投資家は負けるのか?
為替市場には圧倒的に有利なプレイヤーが二つ存在します。
一つは資金量があり、なおかつ注文情報等の情報が集積する銀行等の金融機関のトレーダーです。
彼らは各実需企業の注文状況を見ながら、巨額の取引を行いマーケットを自分で動かす力を持っています。
二つ目はヘッジファンド等の大規模資金のトレーダーです。
欧米のヘッジファンドでは莫大な資金をさらにレバレッジをかけて取引を行いマーケットの流れを自分で作ることができます。
マーケットが動いた方向に他の参加者が乗っかって加速したところで利益確定を行うので巨額の利益を稼ぎ出します。
上記二つのプレイヤーが大勝ちする反面、個人は負けてしまうのです。
パイをとりあるFX市場で個人で勝負をしにいくのは非常に分が悪い戦にでるのと同じなのです。
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日米の『株式投資』 と『 不動産投資』のリスクリターンを比較
では残る株式投資と不動産投資についてどちらが魅力的なのかを比べていきましょう。
100万円の不動産投資はREITが現実的
株式投資は数万円から購入できる個別株もありますし、大抵の銘柄は1単元異常を購入することができます。
また投資信託であれば最低100円から投資をすることができます。
一方、不動産投資は実物であればワンルーム投資でも行うことはできません。
しかしREITを使えば投資信託感覚で不動産に投資を行うことができます。
REITは不動産に投資を行い個人が10万円程度から購入することができるようにした金融商品です。
REITでは賃料収入又は不動産売却収入の9割以上を分配することで法人税が免税となる仕組みとなっています。
法人税免税はREITにとっては良いのですが、再投資ができないという点が欠点となっています。
日本株とJ-REITの成績を比較
では今までのパフォーマンスを見ていきたいと思います。
J-REITは2000年の法改正に伴い誕生したため歴史は浅いのですがTOPIXと東証REIT指数の推移は以下となっています。
現在のところREITの方が高いリターンとなっています。
しかし、値動きの高さはREITの方が大きく一概に株よりも優れていると断じるのは早計です。
また期間でみると株の方がアウトパフォームしている局面もあります。
日本はREITの歴史が短いので1960年代からREITが誕生している米国の歴史を見て見ましょう。
米国株と米国REITの成績を比較
以下は米国株指数(青)と米国REIT指数(赤)の1994年からの推移です。
両者は右往左往しながらも現時点で殆ど同じ成績に収斂しています。
株が強い時期もあれば不動産が強い時期もあるのです。
データで見てみると以下となります。
リターンは株とREITで殆ど同じなのですが、リスク指標である標準偏差がREITの方が大幅に高くなっています。
つまり、価格の振れ幅が大きいのは不動産の方であるということです。
以下の図の振れ幅にあたる部分が標準偏差です。
つまり株とREITはリターンは同じだがリスクはREITの方が高いと言えるのです。
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100万円を投資するなら結局株と不動産(REIT)どちらが良いのか?
今まで株とREITのリスク・リターンを日米で比較してきました。
株式が良い時期もあるし、不動産が良い時期もある。
長期的にみると同様のリターンだがリスクは不動産投資の方が大きいとみてきました。
株か不動産かというのは結局個人の趣向によるものです。
長期的に安定した収益を狙いたいなら株価指数
以下は1880年からの米国のS&P500指数ですが一貫して長期的に右肩あがりで上昇していますね。
資本主義が継続する限りにおいて、この傾向は持続することが見込まれます。
米国株全体に投資をしたいのであれば『楽天VTI』が日本円建で投資できておすすめです。
100万円で大きなリターンを狙いたいなら個別株投資
1年で何倍にもなる投資を考えている方であれば個別株投資が最も魅力的な選択肢です。
高度経済成長期の日本のように現時点で日本や米国の不動産が年間で何倍にもなるということはありません。
しかし、個別株であれば日本でも米国でも年間10倍以上(テンバガー)になる銘柄も存在しています。
投資で大きな利益を獲得したいという方は有望な個別株への投資を狙いましょう。
筆者が実際に受講している『グローバルファイナンシャルスクール』では『60万円を7年で3億円にした実践投資法』で有名な堀哲也氏を講師に招きながら個別株の選択法についても教えてくれています。
何も勉強せずヤマカンで個別株の投資を行ってしまっては逆に大きな損失を被ってしまうので、しっかり勉強してから望みましょう。
配当(分配金)が欲しく不動産市況に自信があるならREIT
REITは利益の9割以上を配当金として拠出するので配当金利回りは平均で4%と株式の平均配当利回りの2%の倍近くあります。
ただ、配当金込みでみても値動きの変動は激しいので、不動産市況に自信の持てる状況においての投資に限定しましょう。
値動きが大きいということはリスクが大きい反面、大きく利益を狙える局面では高いリターンとなりますので時期を見極めることが重要ですね。
不動産の選び方についても株式欄でもお伝えしたGFSでは教えてくれています。
(番外編):元本が安全で高いリターンを得たいならFundsという選択肢
元本は変動せずに高い利息を受け取りたいという方におすすめなのがFundsです。
Fundsでは上場大企業に銀行の代わりに資金を貸し出し、代わりに4%-6%の利息を受け取ることができます。
まさに個人向けの安全性の高い社債として注目度が急上昇している投資先です。
以下に詳しくまとめているので参考にしてみてください。
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まとめ
100万円というある程度まとまったお金を運用する先としてFXは投資ではなく投機であり不適切です。
株と債券は趣向によりますが、安定して利益を目指したい方は株価指数、大きなリターンを狙うのであれば個別株が適しています。
不動産市況に自信があり高い分配金が欲しい方はREITが魅力的となってきます。
また、元本変動せず5%程度の配当金だけを狙いたいのであればFundsが最も有力な投資先といえるでしょう。
以上、100万円あったら株式投資・不動産投資・FX、どの資産で運用すべきかを証券アナリスト視点で徹底解説。…でした。