「CAPEレシオ」という指標の名前をご存知でしょうか?
CAPEレシオは別名「シラーPER」とも呼ばれています。
「PER(株価収益率)」と同様に株価の割安感・割高感を把握するための指標のことです。
アメリカの株価指数に対して使われることが多いので知らない方も多いかもしれません。
しかし、実は日本の株価指数に使うことも可能です。
このコンテンツでは、そんなCAPEレシオについて徹底解説していきます。
目次
Contents
CAPEレシオとは?計算方法も含めて解説
CAPEレシオは「ITバブル」の崩壊を予見した指標として有名となりました。
CAPE(Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio)は、ノーベル経済学賞受賞者の米エール大学ロバート・シラー教授が考案した株価の割高感を測る投資指標でPER(株価収益率)の一種。
ITバブル(ネットバブル)の崩壊を予見した指標として有名である。
一般的に、PERは株価を一株当たりの当期純利益で割って算出することが多いが、単年度の一株利益を使用すると変動が大きくなることもあり、CAPEでは過去10年間の平均利益に物価変動を加味した値を一株利益として指数を算出。
景気循環の影響を調整した株価の割高、割安を見ることができることも特徴の一つであり、景気変動調整後のPER(株価収益率)とも言われる。CAPEでは割高、割安の分岐点は25倍程度と言われている。
(引用:野村證券)
つまり、長期的な利益の平均値を用いて算出したPER(株価収益率)ということです。
CAPEレシオの算出式は以下です。
CAPEレシオ
=
「現在の株価」÷ 「インフレ調整後10年間の1株あたり純利益の平均値」
長期的な平均利益を用いたPERであるCAPEレシオは、ノーベル経済学賞を受賞したことのあるアメリカの経済学者であるロバート・シラー教授によって生み出されたものです。
彼は、サブプライムローン問題やリーマンショックなどによるアメリカの住宅バブルの崩壊で注目されていた「S&Pケース・シラー住宅価格指数」を生み出した人物でもあります。
CAPEレシオは、ロバート・シラー教授によって生み出されたPER指標です。
その為、特に日本以外の国では「シラーPER」と呼ばれることが多いので覚えておきましょう。
本記事では「CAPEレシオ」と表記していきます。
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なぜ長期的な平均利益を用いるのか?
CAPEレシオは前述の通りインフレ率で調整した過去10年間の1株あたり純利益の平均値を用います。
ただし、通常のPERは単純に1年分の1株あたり純利益の数値を用います。
なぜCAPEレシオは、インフレ率で調整した長期的な平均利益を用いて計算するのでしょうか?
短期間の数値を用いれば一時的な要因による利益の大きな変動や中長期にかけての景気変動による影響を受けます。
長期にすることでこれらの影響を除外することができるというメリットがあるのです。
ここで1つ、例を用いてみましょう。
あるとき東証一部のPERが500倍という非常に割高な値を叩き出しバブルの状態にあったとします。
このとき今後もバブルが継続して株価が上昇し続けるのか?
翌日にはバブルが弾けて株価が急落するのか?
的確な予想をするには根拠が足らないように思います。
ただし、CAPEレシオというインフレ率で調整した過去10年間の1株あたり純利益の平均値を用いたPERが500倍という数値を叩き出していた場合を考えて見ましょう。
10年間という長期的な視点が差し込まれているために割高という根拠が強いものになりますよね。
つまり、CAPEレシオが割高を示したときは、その株は買うべきタイミングでないと考えていいでしょう。
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CAPEレシオの利用方法
では、実際にCAPEレシオはどのようなシーンで用いられることが多いのでしょうか?
CAPEレシオは個別株の割安感・割高感を調べるのに使うこともできます。
ただ、基本的には「東証株価指数(TOPIX)」や「S&P500」などの株価指数に対して用いることが多いです。
ちなみに東証株価指数とはTOPIXのことです。
東京証券取引所が運営している株式市場の1つである東証一部に上場している全銘柄を対象とする株価指数です。
1968年1月4日の時価総額を100として指数化されています。
S&P500とは、ニューヨーク証券取引所、NYSE American、NASDAQに上場している500銘柄を対象とする株価指数です。
アメリカの経済全体の動向を見る指標として非常に有効とされています。
CAPEレシオは一般的に25倍以上になると割高として判断されます。
ちなみに1920年1月1日から2020年1月20日までのCAPEレシオの平均値、中央値、最大値、最小値は以下となります。
平均値:16.69
中央値:15.76
最小値:4.78 (1920年12月)
最大値:44.19 (1999年12月)
1920年12月にCAPEレシオが4.78倍をつけた後、急激に株価が上昇して1929年の世界大恐慌を迎えました。
CAPEレシオが35倍近辺から急速な株価の下落の影響で5倍台まで落ち込んでいます。
また1999年12月にはドットコムバブルの影響もあり株価が急騰してCAPEレシオが史上最大の44倍台まで急騰しました。
しかし、ドットコムバブルの崩壊によりCAPEレシオは13倍台まで下落しました。
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S&P500指数のCAPEレシオの取得方法
CAPEレシオは「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」の以下赤枠をクリックすることでエクセルで取得できます。
赤枠をクリックするとエクセルがダウンロードされます。
ではコラムとして世界のCAPEレシオの水準を確認した上で、CAPEレシオを用いたトレード手法をご紹介していきます。
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コラム①:世界のCAPEレシオ水準を日本を含めて横並びで比較
世界のCAPEレシオの比較する方法も紹介していきたいと思います。
以下、Asset Allocation interactive社が提供しているデータを縦に並べたものです。
右下の「Download」ボタンを押すことでエクセルデータとして落とすことができます。
国 (日本以外) | CAPEレシオ(2020年1月20日時点) |
All country (全世界) | 22.2 |
Global Developed ( 先進国平均) | 23.7 |
Emerging Markets(新興国平均) | 13.4 |
US Large (米国大型株) | 30.8 |
US Small (米国小型株) | 53.4 |
United Kingdom (英国) | 14.7 |
Japan (日本) | 22.1 |
Asia Ex-Japan (日本を除くアジア) | 15.2 |
China (中国) | 13.6 |
Australia | 19.0 |
Brazil | 17.8 |
Canada | 21.1 |
Europe | 16.8 |
France | 22.0 |
Germany | 17.4 |
Hong Kong | 15.5 |
India | 22.4 |
Indonesia | 18.0 |
Italy | 18.8 |
Malaysia | 14.4 |
Mexico | 17.8 |
South Korea | 11.9 |
Spain | 13.5 |
Sweden | 20.7 |
Switzerland | 26.6 |
Taiwan | 21.6 |
Thailand | 16.3 |
Turkey | 7.7 |
わかりやすく視覚化したものが以下となります。
現在のS&P500指数を表す米国大型株はCAPEレシオは30倍台と割高水準であることがわかります。
わかりやすく図で比較したものが以下となります。
特に米国の小型株が割高となっています。
一方、中国は現状はCAPEレシオの水準からは割安ということができるでしょう。
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コラム②:日経平均のCAPEレシオ
日経平均のCAPEレシオは以下の通り20倍近辺もさまよっているという状況です。
基本的に日本株は米国株よりも割安にこの10年は放置されていることが見て取れますね。
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PERモメンタム手法
PERモメンタム手法を簡単にいうと、“CAPEレシオが15倍のときに買い、24倍のときに売る”となります。
以下で、具体的な手順を説明していきますね。
- 1カ月に1回、CAPEレシオを確認する
- CAPEレシオが15倍未満に下がっていたら毎月その数値を控えておく
- その後、株価指数(東証株価指数やS&P500など)が6%以上上昇したら株価指数に連動しているファンドを購入
- 同様に新規投資を続けていき配当金などを元手にさらに再投資をしていく
- CAPEレシオが24倍を超えたら、毎月その数値を控えておく
- その後、株価指数(東証株価指数やS&P500など)が6%以上下落したら株価指数に連動しているファンドを売却
- 国債などのリスクが低い資産に投資対象を切り替える
- 再度、CAPEレシオが15倍未満に下がるまで、じっくり(数年かかることもある)待つ。
- その間はリスクが低い資産を運用する
これが、PERモメンタム手法の一連の流れです。
“株価指数に連動しているファンドを購入した後ある程度下落するまで放置する”ことを「持ち切り方式」といいます。
圧倒的な利益を得られやすい手法として知られています。
PERモメンタム手法を実践しないとしても、15倍未満は割安、24倍以上は割高という基準を基に投資をしていくのも有効です。
ここまでの説明でお分かりいただけたかと思いますがCAPEレシオは割安感・割高感を把握するうえで非常に重要な指標です。
株式投資においては「安く買って、高く売る」が鉄板ルールです。
もし株価が割高なときに買ってしまうと利回りは小さくなってしまうことが予想されます。
株式投資は国債などと比べると投資リスクが高いのです。
折角リスクをとったのに利回りが安全資産である国債とほとんど差がなかったら意味がありませんよね。
つまり、多少のリスクをとって株式投資をおこなうのであれば、CAPEレシオを考慮して長期的な視点から見て“割安”であるときに株を買うというのが最も効率的で、利回りを最大化できる可能性が高いのです。
CAPEレシオが割高を示しているときは株ではなく安全資産に切り替えておきましょう。
割安を示しているときに株にシフトチェンジすることをおすすめします。
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近年のCAPEレシオのデメリット
先ほどPERモメンタム手法についてお伝えしてきましたが近年のCAPEレシオにおいては一つ欠点があります。
以下が「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」から取得した超長期のS&P500指数のCAPEレシオです。
ご覧いただければわかる通り、CAPEレシオは2000年のITバブルの割高感を見事に的中させていますね。
CAPEレシオは1990年代後半までは15倍以下で買い、25倍で売却する手法が非常に上手くいきました。
しかし、2008年のリーマンショック以降水準自体が上がってしまい15倍を割り込む機会がなくなりました。
テクノロジー企業のPER水準は高い傾向にあります。
時価総額全体に占めるテクノロジー企業の割合が増加してきているため、PER水準全体が増加してきています。
一概に15倍以下であれば購入すると考えると投資機会を得ることができないという機会損失を被るリスクがあります。
少し水準を上げて20倍以下であれば購入を考える水準といったように自分にあった水準を考えていくことも肝要となります。
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市場環境に関係なく良い銘柄を見極める目を養おう!
市場環境を読むのは非常に難しいとウォーレンバフェットも指摘しています。
以下でウォーレンバフェットは市場環境を予測するのは難しい。
しかし、成長する銘柄を発掘することには注力しているというスタンスを取っています。
以下の通り、投資の巨人が今後10年の世界経済は全くわかりませんと断言しています。
そのため、現在のCAPEレシオの水準が高い水準なのか低い水準なのかも本質的にはわからないのです。
どのような市場環境でも、たとえリーマンショックでも上昇する銘柄は上昇します。
長期的に上昇する良い銘柄を見つけるには、当然のことながら鍛錬が必要となります。
当サイト「マネリテ!」等を活用して勉強していくのも良いのです。
しっかり体得するためには体系的に学ぶ必要があります。
そこで最もおすすめできるのが2019年に設立され日の出の勢いの「グローバルファイナンシャルスクール(=GFS)」です。
GFSでは他のスクールの50倍に相当する1000時間の講義を提供しています。
また、他スクールが2年間等の期間限定であるのに対して40年間講義を受け続けることができます。
講義の質はもちろん高く校長は東京証券取引所から日本のお金の専門家10人の1人に選出された市川雄一郎氏が務めています。
同スクールは現在期間限定で「投資の達人になる投資講座」を提供していますので、資産運用を考えている方は、気軽に参加してみるとよいでしょう。
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まとめ
CAPEレシオの意味やPERとの違い(メリット)、利用方法や投資に活かすコツをご紹介してきました。
CAPEレシオはPERと同様に株価の割安感・割高感を把握するための指標です。
しかし、現在の株価を「インフレ率で調整した過去10年間の1株あたり純利益の平均値」で割るという大きな違いがあります。
こうすることで一時的な要因や景気変動による影響を取り除くことができるというメリットがあります。
また、CAPEレシオを株式投資に活かす手法として「PERモメンタム手法」というものがあるのでぜひ参考にしてみてください。
以上、株価の割安感・割高感を把握する指標「CAPEレシオ(=シラーPER)」とは?データ取得方法や活用方法を含めてわかりやすく解説!…でした。